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隼3型は2型より高評価を得ていますが、零戦52型が21型より評価が高いかどうかは意見の分かれるところです。進化に成功した隼と失敗した零戦。なんでこうなったんでしょう? ダマリン21 |
- 隼3型では水メタノール噴射によって緊急出力を増大させているのに対し、零戦は栄21型(零戦32型以来)のまま防弾および兵装重量が増大していることが違いだと思います。水メタ噴射を持つ栄31型が何故量産されなかったのは「不調のため」とされてきましたが、最近の調査では石川島で生産された栄21型の欠陥回収のためエンジン関係者が多忙となり、栄31型に関わっている余裕がなくなった為という説が浮上しています(学研の歴史群像 No.33 「零戦2」に古峰文三氏による考察が掲載されています)。
ささき
- なお参考までに。
隼 I 型 ハ-25 950hp(栄 12 とほぼ同型) 495Km/h 7.7mm x 2
隼 II 型 ハ-115 1150hp(栄 21 とほぼ同型) 530Km/h 12.7mm x 2
隼 III 型 ハ-115-2 1300hp(栄 31 とほぼ同型) 568Km/h 12.7mm x 2
零戦 21 型 栄 12 940hp 533Km/h 7.7mm x 2 + 20mm x 2
零戦 32 型 栄 21 1130hp 544Km/h 7.7mm x 2 + 20mm x 2
零戦 22 型 栄 21 1130hp 541Km/h 7.7mm x 2 + 20mm x 2
零戦 52 型 栄 21 1130hp 565Km/h 7.7mm x 2 + 20mm x 2
零戦 52 型丙 栄 21 1130hp 540Km/h 7.7mm x 1 + 13mm x 2 + 20mm x 2
悪い評判も伝わる 52 型ですが、過剰なほどの武装搭載により速度が目に見えて落ちた丙型の悪評が誇張されて伝わっている感があります。また 52 乙型以降で搭載された三式 13.2mm は対戦闘機戦には有効な装備として歓迎されたという話も伝わっています。
一方坂井氏の発言などで評価の高い 21 型ですが、長大な翼による横転性能の悪さは 11 型の頃から指摘されており、翼端を切った 32 型の運動性能はむしろ向上していたという話があります。また栄 12 型エンジンの過給器は1速のみで全開高度は 4200m と低く、中高度以上での運用は苦しかったのではないかと思われます。
ささき
- 単にわかりやすくて説明しやすい構図に載った初期型の礼賛談話だけが紹介され続けて来ただけのことで「馬力のある五二丙はさすがに離陸も力強い」といった回想も実は沢山残っています。今流布している零戦の物語に馴染みやすい談話にだけが注目されているという事で、部隊の戦訓や個人の回想を広く当れば二一型を否定して五二型を高く評価する意見に数多く出会えます。
BUN
- 零戦といえば「坂井三郎」「堀越二郎」のおふたりが何よりの権威、ということで戦後以来やってきました。お二方とも論理的に整理されたお話しをされ、そのご意見は重んじられるに値するものです。ただ、坂井さんは二一型までの戦闘歴で負傷後送、五二型での実戦は硫黄島のみ。堀越さんは五二型の頃には設計にほとんど携わっておられません。どうしても五二型以降の零戦の評価が薄くなってしまうのは止むを得ません。五二型以降の零戦の真価については、雑多に散在する情報を地道に整理し、冷静で論理的な結論を導いてゆかなくてはなりません。そうした作業から得られたものは、まだ世間に広まりはじめたばかりなのです。零戦が進化に失敗したと言い切るのは尚早なのではないでしょうか。
片
- また、比較の対応のされ方がちょっと気になりましたので、翼幅と発動機からみた零戦と一式戦各型の対応を一応記しておきます。(実際には、ささきさんも詳しく書いておられるように武装の軽重があり、こんなに簡単には割り切れません)
零戦二一型 ・ 一式戦一型 翼幅大 栄一〇型相当
零戦五二型 ・ 一式戦二型 短縮翼 栄二〇型相当
零戦五三型 ・ 一式戦三型 短縮翼 栄三〇型相当(水メタ)
片