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機首に取り付けられた、機首砲と翼に取り付けられた翼内砲ではどちらがメリットがあるんでしょうか?やっぱり翼内砲でしょうか?ハリケーンみたいに沢山機銃が装備出来ますからね・・・。 タケ |
- 御自分で結論を出されているようですが、メリットもあればデメリットもあり、どちらが一概に優れているとは言えません。
機首銃
○弾道収束が良く距離に関係なく集中打を撃ち込める
○エンジン近辺に機銃を置けるので強度処理が楽
○重量物を機軸・重心近くに集中できるため運動性低下が少ない
○7.7mm 級なら人力で再装填操作が可能
×同調装備が必要で発射速度が 20〜30% 低下する
×同調が狂うとプロペラを吹っ飛ばす可能性がある
×大容量弾倉を設置しにくい
×頑張っても4連装が限界
×設置スペースと同調の関係で、モーターカノン以外では 20mm が上限
主翼銃
○特にベルト給弾の場合大容量弾倉を設置できる
○6〜12 連装の多連装が実現できる
○同調装置が不要
○機体強度の許す限り大口径砲を積める(37〜40mm を積んだ実例あり)
×交差弾道になるため着弾が集中しにくい
×主翼強度を確保する必要があり重量増加を招く
×片翼機銃の故障が機首の片揺れを発生する可能性がある
費用/重量対効果の面で見ると、必ずしも多銃装備は優れているとは限りません。同じ投射密度・投射重量を実現できるなら機銃はむしろ少ないほうが有利です。
ささき
- 後期型の零戦が多武装になったのは、欧米の多銃主義を採り入れた為と本に書いて在りましたが・・・。
タケ
- ↑零戦は20×2 7.7×2の機銃4挺で始まり、途中5挺の機体がありますが最終的には20×2 13×2の4挺装備機を量産して終わっています。大口径化、高初速化しているだけですね。
五二丙型の設計時にはF6Fとの火力比較が行われ「防弾は同等、火力は劣る」との判断が下されていますが、それでも機首の機銃は廃止したかったようです。
BUN
- >欧米の多銃主義
航空機銃にとって大切なのは
(1) 投射密度…時間内にどれだけの弾数を送り込めるか
(2) 投射重量…時間内にどれだけの重量を送り込めるか
(3) 一発あたりの破壊力
の3つで、機体の搭載能力と撃つべき目標に応じて妥協点を設定しています。WW2 戦闘機の武装形態は各国ごとの事情と「戦闘機」に求めた能力を反映しており、「大口径砲主義」も「多銃主義」も結果に過ぎません。「多銃主義だから」機銃を沢山積んだのではなく、「限られた時間内に沢山の弾を撃ち出したかった」から多銃主義に至ったのです。しかもそれは実戦において大きなデメリットを伴うことが判明し、英国および米海軍は大戦後半〜末期にかけて 20mm x 4 連装へと武装形態をシフトさせています。
ささき
- あの、機首砲には軸内機銃も含むのでしょうか?
プロペラとの同調の問題は解決できるし、機首のど真中に機銃を配置できるわけだから命中精度でも優れている。ただしエンジンを含めた機構が複雑になるのと、大口径を取ることができない、弾倉も大きくできないことが欠点でしょうか。
それにしてもBf109やFw190といったドイツの単発戦闘機は、なるべく機首に武装を集中させる傾向にあるような。
アリエフ
- >5. 軸内砲は大口径ですよ〜、P-39/P-63 は 37mm ですし Yak-9 系には最大 57mm を搭載した試作機があります。またエンジン側がモーターカノン搭載を前提とした構造なっていれば(プロペラ軸が中空で、バンク角が広く、補機類が軸線を塞ぐ位置に配置されていない)必ずしも複雑にはなりませんが、そうでない場合は P-39/P-63 のように凝った機構を搭載する必要があります。弾数は初期のモーターカノン(フランス・イスパノ HS404)はドラム給弾 60 発だったようですが(D.520/MS.406)、後期にはベルト給弾機銃を使い工夫して収めていたようで Bf109G の MG151/20 は 150 発(15mm MG151 の場合 200 発)、Yak-9D の ShVAK は 120 発を装填していたようです。
ささき
- 蛇足…機首銃と主翼銃を両方積んでイイトコドリをしようとした設計が有名?な駄作機フィッシャー XP-75 に見られます。V-3420 エンジンをコクピット後方に置き延長軸駆動を採用しながら、軸内機関砲ではなく同調 12.7mm 機銃4挺を機首周辺にぐるりと配置(二重反転ペラと同調させるため 60 度離して設置)、主翼には 12.7mm 6連装を搭載し合計 12.7mm 10連装の火力を持ちます。武装云々以前に機体そのものが救い難い駄作だった XP-75 ですが、何故こんなに極端な武装形態を選択したのかは興味深いところです。
ささき
- >3 それでも機首の機銃は廃止したかったようです
これは一体どういった理由からなのでしょうか
セミララ
- 日本では、とりわけ海軍に多銃化の傾向が強く見られるように思います。
烈風の武装が20oの六挺の主翼装備に向かっていったのは下の質問とその回答にある通り。
甲戦として期待された川西十八試「陣風」の場合、前計画の十七試陸戦では20mmと13mm各二挺だった要求が13mm機銃は据え置きで20mm四挺に強化され、この十八試甲戦が消えた後の紫電改にも、機体を150o延長して機首に三式13mmを二挺追加した、試作機が二機存在します。
(「どっち?」によると、これを三二型と呼ぶのは不適当らしいですが)
有名どころのこの三機種がいずれも六挺装備に走ったのは決して偶然ではないと思いますが。
>3 それでも機首の機銃は廃止したかったようです。
上を書いていて気になったのが、陣風と紫電改三には機首銃の装備があること。
機首銃を廃止したかったのは多銃武装は荷が重いとされた零戦だけの話なのか、それとも紫電改三などの他の機体も含めた方針なのかが聞いてみたいところです。
烈風天駆
- ↑の訂正。正しくは
(「どっち?」によると、これを三一型と呼ぶのは不適当らしいですが)
烈風天駆
- ↑「多銃主義」という言葉が先に頭の中にあるのでそう思えるだけです。あれはただの重武装。足りないので足しただけです。
紫電改の機首13mmも計画のみで廃案となっています。これは機銃と同調装置、管制装置生産上の都合です。足りないものは足す。無用な複雑化は避ける。という単純な事で、30mm四挺より20mm六挺が優れているというような理屈ではありません。
BUN
- 実現可能かどうかは別として、紫電改のさらなる発展型には機首銃はなく、20ミリ×6翼内を狙うことになっていたはずです。
片
- ああ、それから、陣風の機銃は六挺じゃないですね。
翼内は20ミリ×6です。
片
- 13mm機首搭載による兵装強化案というのは19年度の現用海軍戦闘機 紫電、雷電、零戦に共通の計画ですね。
BUN
- 13ミリは明らかに対戦闘機戦闘用ですね。
雷電にも考慮されてはいたが、もっとも現実から遠かった、と。
片
- 雷電は積む場所を削っちゃったんでどうにもなりませんね。
BUN
- そりゃそうか。
片
- 戦闘機に装備可能な武装重量は殆どエンジン馬力で決まってしまいます。「大口径小数主義」も「小口径多銃主義」も、その限られた重量をどう振り分けるかという問題だけなんですよ。大威力で発射速度の高い機銃があれば、無理に沢山積む必要はないんです。
日本海軍は軽量で比較的発射速度の低いエリコン 20mm (2 号銃で自重 35Kg、M2 12.7mm の 39Kg より軽い)を持っていたので、手っ取り早い火力強化として多銃化に進んだだけだと思います。また海軍にくらべ機首武装偏重(かつ比較的軽武装)の傾向がある陸軍機も、「本命」の次世代機キ-87 やキ-94 では 30mm 機銃を含む主翼多連装へと向かっています。
ささき