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2820 初歩的な質問ですいません、過去ログにも無いもので。
1970年前後に試作された爆撃機XB70が優美なスタイルなので
気に入っています。
しかし、この機には電子機器も無く、ステルス性など論外だったそうです。
この機はマッハ3を出すことのみに開発目標が置かれた、超高速のB29と解して
良いのでしょうか。
また、2機が墜落しましたが、開発打ち切りの原因は何だったのでしょうか。

愚問ですが、よろしくお願いいたしますm(__)m

バルキリ

  1.  詳しい性能等は誰かが書くでしょうから簡単に。

     XB-70が戦闘用電子機材を積んでいなかったのは、試作機だったからです。
     またステルス性能は、この後の世代から重視されるのですが、XB70は、レーダーに探知されても、迎撃戦闘機がやってくる前に核爆弾を落とせる速度を出すツモリでしたので、ステルス性能なんぞ要らないという考え方だった訳です。(というかそれが出来ないと判ったので、ステルス航空機が出てくるともいえます)
     XB-70は、それ以前に完成して配備されていたハスラーの更に突き抜けたものと考えれば良いかと思います。
     ハスラーが維持コストの割には足が短く、汎用性が低く(核爆弾を運ぶしか能が無い)対空ミサイル等への対抗にも不安があったことへの、ストレートな対処とも言えるコンセプトであり、端から成算は低かったとも言えるでしょう。
     既に亜音速低空侵入+電子妨害(ステルスも意図としては同じ)という進入手段が提唱されつつあった事が、最終的に手間とコストのかかるバルキリーの息の根を止めたのだとも言えるでしょう。

    SUDO

  2. 試作されて飛んだのは1960年代の半ば。
    事故で墜落したのは2号機で、1号機はオハイオ州デイトンの空軍博物館に飾られています。
    便利少尉

  3. 補足:ヴァルキりーの事故は、1966年6月13日に起きました。この日は、GE社製のジェットエンジンを積んだ機体の宣伝用の写真撮影を行うため、F-4・T-38・F-104・XB-70が編隊を組んで飛行していました。
     この時、XB-70の左舷を飛んでいたF-104の尾翼がヴァルキリーの右翼端に衝突し、ローリングしながらXB-70の上面を転がり、左右の垂直尾翼のを吹き飛ばしました。しかし、XB-70の乗員はこれに気付かず、しばらくそのまま飛行した後、スピンに陥って墜落しました。
     この事故でF-104のパイロット、ジョセフ・A・ウォーカー(X-15などの機体のパイロットも勤めたベテラン)が死亡。XB-70の方はパイロットが死亡し、コパイロットが奇跡的に助かりました。

    補足2:XB-70の開発費用は現在のレートで約6120億円だったそうです。ちなみに胴体の鶴のように伸びた部分はすべてチタニウム製で、その他特殊なハニカム構造をしたステンレス・スチールなどが各部に用いられていました。そのため、開発費用以上に機体の単価が暴騰することは避けられなかったはずです。さらに、地対空ミサイルの発達で超高空侵入が安全では無くなったため、XB-70本来の意義が薄れたことも原因と思います。
    YF−23A

  4. 蛇足。同時期にソビエトでもよく似た外形とコンセプトを持つスホーイ T-4 を試作していますね。
    http://hep2.physics.arizona.edu/~savin/ram/t-4.html
    ささき

  5. >XB-70の方はパイロットが死亡し、コパイロットが奇跡的に助かりました。
    逆です。
    機長のホワイト(ノースアメリカン所属)は辛うじて脱出に成功、
    副操縦士のコットン少佐(空軍)が脱出できずに2号機と運命を共にしています。
    コットン少佐はこの日が始めてのXB-70での飛行だったとか。運のない人だったのですね。


    便利少尉

  6. お恥ずかしい。記憶モードで書いたんで、名前を間違えた。

    亡くなったのはカール・クロス少佐です。コットンの方は当日編隊の別の機体に搭乗していた。
    それからクロス少佐は一応XB-70の機長席(左席)に乗っていて、
    アル・ホワイトが右席(パイロット席)だったようですね。
    ただXB-70初搭乗のクロス少佐が、実際に機長として乗り込んでいたかどうかはいまのところ不明です。
    便利少尉

  7. 皆さん、ご回答ありがとうございました。
    よく分かりました。
    ただ、試作機数と墜落数が記憶と一致しませんでした。
    三機作られ、二機墜落と思ったのですが・・・
    ま、これはUSのサイトでも見てみます。

    バルキリ

  8. おっと、間違えました。どうもすいません・・・
    YF−23A


  9. >ただXB-70初搭乗のクロス少佐が、実際に機長として乗り込んでいたかどうか
     初登場だったのですか?
     
     初期のコンバットコミックに掲載された小泉和明氏(だったと思う)の作品のおかげで、何回か搭乗していたと思いこんでました。
     
     余談ですが、この作品では「開発費高騰・対空ミサイル性能向上」で存在意義が無くなったXB−70開発打ち切りのため“事故”を起こさせるというストーリーで、「何としても実用化させたい」というヴェトナム経験者のクロスが上司に詰め寄るシーンも。
     
     で、呼び出されたウォーカーは「とにかくあんたらの希望通り(事故)にしてやるぜ」。
     で、わざと後方から接近させたウォーカーは、うまく接触するどころかウイングレットで吸い上げられて激突、コクピットのウォーカーは吹っ飛ばされ・・・・・・。
     
     そして時は流れ、“事故”の計画者であるクロスの上司は過去を振り返り
    「軍が大金をかけた“道楽”の後始末は“事故”でなくてはならなかった。
     バルキリー、死の女神は戦士を黄泉に連れ去る・・・・・・」

     上司とその娘は空を見上げ
    「パパ、あれB−1っていうんでしょ」
    「そうだ、またバルキリーが駆け抜けていく・・・・・・」

     というラストだったと。

     異説として、SCFへの移管が(汗)。
    杉村徹

  10.  XB-70ヴァルキリーに関して一番詳しいサイトの一つ、
    http://www.labiker.org/xb70.html
    の”Midair! Midair! Midair!” (http://www.labiker.org/xb70.html#midair)では、

    June 8th, 1966.
    Major Carl Cross sits in the Valkyrie's cockpit for the first time, with Al White in the pilot's seat.
    と記されています。
     またその上には、クロス少佐がこの飛行の直前にコットン大佐と交代したことが述べられています。
    ですからやはり事故当日が彼のXB-70初飛行だったのでしょう。
    (私個人としては、実在人物の名前をあまり露骨なフィクションに使うのはどうかと思います)
     それと上の書き込みの記述の再度訂正なのですが、
    XB-70の場合は機長がコマンダーではなく単にパイロット、
    副操縦士がコパイロットと呼ばれているようです。
    ですから事故当日はやはりホワイトが機長席に就き、初体験のクロス少佐がコパイロット席と見て間違いないでしょう。

    美人薄命というか、ヴァルキリーもきれいな飛行機ですが幸薄いですねえ。
    たとえ事故がなくても制式化される見込みはまったく無かったのですし。


    便利少尉

  11. SAMの進歩や値段もさることながら、やっぱ同時期に実用化されバンバン量産されたICBM,IRBM,SLBMの存在も大きかったんじゃないかと思います。
    またキャンセルされた後、1968年に議会で再度量産を検討されたことがあったと
    思います。

    しかし個人的には、弾道ミサイルさえ打ち落とされること考えてみると、例え量産され実戦配置についても、へたすりゃ「B52より早く現役引退」なんてことになったりする可能性もあると思います。


    バウアー中尉

  12. ヨタ話。
     B-70は機体自身があまりに高価であり、燃料も大量生産・備蓄に向かない特殊なものであるうえ、長距離こそ飛べはするものの長時間滞空はできないことから作戦上の柔軟性にも欠ける(だったらミサイルのほうが人手を食わない)ため、1号機の製造開始時点にはすでに爆撃機としての採用は放棄されていました。
     救済策として戦略偵察機に改造して少数生産することも考えられ、RS-70という仮制式名称が付与されたこともありましたが、意外なところからとどめを刺されることになります。
     それは、「カナードによる空力中心調整+高速時コンプレッション・リフト利用」という基本設計自体が、スウェーデンのドラケン戦闘機が成功させた「ダブル(複合)デルタ翼による全飛行領域での空力中心安定」に対して目立った優位がない、それどころか機構の簡易さや信頼性で劣ることが判明したことで、実機が完成しないうちに旧式化してしまった=調達〜運用における良い選択ではありえなくなった、という事実でした。
     実際、同時期に開発されて戦略偵察機として大成したSR-71(番号注意!)は複合デルタ形態となっていますね。
    Schump

  13. いろいろな派生話も興味深かったです。
    こんなにレスがつくとは思っていませんでした。
    ありがとうございます。

    バルキリ


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