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ドイツ空軍のF-4Fの水平尾翼には、「スロット」が省略されていると聞いたのですが、この「スロット」とはどんな部品なのでしょうか。また、水平尾翼のどこら辺に付いてるのでしょうか。 ゆーいち |
- スロット(slot)は、ふつうは主翼の前縁に付く高揚力装置の一種で、
主翼の上面の気流を整えて失速を遅らせる効果があります。
http://www.zenithair.com/kit-data/ht-87-8.htmlのページで、
Figure3の図の一番下(d)がスロットで、主翼本体の前に突き出た小さな翼のようなものです。
Figure1を見ると、スロット付きの翼(一番上)では迎え角が大きくなるまで失速しない効果が見て取れると思います。
F-4Eの水平尾翼(水平安定板)に付いているスロットも基本的には同じで、
水平尾翼の舵角を大きく取ったときにも失速して効きが失われないためのものです。
ただし水平尾翼のスロットは、主翼のスロットとは逆向き(裏返し)に取り付けられ、
尾翼の下面側に気流を流し込む形になります。これは水平尾翼が裏返しの翼断面形をしているからです。
便利少尉
- 某所で指摘があったので訂正します。
上記の「主翼本体の前に突き出た小さな翼のようなもの」自体の名称は「スラット」(slat)と言います。
「スロット」(slot)は、スラットによって形成された主翼本体との隙間の部分のことです。
で、スラットには固定式と可動式があって、後者では収納時には前縁に張りつくようになっている、
別の言い方を擦れば、張り付いたスラットが主翼の前縁そのものとなります。
低速になると自然に前に滑り出てスロットを形成するのが自動スラットです。
固定スラットの場合は主翼前縁の前に固定されていて、常時スロットが出来ています。
F-4の水平尾翼のスラットは固定です。
なんだかとてもややこしいですが、すらっと頭に入りましたでしょうか?
便利少尉
- 便利少尉さんどうもありがとうございます!! "すらっと"頭に入りましたよ(笑)
ゆーいち
- F-4の水平尾翼のスラット、有るのと無いのとでは飛行特性はどのように違うのでしょうか。
F-4の水平尾翼にスラットを、マクドネルはどのような理由で付け、唯西独空軍のみが外し
他国の空軍が外さなかったのは、どのような理由からでしょうか。
にも。
- >4
1.を詳しく書くだけになりますが。
F-4のようなデルタ翼に近い平面形の主翼では、離着陸の際に必要な揚力を得るためには大きな迎角を必要とします。しかも艦上機ですから、この機首上げは「低速で・急激に・大きく」行う必要があります。この三条件は「翼が失速しやすい条件」そのものです。もし、機首上げのために大きな仰角(下向き揚力だからマイナスの)をとっている水平尾翼が失速すると、機首が上がらずに離着艦できない、最悪の場合、急激な機首下げを起こして墜落することになります。これをスラット装着で防いでいるわけです。
なお、F-4には主翼にスラットを持つタイプ(ないタイプでは前縁フラップ)もあり、主尾翼ともに低速大迎角飛行に留意した設計がなされています。
ただし、ありていにいえば、スロットは翼面に穴があいているようなもの(引込式にしたところで段差や溝が残る)なので、空気抵抗が増え、性能に悪影響が出ます。西ドイツ空軍の場合、東西対立の最前線として極端に短い対応時間で迎撃を行うことを想定していましたから、少しの性能低下も嫌った(しかも改修のためのコストを惜しまなかった)ものと思われます。
F-86でも、離着陸性能や運動性改善のためにスラットを装着したタイプを作ったあとに、やっぱり速度性能が欲しくて再びスラットなし(代わりに翼面積拡大)のタイプを作ったりしていますね。
Schump