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2143 始めまして。一式陸攻の燃料タンクに貼ったゴムは防弾(対弾)が目的なのですか
、それとも被弾後の燃料の防漏が目的なのですか?また、「ゴム被覆よりも防弾効果の高いカネビアン内装式タンク」という記述を見ました。カネビアン自体にはなんの防弾効果もないと思うのですが、いったいどういう意味なのでしょうか?
プリンス

  1. 用語について
     タンクの出火防止には直接の装甲を施す場合と、ゴム被覆による燃料の漏れ止めを期待して出火を防ぐ方式とがあります。ゴム被覆が漏れ出た燃料に侵されて膨らみ、弾痕を塞ぐ方式はセルフシーリングタンク、自動防漏式タンク等と呼ばれます。内容を誤解するので「防弾タンク」という表現は好ましくないという指摘を以前さる方から戴きましたが、確かにもっともお話ではあります。しかし日本軍では直接装甲によるものも、ゴム被覆によるものもどちらも「防弾タンク」と呼ばれています。ですから機構に正確に「防漏タンク」と覚えていてもいずれ史料を当たれば必ず「防弾タンク」という用語に当たる訳で、何処で困るかの問題でしかありませんので、歴史的にそう呼ばれている以上「防弾タンク」の用語を生かすべきだと思っています。

    日本の防弾タンク
     日本の防弾タンクの実験は昭和十二年頃にはタンクの外側に各種ゴム類を積層した形式のタンクで一定の成果を収めています。一式陸攻の計画要求案を決定する会議でもこの防弾問題は取り上げられており、防弾採用を強く要求して論陣を張ったのは後に特攻作戦で有名になる大西瀧二郎その人でした。しかし技術サイドの反対意見が通り、一式陸攻は主翼構造と一体となった無防備のインテグラルタンクを装備することになります。これが一式ライターの悪名の原因となる訳ですが、構造的に外張り式のゴムを張る訳にもゆかず、主翼下面にゴムを張るという苦肉の策を採っています。効果は多少はあったと伝えられていますが引続き防弾の為に主翼を新設計した三四型が開発されています。
    タンクの内側にゴムを張る方式は日本では「内袋式」と呼ばれますが、この方式は被弾の際に弾の出口での被覆のまくれが少なく防弾効果が高く紫電改等が装備した外張りゴム式の防弾タンクに代わるものとして期待されています。
    有名なカネビアンはこの内袋式タンクの一番内側、燃料に防弾ゴムが侵されない為の第一の層に使われたものです。
    BUN

  2.  さらに質問なのですが、一式陸攻や天山のカネビアン内装式タンクでは、どのような天然ゴム由来のゴムが使われたのでしょうか?残念ながら浅学な私はそのような記述を一度も見たことがないのです。出来ればこれらの記述が載っている文献を御教示ください。
    プリンス

  3. 零戦の内袋式タンクですが、カネビアン層1.2mm 加硫ゴム層4.0mm スポンジゴム層10.0mm 加硫ゴム層4.0mm 二層コード2.6mm アルミ外筐1.2mmという構成になっています。陸攻のタンクも略同様です。現在市販されている書籍ではKKベストセラーズ「零戦秘録」が良いでしょう。(一一/二一型から六三型までの集成取扱説明書の復刻版 但し取扱説明書はこの他にも複数存在して、それぞれ内容とデータが微妙に異なります。)
    BUN

  4. 燃料に接する最内側に耐油性のカネビャン、その外側に天然ゴム板とスポンジゴム(抗張力0.3Kg/mm、伸張率200%以上、気泡が独立している、比重0.3以下)最外側に帆布をゴムで固めた物で作った袋をアルミ製の燃料槽に入れたそうです。
    B‐17の燃料タンクに人造ゴムの「ネオプレン」を使ってあったのを見て作ろうとしたがドイツの「ペルプナン」の模倣すら実験室の域をでなかったので、やむおえず上記の方法を採用したとのことです。
    出典 航空技術の全貌上巻 原書房。
    早房一平

  5.  話が飛んですいません。ドイツでも防弾タンクが多用されていたようですが、使用した耐油性合成ゴムの製造は、お手の物ですから問題ないと思います。しかし独ソ開戦後、シベリア鉄道が閉鎖され天然ゴムの入手は事実上不可能になります。ガソリンに触れて膨潤すべき非耐油性ゴムは、非耐油性合成ゴムを使ったのでしょうか、それとも天然ゴムの再生ゴムを使用したのでしょうか疑問は尽きません。
    プリンス

  6. 天然ゴムは船で運んだと思いますよ。それでも貴重品には違いないのでしょうが。
    tackow


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