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零戦というと防弾装備の欠如や発動機の馬力不足などがよく言われますが、稼働率を問題視されるような話は聞いたことがありません。(陸軍の隼も同様ですが) 実際のところ、どうだったのでしょうか? A-140 |
- 昭和十九年六月に横空が新編航空部隊(第二航空艦隊)の現状調査をした数字が残っています。
ここでは、二つの数字が算出されており、
「見かけ実働率」=飛行せる飛行機数の累計を一ヶ月間に於る飛行日数にて除したる平均機数
「真実働率」=飛行実施日の完備機数対保有機数の比率の一ヶ月間に於る平均値
といった方法で算出したそれぞれの数字が報告されています。
その内容は以下のようなものです。
零戦 見かけ実働率 50〜60% 真実働率 45〜50%
紫電 38% 28%
銀河 45〜58% 35〜45%
陸攻 77% 69%
部隊の飛行機が配備機数に対してどれだけ動ける状態にあったかという問題は時期や場所によって大きく異なり、高い場合にも低い場合にもそれぞれに理由があるものなので、一概にどうだったとは言い難いものがあります。この報告中の紫電の成績が悪いのは報告書の説明を読む限り、脚の故障が多かったことが原因のように見えますし、意外と成績の良くない零戦は中島製の二一型がかなりの比率を占めていることが文書に記された製造番号からわかります。更に同文書中では整備員の技量をABCD4ランクを設けて分類していたり興味が尽きない内容なのですが、そこからは新編航空隊に対しての整備員の供給、教育も大きな課題だったことが窺えます。
零戦に限らず飛行機の実動率という問題は時期により波がある機材の質(これは色々な改修事項やその他の問題が反映しています)だけでなく、機材を取り巻く環境もまた大きく響いていますので簡単に良かった、悪かったとは言い切れないものがあります。
BUN
- 余談 零戦の防弾装備なんですが、五二型から装備された自動消火装置は十九年末までは前線では整備されずに放置される場合が多く実戦で作動していない場合が多かったことが判明し、その後、効果を上げているようです。技術者が少なく、電気系の整備(一般整備員にはできない事になっている)が敬遠されていた事を伝える好例だと思います。
BUN
- 詳細なご説明、ありがとうございました。
A-140
- 故障が多いと言われる誉を二つも積んでいる飛行機と信頼性の高さをうたわれる栄を一つしか積んでいない飛行機の真実働率がこんな数字である事は面白いと思います。
BUN
- そうですね。紫電の稼働率の低さは別の原因もあるのでいいにしても、銀河の稼働率は意外に高い数字のような気はします。ところで、彗星や天山などはどうだったのでしょうか?
A-140