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基本的な質問で申し訳無いのですが、 エンジンの取り付け方でPUSH式とPULL式では 性能は変化するのですか。 あと、PULL式の飛行機が多いのはなぜなのですか。 XYZ |
ただし推進式プロペラの場合、プロペラ後方に邪魔物がないのでプロペラ効率の向上が機体できます。これはメリットですね。
反面、プロペラ後流による冷却効果が期待できないので低速時や地上滑走時の冷却不良が起きやすくなります。双発推進式ベル XFM-1 はオーバーヒートのため長時間の自力タキシングができない欠陥を克服できませんでした。またキャブレターやオイルクーラー吸気口などが機体後方に配置されるため、乱流を吸って吸気・冷却効率が低下する可能性が増えます。
エンジンは重心に近い位置に取り付けることが望ましいのですが、通常形式では閃電や J-21 のような双胴にしなければなりません。強度設計が難しくなり、水平尾翼がプロペラ後流を受けて震動を起こす可能性があります。
先尾翼形式の場合、重心位置は主翼(後翼)より前方になります。この近くにエンジンを置くためには震電のように延長軸を使わねばならず、重量増加や震動発生のおそれが出ます。 また先尾翼形式は主翼内容積を燃料タンクに使いにくい(主翼の大部分が重心より後方になってしまう)ため航続距離を稼ぎにくい問題も出ます。
無尾翼形式の場合はエレベーター(エレボン)と重心が接近するため縦モーメントが稼ぎにくくなり、戦闘機として縦の安定性・操縦性を確保するのが難しくなります。XP-55 アセンダーのように「無尾翼機の重心設計+先翼エレベーター」という折衷案もありますが、この設計も成功しなかったようです。
機体がいずれの形式を取るにせよ、プロペラの投棄ないしは乗員射出機構を考えておかないと脱出不能になります。これはこれでまた重量増加を招きます。また、機体後部にあるプロペラのクリアランスを確保するため脚が長くなって重量増加を招きます。
…などなど「プロペラ効率」というメリットに対してデメリットが多く、よほど巧妙な設計にしなければデメリットがメリットを上回ってしまうのです。
ささき
http://www.wpafb.af.mil/museum/research/bombers/b4/b4-2.htm
ギヤボックスを利用してプロペラ軸を持ち上げて脚を短くし、プロペラ接地防止を兼ねた十字尾翼(Do335 に似ています)を採用しています。プロペラ脱落機能があったかどうかは定かではないのですが、試作機が墜落し乗員が脱出した記録があるため何らかの対策は取られていたものと思います。
最高速度 660Km/h はレシプロ爆撃機の限界とも思える高性能ですが冷却不良や延長軸のトラブルが解決できず、すぐにジェット時代を迎えたこともあり試作のみに終わりました。
ささき
これに関連してなのですが、双発以上の大型機の場合はどうなのでしょうか、
B36だけがPUSH式でそれ以外の米軍の双発以上の大型機はPULL式なのでしょうか。
教えてください。
xyz
ヴェトミン
推進式にする場合薄い主翼後端にエンジンを載せるか(かなり苦しい)、プロペラ軸を延長しなければなりません。B-36 は尋常ではない主翼の厚さを活かして R-4360 を埋め込み延長軸でプロペラを駆動していましたが、強制冷却ファンを付けていても過熱に悩まされたようです。
胴体中央にエンジンを乗せギヤボックスと延長軸でプロペラを駆動する案は世界各地で検討されました(彩雲や P-38 の極初期にもありました)が、技術的困難が多く実現には至っていません。
ささき
けい
PUSH式とPULL式の違い、勉強させてもらいました。
このような基本的な質問に答えていただいたささきさんをはじめ
ヴェトミンさん、けいさんありがとうございました。
XYZ