2299 |
日本の発動機(ハ番号が覚えられないので海軍式で)のうち、誉はその複雑さゆえのトラブルで充分な出力を発揮できなかったという話をよく耳にしますが、それ以外の発動機、栄や金星や火星などについては、そうした何がしかの欠点についての話をほとんど聞いたことがありません。 終戦間際の工作技術の低下によるトラブルは除いたとしても、これらの発動機に何の問題もないというのは考えられません。これら主要のエンジンにはどのような欠点、問題点があったのでしょうか? A-140 |
- 誉は複雑なエンジンではありません。栄と同系統のごく当たり前のエンジンです。しかし、誉に問題があるのなら火星、金星にも多かれ少なかれ問題があるだろう、との推論は当っています。
BUN
- >1
誉を当たり前とする理由はなんなんでしょうか?
誉に対し通常の認識では
・ハイオク仕様
・高回転&高圧縮
といった、戦時にはあるまじき仕様と思う所があります。
(この部分も実際とは異なるのでしょうか?>現代の人の誉に対する認識)
BUN氏の意見から察するに
コンパクトに18気筒化しただけの発動機だったのでしょうか?
かんちゃん
- 「複雑」というのと「高回転&高圧縮」というのは全く意味が異なると思うのですが・・・?
BUNさんが書かれているとおり、機構的にはそれほど「複雑」なことはしていません。
それと、誉が設計されたときは燃料事情の良い時期で、100オクタンを前提に開発したこと自体は当然と言えます。他の国だってやってることです。
誉にとって不運だったのは、量産期になって燃料事情が悪化してしまったことです。テストでは、故障もさほど多くない優秀な成績だったのですから。
胃袋3分の1
- >2の方。
これといった機械要素が増えている訳でもなく、基礎となった十四気筒発動機に優秀な実績がある十八気筒発動機が当たり前の発動機ではなくて何でしょうか。
従来よりも高回転、高圧縮比を狙うのも誉の発想の原点に照らしてみれば当然で、栄の高馬力運転が成功した実績の上に発想された誉に対して高回転、高圧縮比でなければ良い、とする発想自体、私には理解し難いものがあります。栄の十八気筒版を高回転高圧縮比で開発する以外に戦争に間に合う次期戦闘機用発動機を得る道が無かったのですから、それは誉が無ければ良い、という事と変わりがありません。
誉に対する評価はその開発時の環境や歴史を踏まえて再考する必要があると思います。
BUN
- 補足すると、誉の不調問題は大きく分けて、
1.設計に起因する機構上の問題(燃料分配など、改設計を繰り返した諸問題)
2.設計に起因する工作の困難(「複雑さ」とはちょっとニュアンスの異なる問題初期で中止された鋳込みフィン等)
3.設計に起因する整備上の問題(整備しにくい、電線類の焼損が多い等の問題)
4.生産工場統合による品質管理上の問題(陸海軍発動機工場統合による生産の混乱)
5.戦局悪化に伴う潤滑油、燃料の供給問題(燃料よりも潤滑油問題が特に深刻)
6.戦局悪化に伴う整備技術水準の低下(整備員の供給不足と教育の困難)
このような諸問題を誉の設計を多少改善するだけで解決できる訳がありません。しかもこれらの問題は発生と同時に対策が開始され、一つ一つ改善案が立てられて実施され、一部は大いに成果を挙げていますので誉に関しては時期を追って論じなくてはならないのです。
こんな紆余曲折は戦時中にどんなエンジンを造ろうが多かれ少なかれ発生していた事でしょうし、誉と同じく栄の信頼性も低下していることは海軍側の記録にも残されていますので、特異な発動機として誉単体を取り上げて論じるだけでは「誉問題」の一部を撫でるだけに終わりかねないと私は思っています。
BUN
- 誉が必ずしも言われているほどの欠陥品だとは思っていませんでしたが、多少問題点を見間違えていたようです。皆様、ありがとうございました。
ところで、栄や金星や火星などのトラブルとは、具体的にどのようなものだったのでしょうか?
A-140
- ↑そこから先は自分で調べるから楽しいんです。がんばりましょう。
BUN
- 初期の零戦では、国内計測データと米国計測データに大差ないですが、
雷電や五式戦の米国計測データでは、国内計測データより
最高速が100km/h近く向上してますよね。
ここらへんに手がかりがあると、個人的には思ってます。
無頼庵
- >8
それは日本では計測していない時間制限のある緊急出力で米軍が計測しているからだと思いますよ
実際に日本の公称近似(回転数・過給圧)での計測結果は国内のそれと殆ど変わりませんから
SUDO
- 年末の課題にして自分で調べてみます。皆様、ありがとうございました。
A-140
- 自分も、よく言われる「誉が悪人」とは思っていません。
当時の事情も知りもせず、「誉が悪人」と思う方がおおいです
(疾風や紫電改、銀河etc。。。)
自分も当時の事は文書からしかわからない人間ですが、
俗意見は話半分に思っています。
しかし、誉が栄の18気筒版だけの位置では無いと思います。
機械的に大きな変更はなかったかもしれません。
試作レベルを維持するのが難しい状況になるとは思っていなかったかもし
れません。
しかし「高圧縮&公回転」&「ハイオク仕様」は稼働率が下がる要因です。
実際、この辺りが問題だった事が多いでしょう
当時(先まで維持できないであろう事を)わかっていたと
思う機構を採用したのは
現状を見ようとしない、結果重視のものでしかないとは思いませんか?
かんちゃん
- 11.
「高圧縮比&高回転」&「ハイオク仕様」は稼働率が下がる要因ではなくて、主に「運転制限を課す要因」になってるのではないでしょうか?つまり、それでちゃんと運転できなければ回転数や圧縮比を下げればすむ話です。壊れるのを承知で「高圧縮比&高回転」のまま使うことはないでしょう。
なお、誉は少なくとも二一型までは特に「高圧縮比」ではありませんよ。
それから「当時(先まで維持できないであろう事を)わかっていた」と書かれていますが、設計完了が昭和15年9月ですから「設計段階ではわかっていなかった」とするのが正しい理解だと思います。
胃袋3分の1
- >11
大戦末期の日本軍の発動機はどれも同レベルの燃料を要求しています
よってハイオク仕様だというのは、ほぼ全ての発動機に当てはまる物ですし
日本軍の燃料品質は常に良い方向へと進んで居た事も事実です
水メタ+92オクタンが、100オクタン相当の性能であった以上
誉の100オクタン要求は現実問題としてクリアされていると判断できます
また高回転高圧縮は、稼働率とイコールではないです
設計や製造面において苦労が増えるのは事実ですが
ちゃんと設計されて製造されていれば、検査にきちんと通っていれば
前線で不都合が生じる事も基本的には無い筈です
自動車等のチューニングでは、高回転高圧縮化は壊れる事と密接に繋がっていますが
誉はちゃんとした工業製品です
市販の自動車エンジンで、極端な稼働率の違いが有りますか?
圧縮比や回転数は様々ですがどれも一定範囲の稼働率ですよね
その回転数や圧縮比で壊れないように作っているから大丈夫なわけです
そして、誉も同様に、壊れないように、ちゃんと動くように設計されています
SUDO
- >「高圧縮&高回転」&「ハイオク仕様」は稼働率が下がる要因です。
そう決め付けるのは早急です。
高回転、高圧縮比であることが誉の不調の全てではないということです。
現実の誉の不調は別の要因が大きく絡んでいるのでそれにも注目して欲しいと私は思っています。
また十五年試作の発動機が100オクタン仕様であることは取り立てて異常な事ではありません。当時は燃料の高品位化が急速に進んでいた時期で、栄が瑞星よりも高性能を発揮できたのも87オクタン前提の瑞星に対して92オクタンを前提にしていた事が要因の一つになっています。そして栄も二〇型の離昇出力運転には95オクタンが絶対に必要(試験飛行などの為の参考資料に「絶対」と書かれている程です)とされていますし、火星も金星も100オクタンを前提に改良が進められています。零戦も隼も87オクタン燃料では戦闘飛行ができないのです。
十八年から実用機に搭載開始できる策として栄の18気筒化による高馬力化策が最も手近で見込みがあったということで、もし仮に誉以外の2000馬力級発動機しか存在しなかったならば、日本は終戦まで2000馬力発動機を実用化できず、後世で「何故、1400馬力運転が成功していた栄を18気筒化するという現実的な案を実施しなかったのか」と批判されかねないでしょう。誉は当時、大馬力発動機を早期に実現する為の最も手近な方策の一つだったのです。その方策を実施しようとした時、様々な壁に突き当たるのですが、ハ43の惨憺たる開発状況と同じく、当時の大馬力発動機開発には多かれ少なかれ共通した壁だとも考えられるでしょう。現代の眼で見た批評は当時の状況やその時にあった将来への見通しを無視しがちになるものだと思います。
BUN
- 米軍のP&W R-2800エンジン搭載機は1940年辺りに初飛行を行っている機体もありますので
誉の設計が終わった時点で既に米軍では18気筒2000馬力エンジンが完成していた事になります。
コルセアの設計開始時にエンジンが完成していたのであれば米国は18気筒2000馬力エンジンを
1938年時点で完成させていた事になりますし、
F6Fが配備され始めたのが1943年だった事を考えると誉のトラブルの原因は
問題点を洗い出しきれないまま実戦投入した為とも思えますね。
ルージュ
- F4Uの開発話を漁ると、当初はXR-2800となっており
どうも設計は1938年には完了、審査は1939年という事みたいです
SUDO
- http://www.pratt-whitney.com/classicengines/html/CE_r2800.html
すいません、1937年でした>R-2800のFirstRun
SUDO
- 昔、旧軍資料を見たときの話。
誉って栄の気筒増加版だと思ってたワシにとっては結構ショックな出来事でした。
肉厚が薄すぎ。構造的になんかヤワな印象を受けましたです。無駄に肉を落としす
ぎの感。そのときフと思ったのは、これって1000時間エンジンなのかな?って。
(1000時間経過したら廃棄もしくは再生)
ナンボ軽量を狙ったとしても、あれじゃ実用にならんでしょーと思った記憶があり
ますです。あと80〜100kg くらいの重量増を許容してくれたらもうちょっと素性の
良いエンジンになったっぽい感じがありましたです。(これ当時の主観)
誉に関しては、開発方針自体には問題がなかったかもしれないけど、実装方針に問
題があるんでわ?という思いが今もありますです。
sorya
- >18.
あくまで目安のデータですが。
重量当たり出力(HP/Kg)
誉 2.29
R-2800 2.00
R-3350 2.08
セントーラス 1.97
排気量あたり出力(HP/l)
誉 53.1
R-2800 43.6
R-3350 49.3
セントーラス 46.6
誉の設計が軍用エンジンとしては際どいピーキーなものであったことは否定できないと思います。
ささき
- >ささきさん
排気量や重量あたりの出力で言うと
R1820と1830が約30リッター、栄28リッターで大体出力的に同じぐらい
重量では9気筒の1820が600kg、14気筒の1830は680kgぐらいで、栄は14気筒で600kg
これってR2800と誉の関係に近似してません?
排気量あたり出力
R1830 40HP
栄 45HP
重量あたり出力
R1830 1.75
栄 2.00
誉がピーキーというよりは、中島のエンジンがそういう性格なんではないかと
SUDO
- >20 SUDOさん
R-1830 は分割式マスターロッドの強度が低くてあまり高出力化できなかった事情もあるようですね。9 気筒ライト R-1820 は戦後生産型の 1820-56S で水噴射時 1475hp という性能に達していますが、これでも 2.43hp/kg, 49.4hp/cc です。中島エンジンにハイチューンな傾向があるとはいえ、やはり誉は排気量あたり出力を高く狙いすぎたように思います。
ささき
- うーん、重量・強度面での懸念はわかるんですけどね
過給器つけたエンジンで排気量辺りの出力を比較しても意味が無いのでは?
それに伝え聞く誉の故障パターンって強度面以前の問題のような・・・
(個人的には整備問題が主だと思う)
たぶんそれなりに馬力を出して動かしたら今度は強度や寿命で問題が生じると思うけど
SUDO
- soryaさん、1000時間も運転したらその誉、普通捨てるものです。
BUN
- 18.>肉厚が薄すぎ
クランクケースのことを言ってるんでしょうか?だとしたら、誉では、栄のアルミ合金製をスチール製に変えてますから、その分肉厚が薄くなっています。
胃袋3分の1
- >16、17 SUDOさん有難う御座います。
1937年完成ですか…改めてエンジン開発には時間が掛かるんだなぁと思わされますね。
昭和20年頃に誉の諸問題が解決されて来て全力運転が可能になったのが
設計終了後5年弱ですから、よく頑張ったとも言えるような気がします。
>19
排気量あたり出力がよく話の中に出て来ますが
RRグリフォン37:53.4
DB605D:55.96
V-1650-7:53.7
と、液冷エンジンでは更に大きい数字もあるのですが
こちらは比較対象として問題があるのでしょうか?
V-1650-7だと誉とボア/ストローク、回転数がほぼ同じです。
冷却関係以外に液冷の方がハイチューンに向いた部分があるのかな。
ルージュ
- 私、自家用車はプレミアム仕様のものに乗っています。
一時、金欠でレギュラーを入れていましたが、体験できる程
の出力の低下を感じました。(一番感じたのはノッキングでした)
体感以外にもありまして、
知り合いの整備工に見てもらうと、「すす(煤)」がひどく
オーバーホールした方が良いといわれました。
(最低でも二回に一回はハイオクを入れてとも言われた。)
これって戦時では致命的では?
SUDOさんのレスに、「工業品は〜」とありましたが
現在の選択肢であるレギュラーorハイオクですら違いを体感しています。
詳しい事はわかりませんが、18気筒化以上に燃料等に敏感だったのでしょう。
これらって信頼性が低いと思いませんでしょうか?
というかGTマシンのような特性であったような気すらします。
>現代の眼で見た批評は当時の状況やその時にあった将来へ
>の見通しを無視しがちになるものだと思います。
現代の機械でも上記のように、違いを感じますし、稼働率が変わります。
逆に、現代の目で見すぎた誉があるのかも?と思ってしまいます
かんちゃん
- >かんちゃんさま。
工業製品の「信頼性」と言うのは、
燃料や運転環境が「定格値」を満たした場合に通用する概念です。
自動車のエンジンは、法令で定められた
始業前点検すら行わない人のために、工業製品の概念を逸脱して
融通が効くように出来ています。
工業製品と商品との違いはソコにあります。
無頼庵
- >26 プレミアム仕様の車にレギュラーガソリンを入れる
それは信頼性以前の問題では?
BUNさんが「零戦も隼も87オクタン燃料では戦闘飛行ができないのです」
と仰ってる様にそういう使い方をすると不具合があって当然な訳です。
もし指定燃料でそのような事態になれば採用されないでしょう。
当時の燃料事情は92オクタン+水メタで100オクタン相当のレベルですから
100オクタンを超える燃料を使用するエンジンを大量生産するとは思えませんし
実際には高稼働率を維持した部隊もありますから燃料はそれ程問題ではなかったのでしょう。
議論ボードの過去ログに再生潤滑油の問題が上がっていましたので
まともな潤滑油を確保できない部隊はどのエンジンでも似たような問題を
抱える事になったのではないでしょうか。
ルージュ
- 米軍機も常に100オクタンで飛んでいた訳ではありません。
後方に供給される燃料はオクタン価の低いものもあり、その際には各種計器に運転制限の表示を加えることがマニュアルに記載されています。
日本機の場合も92オクタン仕様の機体に87オクタン燃料を使用する際には運転条件が制限されます。この運転条件を守っていると隼は高度3000以上には上昇できない他、様々な制限が加わります。戦闘飛行ができないとはこういう事を指します。
ご研究の為にあえてハイオク仕様の車に低オクタン価の燃料を給油されていると思われるかんちゃんさんは愛車のエンジンを吹かし過ぎているのです。制限を越えた領域まで運転し、ノッキングを繰り返せば如何に優秀な我が国産車と言えども壊れてしまいます。これは燃料や機械のせいではなく100%搭乗員の責任でしょう(笑)。
BUN
- チョット関係ないかもしれませんが、民間石油生成会社各社の戦時中関連の記載を読むと、100オクタン製造はお手上げ状態だった事が分かります。その辺に軍
の望むものと実際の乖離を感じます。
間借り人
- >26
既に他の皆さんのご指摘のとおり
指定された燃料を入れなければ壊れても不思議では無いです
>30
たぶん誤解があるのだと思います
100オクタンが無いというのと、誉用の燃料が無いと言う事は別です
日本軍では、92+水メタで100オクタン相当を発揮させて動かしてます
100オクタン相当の対ノッキング性能が無いと
あの誉の燃焼条件を成立させられないから、その性能の燃料を欲したのです
ですから、水メタで対ノッキング性能を引き上げる事でも代替は可能であり
それによって誉を始めとした大戦末期のエンジン群は成立しています
ですから100オクタン燃料が無いということは事実上問題にはなりません
誉は92+水メタで成立するようになってますんで
SUDO
- 取りあえず、ここの別館「真実一路」の「すてきなオクタン」を一読なさってください
URLはこれです
http://www.warbirds.nu/truth/okusan.html
SUDO
- 事実として、戦時中91、92オクタンの製造さえ苦労していた事をお忘れ
なく(ただし、国内民間各社では)
間借り人
- 苦労が無いとは言いませんが、供給はそれなりに行われていたのも事実ですし
軍の望むものと現実の乖離は存在しなかった事を述べたまでですよ
SUDO
- なるほど。
「真実一路」は大変勉強になりました。ありがとうございます。
私が思っていた
「誉は低オクタンで運用せざるをえなかった」
よって
「不具合が多発した」
という事ではないのですね。
疑問が残るのですが、「92+水メタ」≒「100オクタン相当」
とはできないのではないですか?
水メタ噴射は常に行っていないですよね。緊急出力的に使うものと認識しています。
(この認識が既に間違っていますか?間違っていたら以下は無視してください。)
どこかの本で水メタ噴射は高オクタンの代用にはならないような文献も見ました。
(気温が高い時の出力低下だったかな。。定かでないです。すみません)
であれば、92(91?)オクタンは低オクタンであり、通常(水メタ無し)運用であれば
問題が出そうですが。。
また、「低オクタン&水メタ≒ノッキング対策。」
とすると、私が(自家用車で)整備工に言われた、すす(煤)に対しては
無策ですよね。
試作時には現れない「すす」が問題だったという事は無いのですか?
PS
>ご研究の為にあえてハイオク仕様の車に低オクタン価の燃料を給油〜
金欠だったんす。研究なんて・・・できないです(~_~;
かんちゃん
- >35
ノッキングとは圧縮された混合気がプラグで発火する前に自然発火してしまう現象です。
米英の機体は元々オクタン価が高い燃料を使用していますので更に高加給を掛けて
出力を上げるために水メタを使用していましたが、日本の場合はエンジン出力を上げて
加給圧が上がった際にノッキングを防ぐ為に水メタを使用しました。
オクタン価を上げるのも水メタを使用するのもノッキングを防ぐ為ですから
92オクタン+水メタで100オクタンガソリンを使用したのと同等の効果があった訳ですね。
>水メタ噴射は常に行っていないですよね。緊急出力的に使うものと認識しています
エンジンの回転数が低い場合は加給圧も低い為水メタ無しでもノッキングは発生しないので
水メタは加給圧が一定値を超えた際に使用します。
この辺りは米軍作成 疾風操縦マニュアル和訳に載っています。
http://www.warbirds.nu/siryo/frank.htm
ルージュ
- かんちゃんさんのエンジンで煤が問題になったのは
本来の正しい燃焼をしていなかったらでは無いかと思いますが?
エンジン整備では
良い混合気、良い圧縮、良い火花が基本となっています
指定グレードより低い燃料を入れるのは「良い混合気」に反します、不調は当然です
水メタ+普通燃料を前提に設計されたエンジンには
水メタ+普通燃料で問題無いのです、それで成立するように作られていますから
勿論、他の要因で燃焼室内に煤がたまることもあるので
問題の切り分けは簡単では有りませんが
また、水メタ+普通燃料が不調原因だとしたならば
どういうテストをしてきたのだという事にもなります
たぶん今までに各氏が述べられたような問題
小さい排気量で馬力を搾り出している
軽量コンパクトに纏めすぎ
配管等の設計面の問題
生産側の混乱によって品質面で問題が生じた
整備能力低下によって適性混合気や過給圧を設定できなかった
兵站問題から高品質潤滑油の提供に問題が生じた
熟成期間が足りなかった
全ては少しずつ影響していると思いますし
どれも「それだけが原因」では無かったと思いますね
SUDO
- もともとの質問は「栄・金星・火星など、誉以外の日本エンジンにはどのようなトラブルがあったのか」ですね。私が聞く話では慢性的な油漏れ、ベーパーロック(燃料中に気泡が発生してエンジンが息をつく、特に熱帯で多発)、点火不良(再生プラグで顕著)、漏電(高電圧ケーブルの絶縁不足)、マグネトや発電機の短寿命・低信頼性などは日本製エンジンに共通していたようです。電装品にトラブルが多いのは電気に詳しい整備員が少なかったせいもあるでしょう。大戦後半になると代用素材の多用によって軸受けの焼き付きや排気管の破損が多発したようです。
ささき
- 一式陸攻の戦記で、24型の離陸のさい離昇馬力を得るため水メタ噴射をすると凄まじい震動がおきるので
それを嫌って、噴射無しで離陸する操縦者があり、離陸直後の事故の原因になったという記述を見ました。
水メタの各気筒への分配の不調が震動の原因かと見えますが、戦闘時の水メタ噴射でも震動が出やすかったのでしょうか?
Navy
- >39
火星エンジンの振動問題って奴じゃないですか?
対策として減速比を変えたりプロペラを変えたりしてますよね
水メタを使うと振動って言うのは
水メタ装置の不調以外に、出力を上げたら振動するともいえます
もしそうだとしたら、雷電で問題になった振動と根っこは同じなんでは?
SUDO
- >35
ノッキングは気筒内の温度が高いほど起きやすいので、水メタノール噴射で温度を下げてやればノッキングは起きにくくなりますよ。
それにメタノールはオクタン価を向上させますし。
VV
- 92オクタンがある程度安定的に供給されたのは、パレンバン第一製油
所が無傷で手に入ったという単なる僥倖にすぎません。日本国内の全設備
を合わせても必要量の92は入手できません。そういう流動的な状況下で
100オクタン想定から、92+メタノール想定に変化したのであれば、
なにか矛盾を感じませんか?パレンバン第一製油所は100オクタン量産
可能な設備を持っています。この割り切れない所を「真実一路」に書いて
いるつもりです。
間借り人
- 皆様、どうもありがとうございました。
誉の不調に対しての認識、工業機械への認識等いろいろ勉強になりました
どうもありがとうございました。
でも、以下の部分について説明が無いので、無理を承知で投稿します。
・100オクタンを前提にした誉。
・燃料は92+水メタノールで100オクタン相当とした。
・水メタは高過給時に使用。(低過給時には未使用)
という事は、試作時に想定した100オクタンではない、92オクタンのままで
使用されている事が通常ですよね。(離陸時、戦闘時以外の事です)
これって、想定されたオクタン以下の燃焼を大部分で行ってませんか?
(私がプレミアム仕様エンジンにレギュラーガスを入れたと同じと思いますが。。)
これは問題ではないですか?
巡航時は低オクタンでもよいのですか?
私は、車の運転は燃費を考え、ベタ踏みしません。クルージングって感じの
運転です。なのに、レギュラーガソリンでは問題だったのです。
緊急出力以外(つまり水メタを使ってない時)のことは問題ではないのですか?
かんちゃん
- >43
吸入圧が低い時は問題無いです。
混合気を大量に送り込みすぎてシリンダー内で自然発火する現象がノッキングですので、
送り込まれる混合気が少なければノッキングは起きません。
もし巡航状態でノッキングが発生するような状態なら飛行禁止でしょう。
そんな状態で長時間回せばエンジン壊れますので(^^;
ルージュ
- 現行の自動車用ハイオクガソリンには、清浄剤が添加されていますが、レギュラーにはありません。エンジン内が汚れたのは、そのせいではないでしょうか。オクタン価の違いではないと思います。
私の昔の航空整備士教科書を見ますと、規定より低い燃料を使った場合、
(1)最大荷重で運用してはならない
(2)離陸は余裕のある空域(飛行場)でなければならない…上昇力の低下
(3)航続距離が短縮される可能性がある
ので、出来る限り使わないように注意しています。
また、自動車用ガソリンは、航空用とはオクタン価の検出法が違い、様々な点で規格も異なるため、使わないように…という意味のことが書かれています。
櫻井
- ここ10年の自動車でプレミアム仕様のエンヂンはコンピュータ制御が入っています。
そのためオクタン価の低い燃料を使用してノックが起きると点火時期を遅らせる制御
をする事が有ります、そうすると未燃焼ガスが多くなりススが溜まり易くなります。
また自動車エンヂンの有効回転範囲は約4倍(巡航時1500、最大出力6000回転)です
が誉等航空エンヂンの範囲は約2倍です。
アクセル・スロットルバルブは開放した時に最大出力を出せる空気量を通過させます。
この事から低回転では、ベタ踏みしていなくてもエンヂンの要求する吸気量のほとん
ど全てを通過させている場合が多いのです。
さのため操縦者が認識する以前の微かなノッキングをセンサーが感知して点火時期を
遅らせます。(他にも何らかの操作をしていると思いますが)
そしてススが溜まり易くなります。
都市伝説かも知れませんが、渋滞でのろのろ運転の多い都市部では適当な間隔(週に
一回とか)でエンヂンに高負荷を掛けてススを焼くとエンヂン寿命が伸びるなどと
聴き及びます。
早房
- 誉の設計スケジュールから見ても、100オクタン→92(91)オクタン+水メタという流れは不自然なものは感じられないのですが・・・戦争当初は備蓄燃料で戦い、その後は南方から還送した油を用いる計画だったと思います。
実際には南方の原油は(想像していたよりも)品位が低く、航空機用のガソリンを生成するには苦労したようですが、 最終的に92(91)オクタン燃料は87オクタン+加鉛で実現させたのでは?
tackow
- 本当にありがとうございます。
このスレッドを読み直してみると、最初は理解していなかった
部分が皆つながり、再発見がいろいろとあり、勉強になりました。
最後に
元投稿の趣旨と少しずれた投稿を続けてしまい
申し訳ありませんでした。
かんちゃん