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1179 ポリカルポフI16が安定性が良くなかった原因はどこにあるのでしょうか?正面の空気抵抗が大きいことが原因でしょうか。また、ジービー機をモデルにしたそうですが、こちらも高速は出せるものの安定性がかなり悪いのでしょうか(レーサー機だから初心者向けではないと思うが)
アリエフ

  1. I16の操縦が難しいのは胴体が短いため尾翼の安定モーメントが稼げず、ピッチ・ヨー方向の復元力が少ないこと最大の原因だと思います。また、主翼が薄くて翼面過重が高いため失速特性が急峻で、しかも上反角がほとんど無いのもロール方向の復元性も悪そうに思えます。
    ジービーは「殺人機」の誉れ高い?機体で、作られた機体は片っ端からクラッシュしてオリジナルは一機も残っていません。これを操縦して速度記録更新・トンプソン杯優勝などを樹立したジミー・ドゥーリトル(B-25 殴り込みのあのドゥーリトルと同一人物、彼はシュナイダー杯でカーチス R3C を駆って優勝した経歴もある)は敏感すぎるラダーの動きを感知するため、ジービーは必ず靴を脱いで操縦していたそうです。
    現在アメリカではデルマー・ベンジャミンの復元したジービーR2のレプリカの飛ぶ姿を見ることができます。これを復元するときデルマーは存命だったジービー設計者の一人に話を聞いたそうですが、「この機体で30度以上のバンクをかけたら死ぬと思え」と忠告されたそうです。しかし彼は復元したR2で数千時間の飛行経験を積み、現在ではエアショーで背面や宙返りを演じるまでに熟練しています。
    もっとも、アメリカ広しと言えどもジービーを飛ばせるのはデルマー一人だけと言われています。彼自身の言葉によれば、「R2は注意ぶかく扱えばどんな特殊飛行も安全にこなせる機体だが、着陸だけはどんなに注意してもやはり危険だ」とのこと。
    ささき

  2. GeeBeeタイプRですが、当時主流だった空冷倒立エンジン(120〜300馬力程度)搭載のレーサーと比較して、特に尾翼の面積・テイルアーム(重心からの距離)は不足しているわけではないのです。しかし、それは「グライダーだったらね」というハナシで、これで800馬力にチューンしたワスプ(R-1)のトルクを押さえ付けようというのが間違いだったわけです。R-2とてレースチューンで535馬力、復元機でも450馬力ですから、「少しはマシ」なだけでしょう。しかも離着陸時(着陸速度はアルファジェットと同じ!)に前見えないし。

    「30度以上バンクをかけたら死ぬ」の言い出しっぺはドゥーリットルのようです。
    1932年のトンプソン杯では、練習飛行で復元性のなさと高翼面荷重・薄翼(圧比7.5%)ゆえに大迎角での急旋回で失速することを確認したドゥーリットルは、本戦ではそれこそ「30度以上のバンクを取らず」大回りして周回を行っています。
    Schump

  3. ちなみにこんなんありましたわ。ラダー操作はやはりかなり繊細なようです。
    http://www.geebee.com/gallery/gallery2.htm
    Schump

  4. >2. やはり乗ってきましたか、Schump さん(笑)
    ジービーに限らず、当時のレーサー専用機は大抵短胴のうえ安定板面積過小なのが多いですね。「腕利きだけが乗る」「無茶な機動はしない」という前提なのでしょうけど。
    しかし、I-16 のデザインがレーサーの影響かどうかについては異説もあります。雰囲気は似ていますけど、図面で見るとレーサーほど極端に尾翼を削ってはいないんですよね。それでもスピン特性は極悪に違いないですけど。
    ささき

  5. 私は、寸詰まりはポリカルポフの芸風だと思っています。
    彼の作品は処女作I-5から一貫して胴体が短く、これを比較的大面積の尾翼で補って安定させる手法をとっています。これは計量化と運動性を追及したためだといわれ、実際、スペイン内戦で鹵獲したCR32とI-15の比較試験では、「機関砲(フィアットの12.7mm×2〜4に対してポリカルポフは7.7mm×2)の射程で勝る以外、空戦性能ではCR32は鈍重で恐るるに足りない」との評価を得ています。しかし、この設計方針を速度追求・一撃離脱戦法を取るI-16にまで適用したのは不適当であった(急降下からの射撃で斜線が定まらないのでパイロットから不満が出たとも)といわざるをえません。
    逆に、もしポリカルポフがエアレースの動向を正しく見極めていたとしたら、「1932年のトンプソン杯で、同じR-985エンジンを積んだウェデル=ウィリアムズ機(まともな尾部の長さをもつ)はジービーR-2(しかもこちらはワークスチューン)よりも速かった」という事実に着目しなかったはずはないとも思われます。

    さてさて。ジービーR-1て、初飛行のとき、垂直尾翼がなかったんですよ。どうやらコクピット以後の側面積だけで方向安定をとるつもりだったらしい…このため、R-1の垂直尾翼基部はR-2に比べて「とってつけたような」処理になっているのですが、市販のモケイでこの違いを再現したものは「ありません」。
    Schump

  6. >しかし彼は復元したR2で数千時間の飛行経験を積み、現在ではエアショーで
    >背面や宙返りを演じるまでに熟練しています。

    ささきさん、今年のリノでもDelmarは飛んだようですね。 
    僕も地元のエアショーで彼の飛行を見る機会があったのですが、あれは凄かった!
    バレルロールなんか見てると、実に良くコーディネートされていて、ロールレート
    自体は速いのですが、グライダーアクロのような優美さを兼ね備えていました。
    あの機体を背面に入れて、リボン切りまでやってましたし!

    また、演技終了後の機体の止め方が奮っており、ゆっくりと観客の近くまで
    タクシーして来たと思いきや、エンジンひとふかし!
    その場でグランドループに入れて1回転!機体が止まるか止まらないかという
    ところで側面の小さなドアが開き、Delmarが飛び出してきました!
    あれには度肝を抜かれました。

    >彼自身の言葉によれば、「R2は注意ぶかく扱えばどんな特殊飛行も安全に
    >こなせる機体だが、着陸だけはどんなに注意してもやはり危険だ」とのこと。

    高AOA、失速速度に近い領域でエルロンリバーサルが出る由、Delmar自身も
    3度目の着陸時に、尾輪を先に接地させる姿勢を取った際エルロンリバーサル
    が出て、危うく機体を壊すところだったと語っていました。

    ごみレスでした。


    みなと

  7. 関連して質問です。
    トンプソン杯、およびシュナイダー杯についてまとめた資料、
    Webサイトを探そうと思うのですが、定番と言えるものは
    ありますでしょうか?

    どなたかご教示いただければ幸いです。
    たかつかさ


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