3012 |
「空冷エンジン」と「水冷エンジン」ではどちらの方が整備が難しいのでしょうか? kerberoscat |
- >はっきり言って水冷のほうが大変です。
>これはやはり水冷の方が冷却系等の整備に手間がかかるからです。水冷エンジンの場合は、空冷エンジンと違って冷却水用の配管等がエンジンに複雑に絡み合っている上、この配管は腐食や根詰まりに常に注意しなければならず、また、エンジンの奥のほうに有る配管などは調べるだけで一苦労だったりします。
>それに、冷却水を冷やすための装置等も必要で構造もより複雑になります。
>日本軍なども水冷エンジン搭載の「彗星」や「飛燕」を作りましたがどちらも空冷エンジン形が作られるなどしていて理由として、実際の現場での冷却系の整備性の悪さが上がっているくらいです。
>また、水冷エンジンのほうがより小さく作られる傾向にあるのも整備性の悪化をおこす要因になっているものと思われます。まあ、水冷エンジンの利点を生かすためには仕方の無いことでしょうが・・・
麗樹
- 日本の場合で言えば、空冷、水冷の違いというよりも、代表的な水冷エンジンであるDB601系発動機の持っていた新機構(新型過給器、燃料噴射装置等)に問題があったのではないでしょうか。水冷機ゆえに整備要員を余計に配置するといった措置は採られていませんし、DB601系以降に登場した水噴射式の新型発動機は「金星」でさえ不調が記録されています。部隊レベルで行われる整備の工数に極端な差があったとは思えないんです。
BUN
- 日本での航空用水冷発動機の冷遇は、二大発動機メーカー「水冷の三菱、空冷の中島」の一翼である三菱が生産の主体を空冷発動機に改めたことから始まっているように思います。(三菱の水冷発動機はそれで終焉を迎えたわけではなく、大戦中も2000馬力超級のユモ系の試作実験を続けています)このときの三菱の判断は「空冷の方が生産コストが安いから」という意味合いの大きいものです。こうして、国内で製造される大部分が空冷発動機となったため、当然、整備教育も空冷に対するものがメインとなります。水冷発動機の装備に当たっては整備員の再教育が必要であり、この不徹底が一部で整備性の悪化を招いたということもあったのかもしれません。
また、水冷ゆえの水漏れ対策の苦労があったのも事実で、発動機本体の改修事項としても上がっています。
ですが、DB系の場合過給器、燃料噴射系統の調整が困難の大なる部分を占めていたという説には、やはり賛成です。
片
- >3
>当然、整備教育も空冷に対するものがメインとなります。水冷発動機の装備に
>当たっては整備員の再教育が必要であり、
空冷→空冷の変更であっても整備員の教育は必要となるようですよ。いちいち教育しなおすのは時間の無駄なような気がしますが、整備員の数多く養成するため機種別教育を実施したりして教育範囲を狭い分野に絞らざる得ない事情があったようです。
川崎まなぶ
- >4
その突っ込みは当然あるだろうと思ってました。
ええ、そのとおりだと思います。
片
- 昭和19年度入隊の海軍特年兵航空整備科では、寿から誉までの実用エンジンの整備実習はしたそうですが、水冷エンジンは講義も無かったそうです。
九五水偵
- 数々の回答有難う御座います。そこでもう一つ疑問に思ったので質問させて貰います。
イギリスの「マーリン」系、「グリフォン」系などの水冷エンジンの整備はドイツのDB系に比べれば簡単だったのでしょうか?
kerberoscat
- >7.
ビル・ガンストン氏の著書に英軍による捕獲エンジン評価報告書が引用されていますが、ドイツ製エンジン燃料噴射ポンプの利点は認めながらも、その部品点数と要求工作精度が高く量産整備性に困難があることを指摘しています。ただしミクロン単位の精度を必要とする燃料噴射ポンプの分解整備は前線で出来るものではなく、不調となれば新品と交換するのが手順だと思います。整備機材や予備部品が充実しており規定通りの整備作業ができるのならば、取りたてて差が出る程の違いはないのではないでしょうか。
なお、同著には「緻密でピーキーな傾向のあるマーリンに比べ、アリソン V-1710 は頑丈で整備が楽だった」というような記述もあります。
ささき