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2184 レシプロエンジンでは、液冷エンジンの方が冷却効率を余り気にせずに気筒数を増やせるように思うのですが、実際にはレシプロ時代の最後を飾った2500、3000馬力以上のクラスのエンジンは空冷の方が主になっていると受け取っています。これらの化け物エンジンたちは何故液冷でなく空冷になったのでしょう?また、冷却の問題はどう解決していたのでしょうか?
レシプロ好き

  1.  大馬力化への近道は大排気量化です。しかしシリンダ容積にはガソリンの燃焼速度からくる上限があるので、大排気量化=多気筒化を意味します。
     液冷大馬力エンジンはV型対抗12気筒で完成の粋に達してしまい、それ以上の多気筒化ができませんでした。V型16気筒やX型・W型・H型24気筒、果ては星型42気筒など各国で色々試作はされているのですが、クランクシャフト周りの構造や吸排気管の取り回しに未知の点が多く、限られた時間内に完成の粋に達することができませんでした。あと5〜6年かければこれらも完成していたかも知れませんが、ジェットエンジンの実用化によって複雑怪奇な大馬力多気筒液冷エンジンを開発する必要性は無くなったのです。
     タイフーンやテンペストに積まれたネイピア・セイバーH型24気筒は一番実用に近づいたエンジンでしたが、やはり前線ではトラブル続出の憂き目に会い、テンペスト後期型や発展型のフューリー(のちのシー・フューリー)は空冷のセントーラスに換装しています。

    >実際にはレシプロ時代の最後を飾った2500、3000馬力以上のクラスのエンジンは空冷の方が主になっていると受け取っています。
     プラット&ホイットニー R-2800 および R-4360、ライト R-3350、ブリストル・セントーラス等ですね。7×4列28気筒の R-4360 を除けばオーソドックスな9×2列18気筒で、設計・製造・整備・運用面で高い技術ハードルをクリアする必要が無かった、というのが大きな理由ではないでしょうか。つまり未知のレイアウトに挑戦しなければ大気筒化ができない液冷に対し、空冷は既存のレイアウトを拡大するだけで容易に多気筒化が出来たと。

    >冷却の問題はどう解決していたのでしょうか?
     R-4360 の場合一列あたりの気筒数を7気筒に減らし、各列の角度をゆるやかにずらす「螺旋型」レイアウトにすることで冷却気がスムーズに流れるよう工夫しています。
     また P-47(R-2800)、B-29(R-3350) といった機体の場合プロペラ基部に「カフス」と呼ばれる幅広領域を設け、一種の強制冷却ファンとして働かせることで通気量を増やしています。
     B-29 は空気抵抗削減を狙いカウリングを極端に絞った設計のため特に後列上段シリンダの過熱が激しく、のちに専用の吸入口を開口して冷却気を導入したようです。
    ささき

  2. ささきさん、丁寧な解説ありがとうございました。表扉のイラストも素敵ですね。
    質問者

  3. ↑どういたしまして、こちらこそ絵の感想ありがとうございます(^^)
    ささき

  4. えっと、ささきさんの回答でほぼ完璧でだと思いますが、
    多少補足させてもらいます。いや、そんなおおげさなものではないですが。

    まず、一直線上に気筒を並べるエンジン形式を直列といいます。
    クルマの場合、1〜2Lのクルマは大抵直列四気筒ってやつになります。
    で、エンジンってのは各気筒でドッカンドッカンと燃料を急速に燃焼させます。
    直四の場合、1,4気筒と2,3気筒が組みで燃焼させますが、これだとどうして
    も振動(1次と2次がありますが、割愛)が出ます。大排気量の場合、これが結構
    洒落にならず、下手な設計だと機体分解しかねないくらいの振動がでます。
    直六の場合、1・6、2・5、3・4を組にします。と、アラ不思議、それぞれの
    エネルギーを打ち消しあい、振動が出なくなります。完全バランスってやつです。
    現在の自動車用エンジンはバランサーというものを付けて振動を吸収させてますのでここまでの問題はでませんが、スカイラインやBMWが直六に拘るのは、ここが原因です。
    で、これを2つ並べてくっつけたのがV12です。
    と、ここまでは完璧なのですが、大排気量化していくと、別の問題がでます。
    エンジンブロックとコンロッドの長さが長くなりすぎるのです。特にコンロッドは
    長くなりすぎると、強度に問題が出ます。折れたりしなくても、「振れ」が出てくると焼き付きの原因になりますし、せっかく完全バランスにしたのに振動を起こしたりします。ブロックもゆがみやすくなります。
    で、多気筒化しつつ長さを抑えるために、直六を4つくっつけたのがX型やH型です。
    あるいは、同排気量から馬力を搾り出すために高回転化を狙ったのが、スリーブシリンダーです。

    星型の場合、振動からくる設計の制約は直列系統よりは制限が少ない上、前後にペタペタとくっつけて単列、複列、四重列と複列化していけばいいので、冷却の問題さえクリアできれば、大排気量化は(液冷直列系統よりは)簡単だったのです。

    ああ、「多少」の筈が長文になってしまいました。要約能力ないですね。
    乱文多謝です。
    タコ足


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