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2928 日本の戦略における爆撃機の役割ですが、一式陸攻などを見てみましても1トン程度の爆弾の搭載量しかありません。ドイツにおいても似たり寄ったりです。
ところがアメリカのB17などを見れば分かるように、爆弾の搭載量は10トン以上です。
日本がもし、そのような爆弾搭載力のある爆撃機を開発していれば中国戦線も変わったように思えてならないのですが。
ベンゼン中尉

  1. (1)陸攻
    大昔の議論ボードのSADA氏が発言しておられましたが、
    陸攻は「不沈空母」島嶼から発進して敵艦に爆弾なり魚雷をブチ込むシロモノです。
    戦略爆撃機とはコンセプトが異なります。これは連山、2式大艇も同様です。
    (2)日本機の爆弾搭載量。
    なんだかんだ言って、一式陸攻は全備2140kgの桜花をブラ下げて出撃してます。
    陸攻や銀河は燃料搭載量をけずれば、海外の双発爆撃機なみ搭載量があったのです。
    (3)爆弾搭載力のある爆撃機
    上記の通りで、97大艇や2式大艇の搭載燃料を削れば、数トン程度の爆弾搭載は可能だったはずです。
    日中戦争当時の中国戦線は、94水偵察や95水偵でも活躍できたので、大艇でも活躍のチャンスはあったと思います。


    以上、あくまで、諸氏の回答の前フリとして、一般論を述べたつもりです。
    無頼庵

  2. もし仮にB17のような四発重爆を中国戦線に配備したとして、当時の中国大陸にルールやドレスデンのような軍需工場が集結している地域があったんだろうか?
    対米戦用の陸攻も必要だし、高空から爆弾を投下するのが主目的である四発重爆に陸攻の任務をやらせるのには少々難しいところがある。
    日本の国力不足と言う問題もあるが、四発重爆を相当数配備して重慶等の都市や空軍基地を相当程度破壊することはできるだろうけど、日本軍の補給路を脅かしゲリラ的な攻撃を展開する中国軍にコストに見合うだけのダメージを与えられただろうか?
    そもそも四発重爆をどれ位配備すれば、中国軍に実効的なダメージを与えられたのか、その代り、陸攻やら水上艦艇やら他の種類の兵器配備をどれだけ削減しなくてはならなくなるのか、その選択が当時の日本の国際戦略にとって妥当なものであるのか、考えてみる必要があるんじゃない?

    アリエフ

  3. #爆弾搭載量
     日本陸軍の場合、「重爆」というカテゴリーは戦略爆撃機を意味しません。
     陸軍航空隊は地上軍直協空軍としての性格が強く、重爆の主な目標は敵後方の基地・駐屯地、なかんずく飛行場とされていました。重爆の航続力はこの任務のためのものであり、少ない爆弾搭載量も、たくさんばら撒くほど広大な目標(要するに都市)を狙うことを想定しておらず、また、低空侵攻・対空砲火回避に必要な運動性を損なわないためでもありました。ドイツやソ連でも事情は同様で、Ju88やPe-2のように急降下爆撃能力を要求されることで搭載量に制限を受けたものもあります。
     要は、日本の重爆と米英の重爆を比べるのは、トーネードやF-117をB-52(B-17はTu-95に例えるべきかな?)と比べるようなもので、あまり意味がありません。海軍の陸攻についても1.のとおりですので、そもそも日本陸海軍の戦争のやり方自体が違っていない限り、戦略爆撃機的な機体は存在し得なかったでしょう(連山ですら雷撃機ですし…)。…でも、はたして当時の中国・太平洋に専用の戦略爆撃機を使うに足る目標があったか?
     なお、ドイツの爆撃機は一見搭載量が少ないようですが、He117で最大6トン以上、Ju88でもA-4型が最大3.6トン(ただし、急降下爆撃可能なのは1トンまで)と、米英の同級機に比べて勝るとも劣らない搭載能力を有しています。

    #「米英の重爆は10トン積める」
     B-17の場合、機内搭載は1.8トン(G型のデータに2.7トンとあるが、機外搭載込みっぽい)が限界です。また、ランカスターが「グランドスラム」10トン爆弾を積んだり、B-29が日本爆撃に焼夷弾を5〜7トン積んだ事例もありますが、ともにこの状態では10000フィート(3048メートル)以上への上昇は実用上不可能だったようです。しかも両者とも、防御機銃(+その弾薬・銃手)を減らしていることが写真や記録から確認できます。
     B-29が本来の性能による、つまり高度30000フィートからの日本爆撃をしようとすれば、爆弾搭載量は2〜3トンにとどまったともいいます。
     先ほど例にあげたJu88ですが、爆弾搭載量500キロのときの航続力が3660km、これが2.4トンだと1260kmまで落ちます。日本の重爆や陸攻の場合、後者のような状態での作戦を想定していなかった(海も中国大陸も広いので、目標や帰還地の捜索のために余裕燃料が欲しかったはず)のでしょう。
    Schump

  4. >無頼庵さん
    御教授ありがとうございました。
    大変参考になりました。

    >Schumpさん
    中国戦線は点と線の占領でしかなかったと語られていますね。
    日本が中国で決定的勝利を収めることが出来なかったのは、爆撃機の威力不足ではとも思ってみたわけです。
    一式陸攻が4発機並みの性能を持っていたと言うのは、あながち嘘ではなかったのですね。

    ベンゼン中尉

  5. B-17 自重約16トン 全備約30トン
    B-24 自重約16.5トン 全備25トン 最大30トン
     つまり米国の4発重爆は10〜14トンの搭載能力を持っています。
    Ju-88 自重約9トン 全備約14トン 差引き5トン(勿論型式によって前後しますし過荷重もあるでしょう)
    96中攻 自重約5トン 全備8トン 差引き3トン 過荷重10トン(つまり最大搭載4トン程度)
    一式陸攻 自重約8トン 全備12トン 過荷重約15トン 積載能力は4〜7トン
     燃料を何トン積むのかので爆弾に費やせる重量は変わってきます(言うまでも無いですが4発にしたら必要燃料も増えます)
     各機種が1トンの爆装をした場合のエンジン一基あたりの燃料は
    B-17&B-24 3〜3.5トン
    Ju-88 2トン
    96中攻 1〜1.5トン
    一式陸攻 1.5〜3トン
     あとは自分で考えて見て下さい。
     陸攻はJu88とほぼ似たような全備重量を持ち、機体が軽い分(急降下が出来ないとか防弾が無いとか)搭載能力で少し優位な飛行機でした(ただしJu88だって過積載すれば似たようなもんで、大きな目で見たら大差なし)
     この搭載能力を燃料に費やしたのが陸攻だったのです(ちなみに燃料は爆弾よりも嵩張るので最初からタンクを大きめにしておかないと色々困る)
     まあ、後から増槽とかで補填する事は可能ですが、やはり効率が悪化しますので、最初にどの程度を想定しておくか(2,000km飛ぶことが条件なのか、2トンの爆装が条件なのか)で重点が変わってくるわけです。

    SUDO

  6. 陸攻、重爆の第一の使用目的は、無頼庵さん、Schumpさんのおっしゃる通りなのでしょうが、陸海軍がその使い方しかしなかったかというと疑問に思います。
     昭和13年12月の陸海軍航空中央協定の作戦方針では「全支ノ要域ニ亙リ陸海軍航空部隊共同シテ戦政略的航空戦ヲ敢行シ敵ノ継戦意志ヲ挫折ス」(防衛庁防衛研修所戦史室『中國方面陸軍航空作戦』(朝雲新聞社、1974年)124頁)とうたっています。また昭和15年支那方面艦隊参謀長井上成美中将は「(重慶爆撃の)成否は、当面する支那事変解決の鍵であると確信している。この作戦は、日露戦争における日本海海戦にも匹敵するものであるとの認識のもとに、全力投球している。」(井上成美伝記刊行会編『井上成美』(井上成美伝記刊行会、1982年) 260頁)と発言しました。96陸攻、97重爆で戦略爆撃を行おうとしていたことが伺えます。
       では、四発爆撃機を持っていればどうだったかと言うと、これはアリエフさんのおっしゃるとおりと思います。重慶爆撃が失敗した原因を『中國方面陸軍航空作戦』(189, 281頁)では、第一に航空兵力が不足していたこと、第二に中国社会の前近代性、第三に地誌として四川省地方特有の天候不良などをあげています。防衛庁防衛研修所戦史室『海軍航空概史』((朝雲新聞社、1976年)122-124頁)では、中国国民の生活水準が低いこと、食糧の自給が可能なこと、軍需生産能力をほとんど持たないこと、米ソの軍需援助を受けていたこと、日本側の攻撃兵力不足を上げています。
      四発爆撃機で都市をつぶしても、ソ連、仏印、ビルマルートから兵器が入ってきますので、中国軍は継戦を続けることができたと思います。

    中年受験生

  7. ところで、この質問で対中国爆撃と対照されている連合軍の対独爆撃について、どの程度、戦線の帰趨に影響を与えたのかということも考えてみるべきでは?
    重慶爆撃とは比較にならない位、B17やランカスターといった重爆を大量に使用してドイツの軍需生産拠点爆撃を行っていたわけだが、ドイツの軍需生産は44年に最高値を達成している。これは43年半ばからドイツが本格的な国民総動員体制を取り軍需生産を強化したことが大きな原因でもあるが、44年に連日の様に連合軍爆撃機の編隊が押し寄せる中で、なぜドイツがこれだけの航空機等の軍需生産を維持できたのか、爆撃による生産ラインへの打撃をどうやって解決していたのか、こうしたことも考えないと重爆による爆撃の成果を過大評価してしまうことになる。
    アリエフ


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