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零戦三二型の翼端に発生し、速度向上を妨げたカルマン渦、とは一体どういうものなんでしょう。またこれは三二型だけの現象でしょうか、それとも他の角型翼機にも共通して発生したものでしょうか? 烈風天駆 |
胃袋3分の1
ささき
カルマン渦は流れの中に円柱などの障害物を置いた場合、下流側に交互に出来る2列の渦列の事です。
木星の地球サイズの物から、小サイズ電線のうなりの原因になるのまで、多くの流れの現象の中で見られます。
グリーネマイヤ智久
http://www.hi-net.ne.jp/~mickey/uzu2.html
グリーネマイヤ智久
http://wings.buffalo.edu/courses/fa00/mae/335/files/main.htm
に、カルマン渦と翼端渦の双方の美しい写真がありました。御参考まで
みなと
みなと
しかしこれは別の問題ですね。
BUN
烈風天駆
三二型の飛行試験は昭和17年3月頃までに二一型と同様の主翼の初期の試作機で速度試験も含めてほぼ済まされています。この結果、高々度では最大速力が相当(20ノット程度)向上するものの、中高度以下ではあまり向上が見られないことが確認されています。そして翼端切り落としは三二型生産機のもう一つの特徴である百発弾倉の為に設けられた主翼下の膨らみによる抵抗を相殺する程度(3〜5ノットずつの相殺)と見込まれています。大雑把な話としては三二型は翼端を切り落とす前から高々度以外での速力向上があまり見られなかったのです。
BUN
絵塗師
執筆陣の方々を差し置いて私が言うのもなんですが、その事については「太平洋戦史33 零式艦上戦闘機2」に詳しく書かれています。
意外な事実がわかりますよ。
2号(YOU)
片
翼端切断前のA6M3は、どうやら、二速公称高度である6000メートルでの実測速度は事前に計算された値よりも劣っているが、むしろ4000メートルとかそれ以下では計算よりも速度が出すぎているらしい。この傾向は高度が低くなるほど顕著です。
これは、何か発動機のセッティングが完成していなかったとかそういうことなのでしょうか。
片
片
レスして下さった皆様に感謝です。
烈風天駆
零戦の「捻り下げ」は、翼端失速を起こすテーパ−翼の特性を補正する為に計算されていたものですから、これを無造作に切ってしまうと、本庄技師が懸念した通り、スペックに現れにくい部分に悪影響が出てしまうのは避けられなかったでしょう。「零式艦上戦闘機2」に、三二型は宙返り頂点での捻りが困難との報告が紹介されていましたが、これは「捻り込み」のような失速すれすれを攻める飛びを試みた時に、この切断の悪影響がモロに出てしまったものと思われます。つまり翼幅短縮による旋回性能の低下だけではなく、無理めの機動をした時に限界が来るのが早い、具体的には翼端失速から突然スピンに入るか、或いは止むを得ず操縦桿を緩めるかという事になります。
堀越・奥宮「零戦」には、十七年秋の空技廠における会議で、空戦性能の劣化に反対の声が上がったとありますが、短縮した翼幅に合わせて主翼を再設計した五二型に比べると、三二型は最初に切断ありきといった雑な感が否めず、取扱説明書にも明記されている通り、切断は空戦性能よりも工作簡略化の方が急務だったのではないかという印象を持っています。
以前に復元中の二二型を間近で見る機会があったのですが、翼端の折り畳み部分は、確かにこれさえ無ければ相当作り易くなるだろうと思わせる複雑なものでした。「零式艦上戦闘機2」には、翼端折り畳みの廃止によって1ヶ月の生産機数が一割アップしたとありましたが、成る程と頷かされるものがありました。
MITTU
BUN
片