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1631  入念にタブが調整された機体は、操縦桿から手を離しても少しの間はまっすぐ
飛べると聞きました。
 タブの効能に対する私なりの解釈なのですが、理論的には舵は中正位置に
あれば飛行機はまっすぐ飛ぶはずなのですが、実際には工作精度の誤差や
プロペラトルク、重心の変動などで、ある程度当て舵をしなければならず、
パイロットが長時間それを続けるのは大変な負担なので、タブによって操縦桿に
力を加えずとも常に当て舵状態になるようにしてあるのでしょうか。その場合、
操縦桿は力を加えずとも中正位置から多少ずれた位置で安定するのでしょうか。
 このような解釈で正しいでしょうか。
絵塗師

  1.  タブには二種類あります。一つは機体や舵の癖を補正する半固定式のタブで、これは簡単な金属板を曲げて角度を調整します。当然飛行中は触れず、試験飛行の結果に応じて地上で調整します。「サワルナ」とか書いてあるやつがこれです。
     もう一つは飛行中に操作できるタブで、飛行中に舵の中立位置が適正になるようエレベーターとラダーの補正角をダイヤル(ホイールとも呼ばれる)で調整します。ただし、小型機ではラダータブが省略されている場合も多いです。

    >実際には工作精度の誤差や
    これは半固定のタブで補正し、

    >プロペラトルク、重心の変動などで
    これは可動式のタブで補正するわけです。

    >その場合、操縦桿は力を加えずとも中正位置から多少ずれた位置で安定するのでしょうか。
    直結操舵の場合、操縦桿の中立位置というのは(少なくとも前後方向に関しては)飛行機の搭載重量や速度によっても変わってくるので、「ここが中立」という決まったところがある訳ではないのです。
    ささき

  2. フライトシミュレーターのソフトをお持ちなら、まず飛ばしてみましょう。エレベータートリムの操作を例に採ります。(ジョイスティックがあれば理解し易いですし、キーボードなら尚のことトリム操作が重要になります) 今、適当な高度、例えば3500フィートを維持して水平直線飛行させてみてください。 スロットル開度は3/4に設定しましょう。 次に昇降計に注意しながら、ジョイスティックから手を離してみてください。 高度が上昇、あるいは下降するようではエレベータートリムが合っていません。手を離して高度が下降する様なら、昇降計の針が0を指し続けるように操縦桿を引きながら、その引く力が小さくなる方へトリムをあてて行きます。 操縦桿の保舵力が0、即ち、手を離しても昇降計の針が0を指し続ける状態が、その条件下(エンジン設定、昇降率、重量、重心位置、高度、大気密度等々)でエレベータートリムが取れた状態です。 この状態から次いで、エンジンの出力を最大にしてみます。操縦桿から手を離した状態では、どんどん高度が上がっていきませんか? 高度を維持するには押し舵が必要になるはずです。やはり押し舵に要する力が小さくなる方向に、最終的には保舵力が0になるまでトリムを調整します。 以上が要領です。 水平飛行の為のエレベータトリム調節を例に採りましたが、もちろん所望の対気速度、上昇率、下降率を維持するためにも使います。ラダートリムの場合、傾斜計のボールが中央に来る様に調整すればOKです。
    みなと

  3. ちなみに、セスナのエレベーター・トリム・ホイールは計器板中央下部にあります。WW2単発機の場合はスロットル付近に、また双発以上の大型機の場合は座席側面に車椅子の車輪みたいな形で付いていることが多いです。
    ささき

  4. お二方が既に説明されていますが、

    >理論的には舵は中正位置にあれば飛行機はまっすぐ飛ぶはず

    ここが、実は飛行機の縦の動きに関してはそうではなく、エレベータートリムはそのために付いているのです。これは誤差ではなく飛行機というものの性質で、小型機ではラダーやエルロンのトリム(タブ)は省略されていたり、パイロットから操作出来ない半固定式になっている事も多いのですが、最も重要なエレベータートリムだけは、必ずパイロットが飛行中に操作出来るようになっています。

    過去ログのどこかに書いたような気もしますが、端的に言うとエレベータートリムには「速度に合わせる」という性質があります。みなとさんの解説と一部重複してしまいますが、もう少しだけ補足しますと、例えば100ノットでトリムをとって水平飛行している時、その飛行機の操縦桿は100ノットが中立位置になっています。ここからスロットルを少しでも足すと、飛行機は100ノットを維持するために余剰馬力を高度に変える、つまり100ノットのまま上昇を始めます。もしそのまま水平飛行を続けたければ、パイロットは操縦桿を押し続けて水平飛行の姿勢を維持しなければなりません。そうすると余剰馬力は速度に変換され、飛行機は水平飛行のまま速度を増しますが、パイロットはずっと操縦桿を押していなければなりません。それでは腕が疲れてしまうので、新たな速度に合わせてトリムをとりなおします。

    逆に100ノットからスロットルを少しでも絞った場合、その飛行機は100ノットを維持するために、馬力の不足分だけ高度を速度に変換しようとする、つまり100ノットを維持したまま下降を始めます。水平飛行を続けたければ、今度はパイロットは操縦桿を引いて、迎え角の増加で揚力を稼がなくてはなりません。そうすると飛行機は速度を減らして水平飛行を続けますが、操縦桿を引きっぱなしではやはり腕が疲れてしまうので、先程の例とは逆の方向にトリムをとりなおします。

    つまり、既にささきさんも書かれているように、操縦桿には決まった中立位置がある訳ではなく、エレベーター舵面の機械的な中立位置も、パイロットにとってはあまり意味がありません。離陸してから着陸するまで、飛行状態の変化に伴って必要なトリムの量が刻々と変化していきますので、その都度パイロットがトリムをとって中立位置を調節するのです。
    MITTU


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