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2980 はじめまして
素人の質問ですいませんが、空戦での旋回を左右するのは横転性能、回頭性能、旋回性能だと思うのですが、それぞれ飛行機のどのような要素(性能と言ったほうがいいかもしれません)に影響されるのでしょうか?
Seraphic-gate

  1. 基本的にどれも
    翼の形に左右されます。
    つまりは・・・
    翼面負荷や
    フラップの形状
    他には・・・
    まぁ沢山ありますけど
    詳しくというか、そのくらいなら図書館の本等を利用されてもよろしいと思います。
    TAMON

  2.  簡単で難しい質問ですね。

     そもそも飛行機が空に浮くのは翼が前進して揚力を発生する為で、その値は対気速度の二乗に比例し翼面積と迎角にほぼ比例します。同高度同速度による旋回の場合、機体の自重に加え旋回求心力を支えるだけの揚力を発生する必要があり、これを荷重と呼んでいます。
     原理的に言えば、機体が軽くて揚力が大きい=翼面積が大きいほど小さい半径で回れるということになります。しかし、翼が大きくなれば重くなりますし、断面積も表面積も増えて空気抵抗が増します。そのため、実際の機体は常用速度域で適度な速度を発生できるだけの面積の翼を付け、それ以下での飛行を強いられる離着陸時のために高揚力装置(フラップなど)を用います。
     また、実際の翼が揚力を発生すると揚力に比例して大きな抵抗(誘導抵抗)が発生します。旋回では直線飛行より大きな揚力を発生させるため、誘導抵抗の値も大きくなります。もしエンジン出力が充分なければ誘導抵抗に打ち克つことができず、旋回に伴って機速が低下します。機速が低下すれば同じ迎角での揚力は下がり、求心力を維持できない=旋回を維持できなくなります。迎角を増すことによって速度低下を補おうとすると、いずれ迎角は限界値に達して失速(気流が翼面から剥離し揚力を一気に失うこと)します。
     失速速度は主に翼型と揚力によって決まります。そして一般的に厚い翼のほうが失速速度が低く、失速特性もなだらかな傾向がありますが、厚い翼は有害抵抗が大きく高速飛行に向きません。逆に高速飛行に向いた薄い翼型…いわゆる層流翼もこの一種ですが…は失速速度が高く、その特性も急峻になる傾向があります。
     誘導抵抗は揚力に比例しアスペクト比(翼平面形の縦横比)に反比例します。ならば同面積・同翼型ならアスペクト比の大きな主翼を付けたほうが空中戦に有利かというと、細長い翼では充分な強度を出すのが難しく、撓んだり捻じれたり震動を起こしたりするので高速機動に向かなくなります。また翼が細長くなるとロール方向の空気抵抗および慣性モーメントが大きくなり横転性能が悪くなる=切り返しが遅くなる問題も出ます。もちろん頑丈にすれば機動限界速度は向上しますが、大抵の場合構造強化は重量増加に直結します。

     戦闘機の設計はこのような矛盾する複数の要素から妥協点を見出して設計されます。また戦闘機の空戦機動も失速限界、強度限界、出力限界などの飛行可能領域(フライトエンベロープ)の中で行われ、高度・速度・姿勢などによって常時変化するエンベロープの中で自機に最も有利なコースを飛びつつ、相手機の苦手な領域へと追い込もうとする戦いです。個々の運動性能要素を切り離して空戦に有利・不利とは単純に語れないのです。
     もちろん軽く頑丈な機体に大出力のエンジンを積み、揚抗比が高くて失速速度が低くしかも失速特性が良好な翼を付け、防弾強固な機体に大容量の燃料を積み重武装が施せれば良いに決まっているのですが、それができれば苦労はありません (^_^)
    ささき

  3. ひとつ訂正:
    常用速度域で適度な「速度」を発生できるだけの→「揚力」の間違いです。
    ささき

  4. 御回答ありがとうございましたm(_ _)m
    Seraphic-gate

  5.  ひとつ追加。F-14 などの可変翼は速度域の変化に応じて空力特性も変化させ、なるべく広い範囲で高性能を維持できるように工夫した例ですね。しかしやっぱり重量増加、可動部が増えることによる信頼性低下/維持コストの増大などデメリットが付いてきます。
     鳥類は飛行中に自在に翼断面形や翼面積を変化させていますが、彼等にくらべると人類の作り出した翼はまだまだ及ばない点が多いです。
    ささき


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