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零戦二一型と零戦五二型では、総合的に見てどちらが空戦で強かったのですか。主観的解答でも結構ですので、よろしくお願いします。 田中 |
- ちょっと機種は違いますが、似たような関係の隼1型と隼2型の比較評価を載せましょう。
以下、64戦隊の安田准尉の手記の抜粋です。
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2型はエンジンの馬力も違うしね、速度も多分、時速で10kmか、15kmは速くなっている。
それから1型の場合は、空中分解があったから、急激な操作をするときはある程度不安があったけど、2型になってから、その心配は無いし、確かに縦横無尽に戦闘できるようになったと思いますね。
2型になって、旋回性能が少し低下したっていわれても、旋回性能ってのは回避するときに急旋回できるってだけで、そこいらへんのところはたいした問題ではなかったね。
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あと、英軍の2型初登場時に、水平速度向上をかなり誇大に捕らえたそうです。
すなわち加速力の向上がかなりあったということでしょう。
どっちが”戦闘”しやすかったか?
間違いなく零戦52型でしょう。
P-kun
- ”英軍の2型”じゃないや”英軍は、2型〜〜〜”です。すつれい・・・
P-kun
- 二一型→五二型では低高度のミリタリー出力が150馬力強増加してます。
これに推力式単排気管の分もプラスされるので、上昇力〜垂直面の運動性でも
かなりの差があったはずです。
フッフール
- 五二型と二一型では高速で兵装の強力な五二型が前線の部隊から圧倒的な支持を得ています。二一型は空戦性能が劣るとの評価がなされていますので、当時の戦闘機に必要だったのは空戦ゲームのような意味の無い批評ではなく、強力な武装と速力だったということでしょう。
BUN
- 一般的に言って後から出てきたタイプが前のタイプよりも劣るとは
考えにくいですね。にもかかわらずこう言った質問が出るのは52型
よりも21型のほうが良かったといった一部の搭乗員の回想から
出てきたものだと思われます。21型が52型に対して唯一アドバンテージ
があるのは翼面過重が軽いことを根拠に旋回が優れていたといった点に
あるかと思われますがこれは運動性能の一部であって絶対的な運動性能
のすべてではありません。ようするに21型と52型は闘い方が違うので
21型のほうが良かったといった声は21型の頃の零戦全盛時代の
栄光が脳裏に焼き付いているか、新しい戦い方出来なかったからではないで
しょうか?同じように回想から20mm機関砲はまるで役に立たないと思っ
ている方も多いと思いますが本当にそうでしょうか?また、重武装ゆえに
最低の評価の52丙もそんなに悪い飛行機だったのでしょうか?
最近はこれらの定評?に疑問があります。
ROCK
- お答えありがとうございます。
仰せの通り、五二型は重いとか旋回性能が悪いとか聞いたので、
このような質問をさせていただきました。
質問者
- >4
坂井三郎氏は、零戦は二一型で真価を発揮したのであり、重くなった五二型は改悪の何物でもない、と言っています。
尤も、ベテラン操縦者と一般操縦者では、戦い方が異なる事による評価の違いはあるかとも思われますが。
いその
- >いそのさん
ある機械の評価をするとき、1ユーザーの意見のみの評価でいいのでしょうか?
BUNさんがおっしゃりたいことはそういうことです。
実際の部隊史、戦闘詳報、当事者からの情報は坂井三郎氏とは違う意見が大半ではありませんがたくさんあるということです。
そろそろ坂井三郎氏のみが語る零戦の世界から脱却すべきではないでしょうか?
P-kun
- >7.
坂井氏はその 21 型で SBD の後方銃座から 7.62mm 機銃の集中射撃を受けて頭部に弾創を負い、粉々に飛散した風防破片が眼球に飛び込んで「飛行機乗りの命」とまで自負した片目の視力を失っていますよね。52 型では正面風防が防弾ガラスに換装されていますが、それでも「52 型は改悪に過ぎない」と言い切れるでしょうか。私も坂井氏は尊敬しておりますが、氏の語る「20mm 機銃」や「零戦 52 型」「紫電改」などについてはいささか感情的なものが感じられ、それを字面のまま鵜呑みにはできないと思っています。
ささき
- 私の言いたかったことも皆様と同じです。坂井氏はその不屈の精神、
技量などは誠に尊敬すべき点であり戦後氏の口から語られる生き生きとした
搭乗員の姿など零戦の姿を多くの人の記憶に焼き付けた功績も大とは思います。
しかしあまりにも有名になってしまった為に氏の語られることがすべて正しい
最大公約数であると捉えられることが大勢ですが近年色々な方の搭乗員の話(本
であったりこのようなネットであったり)を読むと実はかなり偏った見かたのように思われます。同じようなことは設計者の方などにも言えるのではないでしょうか?戦後表に出てきた人の言葉は過度に捉えられそれを冷静に検証する作業などは
最近になってから始められた感じですね。
ROCK
- 戦闘機の空中戦能力の構成要素に航続距離がかなりの比重を占めるのではないでしょうか。坂井氏が21型を評価するのはその1点に尽きるのではないかと思います。
ラインバッカー
- >11
学研の零戦2によると
21型は巡航換算で3,230km、2,530+全速30分
52型は巡航換算で3,360km、2,560+全速30分
僅かですが52型の方が長いわけで、実体として、21と52で航続性能は同等と見てよいと思います。
SUDO
- http://www.warbirds.jp/text/zero4.htm
http://www.venus.sannet.ne.jp/eyoshida/a27zero5.htm
では、数値が違うのですが52型の航続距離はどちらも2000km以下になっています。
エンジンは21型と違うのですが、重い分だけ航続距離を犠牲にしたのでは?
ラインバッカー
- >13. 航続距離 21型3502q、52型1920q
52型の方が重くて(自重で+122s)燃費が悪いとはいえ、基本的に同じエンジンを積んだ同じ機体で一挙に4割以上航続距離が低下するとはちょっと考えづらいと思います。
航続距離が4割以上低下するには、エンジンの燃費が半分近くになるか、余程の空気抵抗が発生するか、重量が増加するかといった原因が考えられます。
しかし、エンジンの燃費については21型と52型のエンジンは基本的に同じ栄なので1〜2割程度の燃費悪化はあるとしても4割以上低下するとは考えにくく、52型は20o弾倉のバルジが大きくなっていますが主翼が短縮されており、エンジンカウルも再設計されていますので、これも原因とは考えづらいです。
残る重量増加にしても増加したのは自重で6%、全備重量で13%ほどに過ぎず、重量が13%増加したからといって航続距離が13%低下するとは思えません。
恐らく21型のデータは増槽付きでの数値、52型のデータは機体燃料タンクのみのデータなのではないでしょうか。
仮にこの考えが正しいとして、まず21型と52型のタンク容量を比較してみます。
21型の機内燃料タンク容量は525L、増槽が330Lの計855L
52型の機内燃料タンク容量は570L、増槽が320Lの計890L
で、52型の方が4%ほどガソリンを多く積んでいます。
52型の機体燃料タンク容量は、機体燃料タンク+増槽の64%ほどで、単純にいって増槽を装備すると56%近く航続距離が伸びると考えられます。
つまり、1920qが機体燃料タンクのみの航続距離とすると、増槽付きの航続距離は1920qの1.56倍で3000q近い数字となります。
T216
- ちょっとで良いですから、出典を書き添えていただければ嬉しかったです。
秋元実の解説の別冊航空情報「日本海軍正式機大鑑」カン燈社平成12年 では航続距離(正規)として21型2222km、52型1550kmとなっています。
ラインバッカー
- 皆さんが挙げられている21型と52型の航続距離ですが、それでは、それぞれの資料で52丙型の航続距離はどう示されていますか?
日本海軍機で注意しなければならないのは次の3点です。
(1)正規全備状態とは、必ずしも機内燃料満載ではない事
(2)過荷重全備状態とは、必ずしも増槽を装備していない事
(3)kmとnm(浬)の取り違いが(海軍の正式な物においても)存在する事
セミララ
- >15.
失礼、書き忘れていました。
出典と言いますか、参考にしたのはKKベストセラーズの「零戦秘録」と学研の「零式艦上戦闘機2」です。
T216
- >16 過荷というのが増槽の使用を示したものか解らなかったので書かなかったのですが、秋元実の解説の別冊航空情報「日本海軍正式機大鑑」カン燈社平成12年 では21型には増槽使用での航続距離(3502km)、52型では過荷での航続距離(1921km)となっています。52型丙は単に航続距離として52型の過荷と同じ1921kmとなっています。
52型の確実に増槽をつけた状態での航続距離はわからないのですが、正規の航続距離から類推すると21型より短いようです。
Nmに1.852をかけたものがkmになっているのでこの3種の零戦は計算まちがいは無いようです。
>17 この2種の参考文献は未見でした。大変参考になりました。
ラインバッカー
- >16.
>正規全備状態とは、必ずしも機内燃料満載ではない事
>過荷重全備状態とは、必ずしも増槽を装備していない事
この視点が抜けていましたので、ちょっと計算してみました。
21型:自重1754s 333q/h巡航時燃料消費量82.0L/h
総重量 推定航続距離
正規−−−−−−−胴体 62L+翼内380L 2421s 1795q
過荷重第一偵察−−胴体145L+翼内380L 2482s 2132q
過荷重第二偵察−−胴体145L+翼内380L+増槽330L 2757s 3472q
52型:自重1876s 333q/h巡航時燃料消費量83.3L/h
総重量 推定航続距離
正規A−−−−−− 翼内430L 2607s 1719q
正規B−−−−−−胴体 60L+翼内430L 2654s 1959q
正規C−−−−−−胴体 60L+翼内510L 2743s 2279q
正規D−−−−−− 翼内510L 2671s 2039q
過荷重第一−−−−胴体 60L+翼内510L+増槽320L 3007s 3558q
52丙型:自重1970s 333q/h巡航時燃料消費量83.3L/h
総重量 推定航続距離
正規−−−−−−−胴体 60L+翼内510L 2955s 2279q
過荷重第六−−−−胴体 60L+翼内510L+増槽300L 3195s 3478q
燃料消費量については学研の「零式艦上戦闘機2」から、それ以外の数値はKKベストセラーズの「零戦秘録」から抜き出したものです。重量についてはオマケみたいなものです(汗
52型の正規の中で「C」が基準とされていました。
また、過荷重のうち爆装状態のものは省いています。
推定航続距離は以下の式で計算しました。
推定航続距離 = 各状態での燃料搭載量 ÷ 燃料消費量 × 巡航速度333q/h
これを見る限り、21型、52型及び52丙型の「全機体燃料タンク使用」の航続距離と「機体燃料タンク+増槽装備」の航続距離に大きな差が無く、最も長いのは52型で52丙型がそれに続き、最も短いのが21型ということになります。
T216
- >19.
書き忘れたのですが、上記の正規、過荷重状態のいずれも必要なものは全て入っていて、機銃は全弾装備です。
>16.
>kmとnm(浬)の取り違い
これを読んで少し気が付いたことなのですが、52型の過荷重の航続距離1921qというのが浬の取り違えなのではないかと思って計算してみたところ…。
1921 × 1.852 = 3557.692
と何処かで見たことのある数字になりました(汗
T216
- >19 私は本当はこういう数式は全く苦手とするところです。
ただ、全てのタイプの零戦の巡航速度を333km/hに固定できないのではないでしょうか。重量が重くなれば巡航速度も増加するはずです。「日本海軍正式機大鑑」では巡航速度は21型で315〜333kmになっています。52型、52型丙は巡航速度の記載がありません。62型は200kt(370km)なっています。
手持ちの資料に「図説 飛行機大事典」E・アンジェルッチ著、佐貫亦男訳 講談社昭和49年 というのがありまして、それには52型の巡航速度が220m/h(この場合は陸上のマイル)、370km/hとなっています。
52型の過荷重第六で巡航370km/hだとすると燃費は83.3L/hではすまなくなってくるのではないでしょうか
ラインバッカー
- >21.
>52型の過荷重第六で巡航370km/hだとすると燃費は83.3L/hではすまなくなってくるのではないでしょうか
19.で私が使用した「燃料消費量」というのは、「333q/h(180kt/h)で巡航した場合の1時間当たりの燃料消費量」であり、上記の計算は「その型の経済巡航速度は取り敢えず無視して、333q/hで巡航した場合の航続距離」で、あくまでも「各型の航続距離を比較しやすくするための」理論値に過ぎません。
後期の型ほど巡航速度が上がるのはある意味当然ですし、巡航速度が上がれば燃費が悪化する可能性は否定できません。
しかし、通常、巡航速度は可能な限り「一番燃費の良い速度域」になると思います。
それだけではなく、一緒に飛行する機体の速度なども影響してくるのではないかと思いますが。
事実、32型以降の巡航速度に370q/hが使われるようになったのは、護衛する艦攻や艦爆の巡航速度が上がったためだそうです(出典:学研「烈風と烈風改」)。
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参考までに…(出典:航空ファンイラストレイテッド太平洋戦争日本海軍機)
○艦爆の巡航速度:九九艦爆11型287q/h→22型296q/h→彗星11型426q/h
○艦攻の巡航速度:九七三号艦攻263q/h→天山11型333q/h
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仮に370q/h(200kt/h)が52型の最も燃費の良い巡航速度だとすると、燃料消費量は333q/hの場合の83.3L/hと余り変わらないか、燃費が良くなる可能性すらあります。
また370q/hが最も燃費の良い巡航速度でなく、燃料消費量が83.3L/hより悪化して飛行可能時間が短縮されるとしても、巡航速度そのものが上がっている訳ですから、飛行可能時間の短縮と巡航速度の向上がある程度打ち消し合うと考えられます。
その結果、370q/h巡航の航続距離は333q/h巡航の航続距離と比較して短くはなるでしょうが3割とか4割も短くならないのではないかと思います。
52型の方が巡航速度が11%速いだけでなく、燃料を4%多く積んでいますし、推力式単排気管の影響も無視できないのではないかと思います。
T216
- この種の数式は全く苦手ですので、航空情報91 臨時増刊「航空の基礎用語150」昭和49年第9刷 というのでにわか勉強してみました。プロペラ機の速度を20%増にすればR(Range航続距離)は7%減少するとあります。52型の巡航速度を21型の11%増とすることにより搭載燃料を4%増としたのは設計者が52型の航続距離も配慮していたことになります。
航続距離を形成する要素には重量、燃費のほかにアスペクト比(縦横比)というのも重要なようです。21型は6.24、52型は5.68です。
数値が高いほど浮力を増すようです。航続距離を形成する要素としてのこの数値の意味がわかれば面白いのですが。
1921がnmだとすると21型より52型の航続距離が短小だとする伝説はくつがえることになります
ラインバッカー