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過去ログを見ると「前縁スラットを使ったbf109の方が旋回性能において勝ってた」という記述を見かけました。私はずっとスピットファイアは欧州機としては指折りの旋回性能を持ってると思っていたのですが・・・なんだかスピットファイアがどういう飛行機なのか解らなくなってきました。結局の所スピットファイア(本当は別物と考えるべきでしょうがグリフォン搭載型も)ってどういう飛行特性を持った機体だったのでしょうか?初心者質問で恐縮です。 ふらんく |
- スピットファイヤの開発コンセプトは「高速と上昇力を重視した、重武装の迎撃機」です。スピットファイヤとハリケーンはもともと、1930 年代中期に発達した高速軽爆に対し、既存の複葉戦闘機(ブリストル・ブルドッグ、グロスター・ゴントレット、ホーカー・フューリー)が劣速で有効な迎撃を行えない、という脅威に対抗すべく開発されました。そしてハリケーンが厚翼・鋼管構造という堅実かつ保守的な設計コンセプトを取り、スピットファイヤが薄翼・全金属応力外皮構造という新しい設計コンセプトを取ったことが両機の性格を色づけています。
基本的に同じ任務のために開発された両機ですが、バトル・オブ・ブリテンではより高速で上昇力に優れるスピットファイヤが敵戦闘機の護衛を崩し、ハリケーンは本来の目標である爆撃機を襲うという運用法が取られました。そしてスピットファイヤは Bf109E より馬力荷重が高く(パワーの割に重たい)翼面荷重の低い(重量の割に主翼が大きい)機体だったため、必然的に水平面の運動を活用することが多かったようです。
このことが「スピットファイヤは巴戦を得意とする、対戦闘機戦能力に優れたドッグファイター」との評価を一般に広めたようですが、それはバトル・オブ・ブリテンという舞台において Bf109E というライバルと比較したときだけの評価ではないかと思います。
>スピットファイアは欧州機としては指折りの旋回性能を持ってると思っていたのですが・・・
「旋回性能」をどう定義するかによりますが、旋回半径だけならハリケーンのほうが小さいと思います。ただしハリケーンは上昇力・急降下能力・高速横転性能などに劣るので、必ずしも旋回半径が小さい=空戦性能が高いとは言えません。グラマンのテストパイロットだったコーキー・メイヤー氏の回想によると、スピットファイヤ(試乗したのはシーファイヤ Mk.III)は全速度域で舵の効きが安定しているうえトリム変化も殆どなく、パイロットの操作に対し思った通りの反応を示すことに感銘を受けたそうです。ただし「上空でちょっと遊んだらもう燃料が無くなった」とも書いておりました(笑)
>グリフォン搭載型
RAF テストパイロットの著書を読んだうろおぼえですが…グリフォンスピットの代表、Mk.19 はスピードだけは出るものの、舵が重くてトルクに振り回され直進性の悪いジャジャ馬だったようです。フルパワー上昇時は左ラダーを一杯に踏んでも傾いて上がって行くような…。尾翼を延長し構造強化した Mk.21 ではかなり改善され、二重反転プロペラを付けたシーファイヤ最終型の Mk.47 はトルクの影響も無くなって「非常に良くなった」とありました。
ささき
- 質問の回答とはちょっとずれるのですが、BF109は速度が落ちてくると前縁スラットが開いて(高速時は風圧で押さえられて引っ込んでいる)旋回半径を小さく回ることができたそうです。
反対に言うと、かなり速度を落とさないと小回りがきかないため、BF109はパイロットによって全然評価が違ったりします。
スピットファイアは「大空のサムライ」の中でも旋回性能にすぐれた強敵であったという描写が出てきますし、イギリスが捕獲したFW190より旋回性能は遙かに優れているというテスト結果が出ています。
ブルーヒップ
- > #2 ブルーヒップさん
> BF109は速度が落ちてくると前縁スラットが開いて(高速時は風圧で押さえられて引っ込んでいる)
Bf109の前縁自動スラットは、低速になると開くわけではありません
セミララ
- >#3 セミララさん
改めて確認したら、負圧を検知して動かすみたいですね。 いい加減なことを書いてすいませんでした。
ブルーヒップ
- スピットファイアの主翼は層流翼ほどではないにせよ最大圧位置が後方に寄っていて前年半径も小さく、しかも薄い(付根部翼厚比約13.5%)ために失速特性が良くないのですが、高速性能(同級馬力のMe109に比べて30km/hほど速い)の代償として諦め、あまり大迎角=高Gの旋回をさせないことで妥協したのでしょう。
また、フラップが中間位置のないスプリット式で着陸時にしか使えない(少なくとも前期型は)ので、充分加速しないと離陸できないとか着陸時に「高速あるいは深い降下でアプローチしてフラップでブレーキをかけて落とす」傾向が他機種よりも強かったと思われます。
>4
負圧を検知して動かす、でもなく、「閉じようとする力=前方からの風圧」と「開こうとする力=翼上面の特に気流剥離による負圧+基部スプリングの弾性力」とのバランスによって前後位置が決まるというほうが正確かと。
Schump
- 皆さん回答有り難うございます!高速と上昇力を重視した機体ってことは本来は一撃離脱を得意としたのですか?
ふらんく
- >6.
戦闘機の性能と運用は相対的なものなので、必ずしも「高速=一撃離脱」ではないんですよ。この頃(1930 年代中頃)の「高速」というのは既存の複葉機や固定脚機に対して「高速」という意味であり、同様に「旋回性能を犠牲にしても」というのも、複葉機ほどの旋回性能は求めないという意味なんです。この時代は 1000hp 級エンジン、全金属構造、可変ピッチプロペラ、引き込み脚などの新技術が次々に登場した頃でもあり、新しい時代の戦闘機のあるべき姿、それを使った空戦技法についてまだ確たる基準のない時代でした。500Km/h を超える高速戦闘機同士でドッグファイトが成立するのかどうか危ぶむ意見もあり、一撃離脱に徹するなら双発複座戦闘機のほうが有利なのではないか、という意見もありました。
しかし当面の脅威として「複葉機では追いつけない高速爆撃機」の存在がありますので、これを捕捉撃滅できるだけの速度・武装・上昇力を備えつつ、なるべく旋回性能も維持する…というのがこの時代の単発戦闘機の設計方針だったのではないでしょうか。その中でバランスをどう取るかは設計者のセンスにかかっており、ハリケーン(重武装・高旋回性)、スピットファイヤ(重武装・高速)、Bf109(軽武装、高上昇力)などの「色付け」を生んだと思います。
つまり、スピットファイヤは旋回性よりも速度を重視した設計ではありますが、それは必ずしも「一撃離脱戦法」を念頭に置いた訳でもないと思います。そういった戦法が確立し、それに応じた武装形態や飛行性能を備える戦闘機が登場するのは 1940 年以降の話になるでしょう。
ささき
- ささきさんご丁寧な回答どうも有り難うございました。非常に勉強になります。
ふらんく