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2498 零戦の航続力に関し、最近ちょっと疑問に思っている事があります。
学研の「零戦2」を読むと、航続力について「巡航6時間」という要求に対し、
例えば11型は「巡航333km/h時:3,230km(推定)」となっています。
単純計算で約9.7時間 ですよね。
零戦の航続力は、仕様に対し過剰スペックだったのでしょうか?、それとも、
何か見落としor勘違いしている箇所があるのでしょうか?
mikey

  1. (推測モード)太平洋上や中国奥地への長躯侵攻に十分に対応するための航続距離だと思います。
    吠える狂気

  2. 「実戦において有効だったたか否か」ではなく「仕様に対し適しているか否か」という点が気になっています。
    仕様に対し約1.6倍 という値は、自分には、工業製品としてあまり誉められたものではない、と映ったのです。
    自分なりに考えた答えは下記の4点ですが、実際にはどうだったのでしょうか?
    1)増槽の有無の違い
    2)巡航速度が異なる
    3)設計段階で見積りをミスした
    4)余裕があったので、仕様の1.6倍 にした
    mikey

  3. 長距離進攻は機体完成後、しかも中国派遣決定後に決まったことですから置いて考え、更に容量が変わる増槽もまた置いて考えて、問題は機体内におさまる燃料搭載量、正規状態452リッターが何に対応しているかでしょう。少なくとも全力運転で345リッター/時という非常に燃費の良い栄一〇シリーズに対応したものではなさそうですね。これは面白い問題だと思います。
    BUN

  4. すみません。>1)増槽の有無であって、「増槽の容量の違い」ではないんですね。私の読み違いでした。156pの右下の部分をお読みください。計画要求を設定する段階では増槽は115リッター〜160リッターだったことがわかります。
    これで八割かたの謎が解けるでしょう。上の書き込みはその上での小さな疑問です。(452(満載525)とは十七年三月航本作成の「一号艦戦及二号艦戦性能比較」での燃料搭載量でした。取説にある数値とは違いますね。)
    BUN

  5. 15年から16年の夏頃にかけては翼内タンク380リットルのみが正規状態での燃料搭載だったみたいですね。胴体の62リットルはそのあとで出来た規定のようで、だんだん正規状態での燃料搭載量は増やされていった経緯があるようにも見受けられます。


  6. 「零戦2」と「零戦(堀越・奥宮)」に載っているそれぞれの性能要求を比較すると、面白い相違があります。

    (「零戦2」に掲載の性能要求)
    イ、正規満載状態に於て高力馬力1.2時間
    ロ、過荷重状態に於て高力馬力1.5時間 巡航速滞空6時間以上

    (「零戦(堀越・奥宮)」に掲載の性能要求)
    正規状態 公称馬力で1.2時間乃至1.5時間
    過荷重状態 公称馬力で1.5時間乃至2.0時間 巡航で6時間以上

    ・・それぞれ数字が違いますが、「零戦(堀越・奥宮)」を詳しく読むと、
    『十二試艦戦に対する計画要求は、会社側でその検討中に日華事変が勃発したために、その当初の要求に新しい戦訓に基づく要求(特に航続力)が追加されて、次のようにはなはだしく過酷なものとなっていた。』
    との記述があります。時系列を見てみると・・

    昭和12年5月19日 三菱、中島両社に「計画要求書案」交付
    昭和12年10月5日 三菱、中島両社に「計画要求書」交付(※この時点での内容が「零戦2」に掲載)
    昭和13年1月17日 横須賀の海軍航空廠に於て「計画要求書」に対する官民合同の研究会

    この昭和13年1月の海軍航空廠での会議で『改めて新試作機の性能要求に対する真剣な討議が行われた。』とあり、これら一連の経緯の後で、『こうして計画要求も最終的に決まった』と記述されています。「零戦(堀越・奥宮)」に載っている『性能要求書抜粋』には、(ほぼ原文のまま)との注釈が付いていますが、これは昭和12年に出された要求書の内容に、昭和13年時点での追加要求を加えて編集したという意味を表しているのかもしれません。

    さて、実際の零戦の機体内の燃料搭載量を、BUNさんの挙げられた345リッター/時という数字で計算すると、「零戦(堀越・奥宮)」に掲載されている『公称馬力で1.2時間乃至1.5時間』という数字をちょうど実現しているのが分かります。
    そして機体内の燃料を満載した上で、過荷重状態での『公称馬力で1.5時間乃至2.0時間』を実現する為に必要な増槽の容量を計算すると165リッターとなり、これは『計画要求を設定する段階では増槽は115リッター〜160リッター』という数字とも符号します。

    つまり実際の零戦は、昭和12年の計画要求ではなく、「零戦(堀越・奥宮)」に掲載されている、昭和13年に最終的に決定されたという計画要求を実現していると言えるかもしれません。
    MITTU

  7. ええ、こうやって読んで戴けたら書く側も幸せですね。ありがとうございます。
    ただ、私のノドに引っ掛かっている事柄としては、瑞星と栄では瑞星のほうが10%程度、燃費が悪いのではないかとの疑問です。この問題はどこかに反映されていないものかと思い、色々と探しています。
    また、全力1.2時間と1.5時間は審議の席上でも言われている通り、大きな違いではないでしょうか。そして2時間に伸びるなら、巡航6時間以上との項目もそれに応じて変化するはずなのですが、それはどうなっているのか。あの本の記述について今ひとつ信頼が置けないのはそういった部分なのです。私は十二年に交付された計画要求書の内容が、戦後間もない時期に原本を確認できないまま記憶とメモ等によって再構成されたものではないかと思っています。

    BUN

  8. >1
    読み返して気付いたのですが、仕様に関する推測をなされているのですよね?
    何やら勘違いをして、2番の冒頭で、見当外れの事を書いていました。
    申し訳ありません。
    mikey

  9. 成る程、やはり見落しがありましたか。
    あと、自分が疑問に思っていた箇所以外にも、色々と問題があった訳ですね、勉強になりました。
    教えて頂いた事を元に、改めて航続力を試算してみました。
    ちなみに、増槽をつけた状態での巡航時の燃費は 97.4L/時 として計算しています。

     燃料搭載量 航続力(巡航時)    航続力(全力時)
     機内 増槽 機内+増槽(機内のみ) 機内+増槽(機内のみ)
     380L 160L 6.28時間 (4.63時間) 1.57時間 (1.10時間)
     452L 115L 6.69時間 (5.51時間) 1.64時間 (1.31時間)
     452L 160L 7.16時間 (5.51時間) 1.77時間 (1.31時間)
     525L 115L 7.58時間 (6.40時間) 1.86時間 (1.52時間)
     525L 160L 8.05時間 (6.40時間) 1.99時間 (1.52時間)
     525L 320L 9.69時間 (6.40時間) 2.45時間 (1.52時間)

    (機内:380 増槽:160 )の組み合わせだと、「高力 1.2時間」の仕様を満たす事ができなさそうですね。
    それで増えていったのかな?
    個人的には、「零戦2」に掲載された仕様を満たすには、(機内:452 増槽:115 )の組み合わせが最も良さそうな気がします。

    機内525Lだと、それだけで仕様を満たしています。
    ....基本的な事をお尋ねしますが、「過荷重状態」って、増槽込みの状態ですよね?
    これだと、増槽を考慮しない設計になっている様に見えるのですが。

    「零戦2」p156の「正規:高力1.2時間、過荷重:高力1.5時間」と言う箇所から、増槽115Lが高力 0.3時間分だと解釈しました。
    ここで想定されている発動機の高力時の燃費は 383L/時、高力1.2時間での燃料の所要は 460L と言った所でしょうか。
    実際の瑞星がもう少し燃費が良ければ、452L=高力1.2時間分 と言うのも成り立ちそうですね。
    ただ、燃費 383L/時でも、(機内:518 増槽:115 )だと「正規:高力1.35時間、過荷重:高力1.65時間」となり、「零戦(堀越・奥宮)」の性能要求に合致しそうです。
    案外巡航時も、上記条件で6時間強になってたりして。

    何だか、最初から栄で設計しておけば、もっと楽に零戦を創れた様に思えてきました。
    でも実際のところ、瑞星の燃費ってどの程度だったのでしょうか?
    mikey

  10. 過荷重は必ずしも増槽容量を含めるとは限らないです。
    5でも少し書きましたが、A6M2の場合、初期には胴体内タンクの容量そのものが過荷重とされており、正規状態では翼内380立のみでした。少し時期が下ると、過荷重の定義自体が変更され、翼内380+胴体内62になります。この段階でもまだ、胴体内タンクの残容量83立は過荷重の扱いなのです。「第一過荷重状態」では増槽は含まれません。



  11. >10
    ありがとうございます。
    事実を抑えないと、迷走してしまいますね(^^;
    申し訳ありませんが、初期(正規380L)の時点での、各過重状態での燃料の設定も教えてください。
    「零戦2」p112に、「満載状態はあくまで特殊な状態」との一文があったので、増槽を付ける際、必ずしも胴体内が満載になるとは限らないと認識しています。
    各々の状態で、燃料はどの様に割り振られていたのでしょうか?
    mikey

  12. 15年7月の「仮取扱説明書」によれば、
    正規全備状態  翼内380
    第一過荷重状態 翼内380 胴体138
    第二過荷重状態 翼内380 胴体なし  増槽320
    第三過荷重状態 上に同じで爆装
    第四過荷重状態 翼内380 胴体138 増槽320
    第五過荷重状態 上に同じで爆装


  13. ↑は実戦経験前だということに注目すべきなのでしょう。
    19年10月の「集成取扱説明書」(一一型・二一型)では、

    正規状態    翼内380 胴体 62
    過荷重
     第一偵察状態 翼内380 胴体145
     第二偵察状態 翼内380 胴体145 増槽330
     爆撃状態   翼内380 胴体145 爆装


  14. >12&13
    早急なる回答、ありがとうございます。
    本音を言うと13の内容も欲しかったので、助かります。
    取りあえず、9番を、12番の内容に合わせて修正します。

           燃料搭載量 航続力
     状態    機内 増槽 高力時  巡航時 
     正規全備 :380L −  1.10時間 4.63時間
     第一過荷重:518L −  1.50時間 6.32時間
     第二過荷重:380L 320L 2.03時間 7.92時間
     第四過荷重:518L 320L 2.43時間 9.60時間

    正規全備状態と第一過荷重状態で、「零戦2」に掲載されている仕様を満たしているように見えます。
    と言うよりも、仕様に合わせて、燃料の設定を行ったのかな?
    #正規・高力時の値は、1.2時間 に満たないですが、誤差と言うことで(^^;
    mikey

  15. さて、もしそうなのだとすれば、要求に対する零戦の燃料容積は、当初に燃費が過大に見積もられていたとしても、翼内槽+胴体内60リットル程度+九六戦程度の落下増槽で十分だったのかも知れません。これは増槽を除いた機体分だけで見ると三二型の胴体タンク容積とほぼ等しくなります。このことは何を意味するのでしょうか。
    A6M1〜M2の防火壁がイレギュラーにも「0番隔壁」と名づけられ、M3に至って防火壁が1番隔壁に後退しているという例の事実と勘案してみれば、零戦の設計は当初から二速過給器付発動機を見込んでのものであり、その実現までの間にとりあえずより軽い発動機を載せたために胴体内に余積が出来、これを暫定的に胴体内燃料タンクを拡大することで埋めた結果が、やや過剰とも言えるA6M2の燃料搭載量だったのではないでしょうか。


  16. 9を書いた辺りから、「零戦は、高力時の燃費が 383L/時の発動機を想定して仕様が定められた」と考えを改めたのですが、実は、栄21型がそれにあたるのかな?と思い、9と同様の計算を行っていました。
    ちなみに栄21型の燃費は、「零戦2」に記述されている零戦32型の情報から、
     巡航(増槽なし):83.3L/時、巡航(増槽つき):98.9L/時、高力:434L/時
    としています。
    航続力の計算結果は、下記の通りです。

     燃料搭載量 航続力
     機内 増槽 高力   巡航  
     480L ---- 1.11時間 5.76時間
     525L ---- 1.21時間 6.31時間
     480L 160L 1.47時間 7.38時間
     480L 320L 1.84時間 9.00時間
     525L 160L 1.58時間 7.92時間
     525L 320L 1.95時間 9.54時間

    (機内:525 増槽:160 )の組み合わせは、結構良い線いっている様にも思えましたが、
    ・正規 :高力1.2時間、巡航6時間
    ・過荷重:高力1.5時間
    と、本来の仕様と似て非なるものになると見えたので、仕様にて想定された発動機とは異なるものだろうと判断しました。

    しかし、「0番隔壁」の件を知り、判断が早計だったかな?、と思い始めています。
    そこで、幾つか質問を行います。

    Q1. 「0番」と割り振られるケースは、他の航空機を含めて考えても、特殊なものなのでしょうか?
    Q2. 仕様決定時あるいは設計時に、栄21型(に相当する発動機)の燃費は、どの様に見積もられていたのでしょうか?
    Q3. A6M1の航続力、あるいは瑞星13型の燃費について、ご存知でしたら教えて頂けないでしょうか?
    mikey

  17. パラパラッと捜してみましたが、胴体モノコックの先端部が「0番」になっている例はかなり少ないようです。メーカーによっても多少図面の書き方に差があるようなのですが、少なくとも零戦と同じ三菱の九六戦、零観、雷電、烈風などは1番から始まっています。


  18. >17
    ありがとうございます。
    堀越氏の手になる戦闘機の中で、A6M1&2のみ最先端部が「0番」となっているのですか。
    仰る様に、イレギュラーな感じがしますね。
    烈風が1番から始まっている点は、何となく気になりますが。
    正直、まだ未消化な部分もあるので、もう少し自分なりに考えてみようと思います。
    mikey


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