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始めまして。一式陸攻の燃料タンクに貼ったゴムは防弾(対弾)が目的なのですか 、それとも被弾後の燃料の防漏が目的なのですか?また、「ゴム被覆よりも防弾効果の高いカネビアン内装式タンク」という記述を見ました。カネビアン自体にはなんの防弾効果もないと思うのですが、いったいどういう意味なのでしょうか? プリンス |
タンクの出火防止には直接の装甲を施す場合と、ゴム被覆による燃料の漏れ止めを期待して出火を防ぐ方式とがあります。ゴム被覆が漏れ出た燃料に侵されて膨らみ、弾痕を塞ぐ方式はセルフシーリングタンク、自動防漏式タンク等と呼ばれます。内容を誤解するので「防弾タンク」という表現は好ましくないという指摘を以前さる方から戴きましたが、確かにもっともお話ではあります。しかし日本軍では直接装甲によるものも、ゴム被覆によるものもどちらも「防弾タンク」と呼ばれています。ですから機構に正確に「防漏タンク」と覚えていてもいずれ史料を当たれば必ず「防弾タンク」という用語に当たる訳で、何処で困るかの問題でしかありませんので、歴史的にそう呼ばれている以上「防弾タンク」の用語を生かすべきだと思っています。
日本の防弾タンク
日本の防弾タンクの実験は昭和十二年頃にはタンクの外側に各種ゴム類を積層した形式のタンクで一定の成果を収めています。一式陸攻の計画要求案を決定する会議でもこの防弾問題は取り上げられており、防弾採用を強く要求して論陣を張ったのは後に特攻作戦で有名になる大西瀧二郎その人でした。しかし技術サイドの反対意見が通り、一式陸攻は主翼構造と一体となった無防備のインテグラルタンクを装備することになります。これが一式ライターの悪名の原因となる訳ですが、構造的に外張り式のゴムを張る訳にもゆかず、主翼下面にゴムを張るという苦肉の策を採っています。効果は多少はあったと伝えられていますが引続き防弾の為に主翼を新設計した三四型が開発されています。
タンクの内側にゴムを張る方式は日本では「内袋式」と呼ばれますが、この方式は被弾の際に弾の出口での被覆のまくれが少なく防弾効果が高く紫電改等が装備した外張りゴム式の防弾タンクに代わるものとして期待されています。
有名なカネビアンはこの内袋式タンクの一番内側、燃料に防弾ゴムが侵されない為の第一の層に使われたものです。
BUN
プリンス
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B‐17の燃料タンクに人造ゴムの「ネオプレン」を使ってあったのを見て作ろうとしたがドイツの「ペルプナン」の模倣すら実験室の域をでなかったので、やむおえず上記の方法を採用したとのことです。
出典 航空技術の全貌上巻 原書房。
早房一平
プリンス
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