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2267 日本軍の航空機が対戦後半苦戦した原因のひとつに排気タービンが無かったことがあげられます。排気タービンが無くては空気の薄い高空で出力が発揮できない・低空でも排気タービンなしの機体で排気タービンありの機体と同出力を出すには排気量が大きくなってしまう(エンジンの重量が大きくなってしまうほか問題あり)ということは理解できるところです。
しかし吸気圧縮方法には排気タービンのほかスーパーチャージャーもあり実際日本機にも取り付けられています。しかし実際どの本を見ても排気タービンの開発の遅れが致命的であったようなことが書かれております。
スーパーチャージャーではどこがだめなのでしょうか?排気タービンだとなぜ良いのでしょうか?理由を教えてください。
みのもんた

  1.  スーパーチャージャーの問題点はそれ(この場合、送風機と言ったほうが正しいか?)を駆動させるためにエンジンの出力を喰ってしまう点、排気タービン式過給器の利点は棄てられていた排気を利用して過給器を駆動するためエンジンの出力が喰われる事が無い点(多分・・・)だと思います。
    人見 忍

  2.  スーパーチャージャーはエンジン出力をギヤで増速して翼車(インペラ)を回します。ここで問題は高度によって最適な増速比が異なることで、例えば高々度用に最適化した過給器は離昇高度だとブーストが過剰となりエンジンを焼き付かせてしまいます。
     日本のスーパーチャージャーは殆どが「一段二速」で、ギヤが低高度用と中高度用の二段切り替えになっていました。二段ではカバーできる範囲が狭く、高々度では過給が追いつかずアップアップになってしまいました。ただし飛燕に使われたハ-40 は DB601 譲りの無段変速過給器(フルカン継手)を搭載しており、高々度での馬力低下は他の日本エンジンより少なかったようです。
     多くの場合「排気タービン」と称される機体は「初段がガスタービン、後段が機械式」の二段過給を持っています。またマーリン(P-51)や R-2800(F6F, F4U) は機械式でも「二段二速」のスーパーチャージャーを搭載しており、大小ふたつの翼車を使った二段圧縮をかけることにより高々度での過給を実現していました。特にマーリンの過給器は巧妙に設計された傑作です。
     タービンの利点は排気として捨てられる熱エネルギーを還元できるほか、タービンに流す排気と捨てる排気の比率をバルブ一つで調整でき、回転数を自在に設定できることにもあります。しかし、この辺の自動制御の技術は日本がアメリカに大きく遅れを取っていた分野でもありました。
    ささき

  3. 既に1)と2)で説明されちゃってますが

    機械式過給器は設計時に対応できる高度が概ね決まってます
    別に単段だろうが一速だろうが、それで高高度対応は作れます
    単に設計高度以外では効率が悪いだけです

    ささきさんが述べたように高高度型をそのまま低空で回したら
    オーバーブーストで壊れるか(ハイオク燃料等で多少は吸収出来るけど)
    せっかくのブーストを捨てるか(そしてそのハイブーストを生成する為に使った馬力も捨てる)

    まあ、そういうわけで機械式過給器で幅広い高度に対応させるのは困難な部分が有るわけです

    以下余談
    日本軍では高高度用本命は排気タービン式と見ていました
    結果的に従来型の機械式過給器で高高度対応させようという研究が足りなかったという側面も有ります
    どうせ排気タービンが完成したら無駄になるんですから少ないリソースを回したくなかったんでしょう

    日本で排気タービンの遅れが致命的になったのは、排気タービンが間に合う事を前提にした開発計画だったからなのです

    ドイツの場合は無段変速式の過給器を用いましたが
    これも大戦末期のDB605のAS仕様のように
    従来より巨大なインペラ(翼車)を使わないと高高度性能が出ませんでした
    大きな翼車は負荷が大きいのでAS仕様のエンジンは従来型より馬力が落ちています

    高高度でもOKなマーリンエンジンですが
    これも各種のサブタイプがあり低空仕様の翼車が小さい物や
    高高度用の翼車の大きい物等があり、必ずしも全高度で最高なわけでは有りません

    こういった問題を思うと排気タービンに魅力を感じるのは判る訳です・・・

    SUDO

  4. SUDO様
    なるほど。大変勉強になりました。便乗質問で申し訳ないのですが、太平洋戦争末期の日本の排気タービン付き試作機は、低空でプーストを逃がすバルブのような
    ものはついていなかったのでしょうか。(今の車のターボについているブースト
    コントローラーのようなもの)


  5. >4
    学研の零戦2の115頁に零戦用っていうか栄エンジン用の
    排気タービン計画のモックアップの写真が出ていますが
    その排気系取りまわしに排気放出ウェストゲイトに相当する物が出ています
    恐らく他のエンジンでも同様の機構を備えていたと思います
    SUDO

  6. 皆さんいろいろ回答ありがとうございます
    さて、SUDOさんの回答で
    >高高度でもOKなマーリンエンジンですが
    >これも各種のサブタイプがあり低空仕様の翼車が小さい物や
    >高高度用の翼車の大きい物等があり、必ずしも全高度で最高なわけでは有りません

    >こういった問題を思うと排気タービンに魅力を感じるのは判る訳です・・・

    ということが書かれていますが、排気タービンでは歯車の大きさによる高度の問題(大きい歯車は高空で役立ち・・・・)という問題は無いのでしょうか?


    みのもんた

  7. >6
    物によって違うので断定は出来ませんが、基本的に航空機用排気タービンは翼車が大きいです
    基本的に大きな翼車ほど大きな吐出量を持っています>駆動にも大きな力が要るのに注意
    発動機の馬力を食う事が無いわけですから許される限り大きな物を搭載した方が有利なわけです

    実際には排気がタービンを充分に回す力量が無いと駄目ですし
    巨大な翼車は機体デザインやレイアウトにも影響するので限度と言う物は有るのですが

    元々高高度用ですからインペラはでかいんです
    SUDO

  8. >7に追加

    当然ですが、排気タービンでも想定した高度以上ではアップアップになります

    SUDO

  9. >6.
    基本的に排気タービン過給器にギヤはありません。タービンと翼車は一本の軸でつながっています。回転数はウェースト・ゲートの開度で調整し、全開(完全バイパス)から全閉(全力駆動)まで無段階に調整できますが、逆に言えば様々な条件下でタービン回転数を安定させるガバナー装置が必要となります。日本製のタービンがうまく作動しなかった理由の一つに、この辺の補機類に関するノウハウの不足があったようです。
    なお排気タービンは排気圧と外気圧の気圧差で動作しますので、基本的には高度が上がる(=空気が薄くなり気圧が下がる)ほど有利なるメリットもあります。もっともSUDOさんが述べているように、あまり空気が薄くなると肝心のエンジンが窒息してしまいますが。
    ささき


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