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第二次大戦中の戦闘機パイロットにおいて、実戦未経験新米パイロットと 実戦経験のベテランパイロットとの間ではかなりの空戦技術の差があったと想像しますが、 (機体の性能差があっても、対処ができる) 現在の戦闘機パイロットにおいても、新米パイロットとベテランパイロットとでは、 かなりの空戦技術に差があるのでしょうか? ベリアル |
質問者です。
現在のリアルなシミュレーター訓練・ミサイル等ハイテク兵器による攻撃手段等を
考えますと、新米パイロットとベテランパイロットの操縦する戦闘機をそれぞれ
一つの攻撃ユニットとしての戦力として単純な数値として比べる場合、両者に
それほどの差がないと思っています。
ベリアル
- 噂に聞いた話では、現代機の場合「一端空戦に入った場合、機体や兵器の性能差をパイロットの腕で覆すのは非常に難しい」そうです。レーダーの探知能力やミサイルの射程は腕ではカバーできません。また F-4 と F-15 のように1世代以上も開いた機体同士では、F-4 が攻撃位置に入ろうとしても F-15 は易々と離脱できるそうで、相手を油断させて隙を突くとか、囮を出して死角から忍び寄るとかの戦術を取らない限り「空戦が成立しない」ほどの性能差があるようです(そういう「戦術」を考え実行するのもパイロットの腕のうちですが)。
旅客機の定期便が高度に自動化され安定運行を目指す方向(=パイロットの個性というパラメータを排除する方向)に進んでいるように、軍用機のシステムもまた戦闘をルーチンワーク化する方向へ進んでいることは確かな事実です。それは「ユニットの戦力評価」から「パイロットの個性や経験」を排除する方向とも言えるでしょう。
しかし機械やシステムがいくら進歩しても、やはりそれを操作するのは人間です。パイロットの技能や経験は空戦に入る前の段取り、あるいは空戦技術以外のところで重要性を持ち続けることもまた確かだと思います。
限りなくルーチンワークのように見える定期旅客運行でさえ、予想外の事態は幾らでも起きます。天候が急変して当初の予定ルートを飛べなくなったとか、目的地の空港で事故が起きて閉鎖されたとか、管制を受けていない小型機が進路上に迷い込んできたとか、管制官が指示を勘違いしたとか…。そういった「システム想定外の事態」に直面したときに事態を理解し、解決を考え、それを実行すること…更に言うなら、それを予想し常に備えて情報収集しておくこと…こそがパイロットの技量であり、それゆえに航空会社は高給を払って腕の良いパイロットを集めようとするのです。
戦闘飛行においては旅客運送以上に「想定外の事態」が頻発することは明らかでしょう。それゆえに訓練が重視され、パイロットの経験が評価されるのだと思います。
ささき
- 現在の戦闘機は、「新米パイロットでも十分その機体の持つ性能を発揮できる」という考えのもとに開発されております。
しかし、これは、ACM等を行う上での機体操作を容易にするものであり、パイロットの経験の差を補うものではありません。
極論でお話しますと、基本的操作しか知らない新米パイロットと、あらゆるマニューバを知り尽くしたベテランパイロットがショートレンジでACMを行った場合、その結果は容易に想像できるのではないでしょうか。
ただし、ミドルレンジの場合は、やはり、レーダーやミサイルの性能に左右される要素が大きくなりますので、ショートレンジと同一とは言えません。
ですが、この場合も経験の差による対処の差が生じますので、機体間の性能差が少なければ、同然、経験のあるパイロットが有利と考えます。
なぜ、「ACMやGCMの訓練をするのか。」「なぜ、トップガンが存在し、アグレッサーが存在するのか」という点を考察していただければと思います。
PRCA
- 3の追記
現在存在するシミュレータでは、ACMで生じるGを再現できるとは聞きません。現実のACMは、Gの中で機体を操作しなければならないので、「シミュレータで訓練したから大丈夫」とはいきません。
PRCA
- 新米パイロットのF-15と、ベテランパイロットのF-4とでは、F-15数機 VS F-4単機でもベテランの方に分があるそうです
両方とも実戦未経験で、ベテランは実飛行訓練・シミュレーター訓練両方とも、新米パイロットより多くやっている航空自衛隊でのお話ですが...
しかし、これはあくまで近接戦闘でのお話であって、レーダーミサイル合戦の段階では、電子機器の能力が全てを決めるそうです
セミララ
- 加藤寛一郎氏の「飛行の神髄」に新田原の飛行班長だった細稔氏の言葉として「イーグルに必殺技はありません」という台詞が出てきます。必殺技が無いというのは特定のパイロットだけにできる特殊な飛行術はない、そこらの戦闘機では不可能に近い機動もイーグルではごく当たり前に出来るのだ、という意味を持つと私は解釈します。
細氏はそれに続けて「あるのはウェポン・テクニックです。目標にロックオンする、敵味方を識別する、最適ウェポンを選ぶ、チャフ、フレアを散布する…こういった素早さには差が出ます。」「ベスト・エネルギーで回れば等位戦になります」「イーグルは飛ぶだけならやさしい、しかしいつも飛んで技量を磨いてないと駄目です。…トップの技量を持っていても、一ヶ月乗らなければ中堅どころに負けます」「見て、考えて、ボタンを押していてはダメ。見たときに押していなければいけない、ピアニストの指で」と語っています。
加藤氏は鹿丸三千也氏の後席で F-15 同士の模擬空戦を体験し「驚くべき世界である…相手が見えない位置にいても、その動きが鹿丸パイロットにはすべてわかるのだ」「脳に血の行かない荷重状態で相手の動きを読む。研ぎ澄まされた反射神経で手足を、10本の指を動かす」「これはごく限られた人達だけに享受可能な能力のようだ」と述べています。戦闘機の飛行性能が向上し優れた電子装備や誘導兵器を備えていても、そういった機体同士の戦いではやはり人間の能力が最後にものを言うようです。
ささき
- できることが増えた分だけ、より細かな制御を可能とするスキルを有さないと勝者になりえない…って感じですね。ただ飛ぶだけなら非常に楽です。しかし、戦いに勝つためにはそれだけでは駄目だということです。これはエアだけではなく、ランドであってもネーバルであっても同じ事がいえます。
sorya
- 回答ありがとうございます。
人間がある動作を素早く必要なことをミスすることなく
実行するには「慣れ」が重要な要素だと、改めて思いました。
ベリアル