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最近の新しい戦闘機(ラファールやEFなど)はデルタ翼とカナード翼を組み合わせた構成をしていますが、ロシアの戦闘機のように翼を3対組み合わせた構成のほうが機動性は高いと思うのです。 なぜ現在開発されている戦闘機がクローズドカップルデルタ翼なのか教えてください。三枚翼の欠点や利点などと比較しながら教えてくれたら幸いです。 デルタ |
- 「Close Coupled Delta」でぐぐったらこんなのが出てきました。
http://ae.metu.edu.tr/tuncer/research/delta/
…専門的すぎて私には半分もわかりません。なのでもうちょっとわかりやすいの。SAAB JAS-39 グリペンの解析。
http://www.mach-flyg.com/80jas.htm
F-16/FA-18 のストレーキ(または LEX)と同様、先翼には積極的に翼端渦を発生させ、渦による陰圧を利用することで高迎角における失速を防ぐ効果がある、とされています。
但しピッチ方向以外の角度(バンク/ヨー)については渦の発生が不均衡となり失速しやすいが、可動カナードデルタを採用することにより高アスペクト比と薄翼比、そして効率のよいエリアルール形状が実現できるとされています。またフライバイワイヤシステムの採用により弱(あるいは負の)静安定性を持つ機体でも制御可能であり、これらを組み合わせることでコストと性能を両立する理想的な機体が設計可能である、とあります。
カナードデルタの空力利点について箇条書きしてある個所を抜き出せば、
・安定した渦流発生により最大の揚力効率を発揮できる
・トリムによる揚力がプラス側に出る
・全動式カナードによって FCS 故障時にも安定した飛行ができる
・離着陸性能に優れている
・多重舵面性によって戦闘時の対破損性に優れている
・将来の機動に対応できる
・前縁フラップとの併用によりバフェッティングを抑えている
・全ての重心位置および迎角においてスピン回復可能なことを証明している
・致命的失速(スーパーストール)に入らない
とあります。SAAB のプロジェクトマネージャの言葉ですからフカシも入っているでしょうし、カナードデルタ一般の話と JAS-39 固有の話が混ざっているでしょうが、あえて解説は入れず抄訳を引用するにとどめておきます。
ささき
- 「機動性」には、(1)機体姿勢・進行方向の素早い変化、(2)機体位置の速やかな移動、というふたつの要素があります。(1)は、重量をなるべく重心付近に集中させた小柄な機体を、できるだけ重心から離れた位置にある効きのよい(大きな、とは限らない)舵面で制御することで、(2)は軽量で空気抵抗の少ない機体を、強力なエンジン(前進方向)と揚力の大きい翼(上昇方向・余剰出力によっては大面積とは限らない)で引っ張ることで実現されます。
三翼機(三翼面機・トライサーフィス機etc.とも)は、(1)の条件のうち「重心から離れた大きな舵面」が多いので、一見してピッチ(機首の上下)方向の運動性が高そうに見えます。しかし、舵面自身やアクチュエーター、取付のための胴体の補強(機体重量の一部を負担するので)等によって、重心から離れた位置に重量を抱え込むことにもなるため、その効果の全部は享受できません(ヨー(機首の左右振り)の邪魔ですらある)し、フライバイワイヤ用ソフトの複雑化(=バグ発生の可能性)を嫌う向きもあります。また、機体全体の重量や抵抗も当然増える、特に抵抗については前後の翼の干渉も多くなるため、(2)の条件からもあまり望ましくなかったりします。
さらにいえば、カナードについても近年はその効果を疑問視されている面があります。
まず、揚力分担による主翼面積の削減については、通常形式でも重心を後退させて水平尾翼に揚力を分担させれば実現できてしまいますし、そもそも「後方にある翼は前方の翼の揚力発生に伴い下向きに曲げられた気流の中にあるので効率が落ちる」という原則があるので、前後翼の気流に対する迎角の差が気にならなくなるほどの大迎角でもない限り、先尾翼機の主翼は(一部にせよ)効率の悪い状態に置かれることになります。
また、カナード翼端からの過流による主翼の失速防止についても、ストレーキやボーテックスジェネレータでかなり代替でき、また、最近の1.3に達しようという推力重量比と推力変向を使えば、失速状態でも強引に機体を支えておけるのでカナードの存在意義は薄れています。
さらに、先尾翼機では主翼前方の形状が複雑になるため、前方からのレーダー電波を反射しやすいという欠点があります(通常形態ならば主翼とあまり高さの変わらない水平尾翼からの反射波は大部分が主翼にマスクされてしまう)。よってステルス性の観点からもカナードは避けられる傾向にあり、例えば米JSF計画でもロッキードやノースロップのカナード案は早期に破棄されています。
Schump
- >2. つまり、カナードや多舵面などの小技に頼らず高機動化を達成した東洋某国の F-16 発展型が正解であると…(にやり)
ささき
- そもそも(無尾翼、大後退角)デルタ翼の性能改善のために発展したカナードは、F−2にはあまり合わないでしょう。
(N)
- >4
F-16にカナードを追加する研究としては、NASAが行ったAFTI計画と日本のFSX初期研究がありました。両者ともエアインテイク側面に斜め下向きのカナードをつけてヨー、ピッチ両操縦性の向上をはかるものでしたが、結局、カナード取付部の構造強化に伴う重量増加(AFTI研究機では強化してなおフレームに亀裂が生じたらしい)やRCS(レーダー反射面積)の増大、既存舵面のコンビネーションによりカナードの効果を代替できるFBWソフトの開発成功などにより、実用化にはいたりませんでした。
他に機動性・離着陸性能の向上を目指してカナード追加の研究が行われた機体としては、T-2、F-104(かっちょええ)、F-15、MiG-21等があります。
Schump
- カナードのみに関して話をすると、航空機のロバスト制御という観点からまた見直されてきています。ま。あの形状がカナードなのか?と言われると、、、ちょっとなぁなんですけど。場合によってはぱっと見前方拡張した翼前縁にしか見えないのだけど。>提案されている色々なものを見る限りは。
sorya
- >4.
それらの実験は、機動性を向上させるためにカナードを取り付けたわけではないのです。
あくまでも、各種の状態を実現、制御するためにカナードを取り付けたわけです。
たとえば、T-2CCVのカナードは機体の静安定状態をいろいろ変化させる目的でつけられたのであって、操縦翼面ではありませんでした。
操縦翼面としての前翼と、クローズド・カップルド・デルタ(コ・デルタ)としての前翼をごっちゃにしていませんか?(もちろん、現実には、ヴィゲンやラファールやタイフーンの前翼は操縦翼面としても使われているのですが)
(N)
- >7
回答文を短くするため、意図的に「操縦領域の拡大」の一面だけを取り出して「機動性の向上」と書いたのが引っかかったのでしょうか。
さらに省略したことといえば、カナードを「機動性の向上」に役立てるためには必ずしも操縦翼面化する必要はない、ということがあります。カナードの効果である
1)主翼の失速防止により飛行・操縦可能な迎角を増やす
2)空力中心を前進させ(相対的に重心後退)、静安定を弱める
(大迎角または遷音速以上での空力中心後退を相殺するだけでも有効)
3)機首の上下動(垂直面積があれば左右も)のための操縦モーメントを稼ぐ
のどれも固定カナードで実現されるので、2段落目で挙げた例も含めて可動と固定の区別をしませんでした(はじめから機動性向上を意図したカナードとしては、2が一番古いようです)。また、F-16の例では1の効果はほとんどないと思われます(あの位置から主翼状面に過流が到達できるとは思えない)。
Schump
- 「操縦」の定義を巡って神学論争をするつもりはないので、とりあえず用語の間違いの訂正を。
「操縦領域の拡大」→「可変安定性」ね。
Schump