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1335 大戦後半の日本の航空機用ガソリンには、オクタン価を確保するために四エチル鉛が大量に添加されていましたが、耐久性等の面でエンジンへの悪影響はなかったのでしょうか。また、排気ガスによってパイロットが鉛中毒になることはなかったのでしょうか。
NX

  1. 四エチル鉛の添加は高オクタン燃料への移行の初期の段階で採用された技術です。当然、他の添加物を加える事でエンジンそのものへの腐食対策が採られていますが、搭乗員よりも、製造時の作業者の事故が多かったといわれています。
    BUN

  2. 鉛の付着についてはバルブのシール性の向上というプラスの要素もありますね。

    四エチル鉛をアンチノック剤として添加する場合、燃焼室/プラグ電極/排気管
    への単体鉛の付着を抑制するために、エチレンのハロゲン化物を同時に少量添加
    しますが、この燃焼時に発生する酸が内部の腐食を早める可能性は確かに
    あります。

    ただ、大戦中に使用された航空機発動機の開発時期は、接触改質法や
    アルキレーション法による高オクタン価ベースが一般的になる前であり、
    エンジンの開発自体、有鉛ガソリンを使用する前提で行われ、
    公称性能や推奨オーバーホール間隔は有鉛燃料の使用を前提に
    定められたことでしょうから、その意味では耐久性への、運用上の
    悪影響はなかったことになります。

    人体への影響について、四エチル鉛のような有機鉛は非常に人体に浸透しやすく
    危険な物質ですが、燃焼後に含まれる有機鉛は、全添加量の約0.2〜0.4%と
    いわれ、大半は鉛の酸化物/ハロゲン化物(エチレンのハロゲン化物に由来)
    といった、吸収率の低い無機鉛として排出されます。

    コックピット内に流入する排気ガスの量がどの程度の量かデーターがありませんが、
    含有量から言えば急性の鉛中毒を起こす前に一酸化炭素の方が顕著に作用
    することでしょう。

    尚、現在の航空用ピストンエンジン用に最も需要が大きいのは
    青く着色された100LL Avgasですが、ガロン当り2ccの四エチル鉛、
    重量で2.1gもの鉛が添加されています。100LL、1ccあたり鉛550μg、
    関係者の方々は取扱いに注意しましょう。

    みなと

  3. ところで便乗質問失礼いたします。

    出題に”大戦後半の日本の航空機用ガソリンには、オクタン価を確保するために
    四エチル鉛が大量に添加されていましたが、”
    とありますが、大量というと、具体的にどの位添加されていたのですか?
    また、添加された四エチル鉛は国内で合成されたものですか?

    よろしければご教示ください。
    みなと

  4. すいません、詳しいことは知りません。クラッキングによる高オクタンガソリンの製造方法が当時の日本では確立されてなかったので、代わりに4エチル鉛を大量に添加してなんとかオクタン価を確保してたって、以前どこかで読んでことがありまして。また、戦後ヤミで放出された旧日本軍の航空用ガソリンで、鉛中毒になる事例が結構あったっていうのも何かで読んだことがあります。・・・うろ覚えですみません。
    NX

  5. >青く着色された100LL Avgasですが、ガロン当り2ccの四エチル鉛、
    >重量で2.1gもの鉛が添加されています。100LL、1ccあたり鉛550μg、
    >関係者の方々は取扱いに注意しましょう。
    うちの飛行場じゃプリフライトチェックの時サンプしたアブガスをその辺にぽいぽい流してましたよ(^^;)満タンにした機体が直射日光に晒されてベントからポタポタ落ちてたし…激ヤバだったのかも?。
    しかし先日滑走路の舗装を塗り替えてから、「舗装を痛める」という理由で垂れ流しは禁止されました。今はサンプしたガスに水や不純物が入ってない限りタンクに戻してます。
    ささき

  6. 大戦中に使用された四エチル鉛は国産です。昭和十三年頃から生産に成功しています。各部の腐食問題もこの時に対策が採られたと伝えられています。
    戦時中の南方還送原油を元にした航空燃料は加鉛0.1%で80オクタン程度しかなく、加鉛0.12%で87オクタン、イソオクタンの混合で91オクタンまで引き上げられたとの記録もあります。
    BUN

  7. ちょっと補足
     ダイバーの間で沈没船めぐりがちょっとしたブームになっている。なかでもトラック島が盛んだが何人ものダイバーが潜水中、潜水後体のしびれ等体調不良を訴えていた。一時期、トラック島大空襲の際撃沈された船の積荷の中に毒ガスがあり、それが漏れ出したのではとうわさがたった。
     調査の結果、撃沈されたタンカーに積んであった航空燃料(鉛入り)が漏れ出した事が判明した。ご注意を
    白熊

  8. >今はサンプしたガスに水や不純物が入ってない限りタンクに戻してます。

    えらいですね。 僕は相変わらず「大気中に放散するより良かろう」との理由で、
    その辺に流しております。
    ただ、鉛のような重金属は少量ずつでも体内に残留するので、
    なるべく皮膚に付かないようには気をつけたいですね。
    又、現在FAAとEPAが作業中とのことですので、ここ数年の内にAvgasへの
    アルキル鉛の添加も禁止されることでしょう。
    有鉛用エンジン向けにどのようなADが出るのか、興味深々です。

    >大戦中に使用された四エチル鉛は国産です。
    >戦時中の南方還送原油を元にした航空燃料は加鉛0.1%で80オクタン程度
    >しかなく、加鉛0.12%で87オクタン、イソオクタンの混合で91オクタンまで
    >引き上げられたとの記録もあります。

    加鉛の割合が体積百分率表示で間違いなければ、
    添加率は現在でいう航空用ガソリンの有鉛100オクタン(100/130)の0.106%より
    若干高いものですね。ガソリンの組成もなんとなく掴めました。
    ご回答ありがとうございました。
    みなと

  9. 南方への輸送船上のことです、
    船倉中の便乗者に原因不明の薬物中毒者が多発し、調査の結果、便乗者の真下に四エチル鉛
    が敷かれていた(四エチル鉛にゴザを敷いただけだったらしい)

    こんな怖いこともあったそうです。
    ペンギン

  10. 四エチル鉛は比重約1.62、沸点200℃の無色、重い液体です。
    蒸気の吸入、皮膚からの浸透で人体に吸収され、急性毒性の致死量は10mg/Kgつまり、体重60キロの人なら0.6グラム(但し投与方法及び急性毒性でどうなるのかは不明)、慢性中毒症状は重金属中毒同様で、貧血、神経障害、肝臓障害など。治療は重金属キレート化剤、つまりBALなどが有効。
    昔、甲州街道の渋滞の名所、新宿牛込で排ガス中の鉛(四エチル鉛はエンジン内で分解し、四エチル鉛と同時に添加される臭素化合物と反応し、臭化鉛として排ガス中に排出される)による住民の集団鉛中毒などがありました。日本のガソリンが無鉛になったのはそんなに昔のことではなく、1970年代初めには有鉛が一般的で、その後、排気ガス対策として白金触媒マフラーを使うしかない、となった時、触媒毒である鉛の排除に向かったのでした。
    四エチル鉛は、けっして戦争ゆえの人命軽視で使われただけではありません。
    ヨーロッパでは今でも殆どすべてのガソリンスタンドで有鉛ガソリンを売っています。

    記憶モードですが、エラリー・クィーンの作品にガソリンを蒸留して、四エチル鉛を取り出し、人に飲ませて殺す、というテーマがあったと思います。
    ガソリンの蒸留は有機化学実験操作の基礎を勉強・実習してからでないと非常に危険です。
    SHI


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