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複葉機の主翼が上下の主翼で前後にズレているのは、何故でしょうか?上下の主翼が重なってしまうと、揚力が半減される為にズレしているのかな・・・。 タケ |
- ずれていない複葉機もすごくたくさんあります。
スタッガーをつけるのは空力中心位置とコクピット位置の関係で、主翼で視界を遮らないようにつけているのが普通です。
たいてい前下方視界確保のために下翼を後ろに下げますが、前上方視界確保のために上翼を後ろに下げる逆スタッガーというのもあります。
が、単におしゃれのためにつけたとしか思えないような機体もあります。
まなかじ
- 1.のように主に視界のため(だから大型複葉機ではスタッガーなしが普通)ですが、空力的意味がないわけではありません。
翼周りの気流は(揚力の反作用やら上下面の流速差やら翼端過流の巻きこみやらで・実は解釈の差)下向きに曲げられるため、その分だけその翼より後ろ(特に後下方)にある翼の迎角は小さくなることになります。
これを利用して、下翼を後方に置いて失速しにくくすることで上翼失速時に頭下げモーメントがかかるようにする、という設計手法が存在します(模型ではポピュラーな手法)。ただし、戦闘機やアクロ機のように曲技をする機体では、スピンに入りやすいように=上下翼が同時に失速できるように、下翼の方の取付角を大きくしたもの(例:陸軍九五式一型練習機)もあります。
とはいえ、スタッガーを大きくとりすぎると、揚力が前後に分散しすぎてピッチ方向の制御性が悪くなるのですが。
逆に、上翼に補助翼を持つ機体では、下げた補助翼で曲げられた気流が下翼でキャンセルされて操縦反応が悪くなるのを防ぐために、スタッガーをなくしたり、下翼を弦長の極端に短いものにしたりするもの(ニューポール17、アルバトロスD.5等)があります。
逆スタッガーの例としては、ビーチ17がありますが、これは、引込脚化するにあたって、脚の取付点である下翼前桁を重心の前に出す必要があったからで、空力的意味はないそうです。
Schump
- フォッカーDr.1等の三葉機は翼面積を稼ぎ、機体をコンパクトにまとめる為にあの様な翼配列になったんでしょか?そして、上翼と下翼に補助翼が在る機体は、横転性能を高める為だったんでしょうか?
タケ
- >3
こういうときは似たもののように見えるものを比べてみましょう。
#フォッカーDr.I
総重量585kg、翼面積18.66sq.m、翼幅7.18m、110hp
…翼面荷重31.35kg/sq.m、馬力荷重5.32kg/hp
>>旋回戦闘志向。翼幅が短いことによるロール率の高さだけでなく、各翼の
アスペクト比の高さと厚翼による失速しにくさを活かした切り込みの鋭い
姿勢転換も活用。
#ソッピース・キャメル
総重量688kg、翼面積21.46sq.m、翼幅8.53m、140hp
…翼面荷重32.06kg/sq.m、馬力荷重4.91kg/hp
>>低翼面荷重による旋回性能と加速力・上昇力を兼ね備え、あらゆる敵機と
戦える性格付け。翼幅が広いことによるロールの鈍さは、上下両翼にエル
ロンを設けて補う。
#ニューポール17
総重量560kg、翼面積14.75sq.m、翼幅8.16m、110hp
…翼面荷重37.97kg/sq.m、馬力荷重5.09kg/hp
>>実は高速戦闘機を志向した機体。下翼を極端に小さいものとしているのは、
上翼エルロンの効きを妨げないだけでなく、翼間の通り抜け抵抗を減らして
速度を向上させるためでもある。
Schump