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航空機用レシプロエンジンにも自動車の変速ギヤに相当するものがあると思うのですが、離陸時とか巡航時、戦闘時にどんな操作をするのでしょうか。 ペガサス |
- プロペラピッチ(プロペラの取り付け角度)を変更します。これには狭義の「可変ピッチプロペラ」と「恒速プロペラ」があり、前者はマニュアルシフト・後者はオートマチックギヤのようなものです。
高いピッチのプロペラは高速飛行に有利ですが加速性能が良くありません。低いピッチのプロペラは加速は有利なのですが高速飛行には向きません。例えば有名なシュナイダー水上競速機は高速飛行のことだけを考えた高ピッチの固定式プロペラを付けていたため加速性能が猛烈に悪く、延々と長距離を滑走する必要がありました。
切換式可変ピッチプロペラは高低2段切り換えのような方式で、加速が必要なとき(離陸時など)は低ピッチ・抵抗を減らしたいとき(巡航時など)は高ピッチに切り換えます。
恒速プロペラはピッチ切り換えを無段階とし、設定した回転数とエンジン出力(ブースト圧)に応じた最適ピッチが自動的に選択されるように制御するものです。この場合パイロットはスロットルとプロペラピッチの2本のレバーを持ち、ピッチレバーで回転数・スロットルでブースト圧を制御します。
ピッチレバーは前に押せば「低ピッチ」、後ろに引けば「高ピッチ」となりますが、恒速プロペラの場合必ずしもレバー位置がピッチ角を直接制御する訳ではないことに注意してください。例えばその機体の許容最高回転数が 2900rpm だった場合、ピッチレバーを「低」位置に固定すればプロペラ回転数は 2900rpm に制限され、余剰のエンジンパワーはプロペラピッチを立てる(=同回転数で推力を増加させる)方向に働きます。
機体のマニュアルには離陸・上昇・巡航・空戦・着陸・緊急などそれぞれの状況に応じた回転数とブースト圧が記されています。米軍作成による疾風のマニュアルがありますので参考にしてみてください(ただし着陸に関する記述は欠如しています)。
http://www.warbirds.nu/siryo/frank.htm
ささき
- 補足:上で「低ピッチは加速が…」と書いたのは、機速が低いときの加速(プロペラ効率)が悪いという意味です。プロペラは回転する翼であり、その迎角はプロペラ面内に流入する相対風と回転速度で決まります。回転面内に流入する気流が速くなれば(=機速が高くなれば)相対的な迎角は小さくなり、回転に必要な負荷は減ります。
迎角が大きすぎる(ピッチが深すぎる)と失速してしまい、プロペラは空気を闇雲に引っ掻き回すだけで推力を生みません。逆に迎角が小さすぎ(ピッチが浅すぎ)てもプロペラは空転するばかりでやっぱり推力を生みません。固定ピッチの場合は回転数に応じてペラ効率が最適となる機速が決まってしまいます。可変ピッチはこの問題を軽減し、恒速ペラでは回転数と推力を(ある範囲内で)別個に制御できるようになるのです。
ささき