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編隊空戦において2番機が1番機の援護をするのは当たり前でありますが―― 具体的に2番機は敵機が来たらどうするのでしょうか? FIX |
脅威が出現したあとの行動はそれこそ千差万別です。新たな脅威が出現した場合は目標の追尾を諦め一旦離脱(ブレイク)するのが原則ですが、ウィングマンを編隊から離して後方の敵機を任せたり、あるいは前方の目標機をウィングマンに任せて自分が後方の敵機にかかる場合もあると思います。こういった判断は原則としてリーダーが決定します。
ただし実戦ではいつも教科書通りに行くとは限りません。坂井三郎氏が硫黄島で二機編隊の F6F を見つけ、一番機の後方から忍び寄っていったところ(二番機が坂井機の後方に回って射撃姿勢に入るまで充分な時間があると踏んだ)、二番機は予想に反して坂井機と目標機の間に割り込み射撃を妨害したそうです。さすがの坂井氏もこの行動に射撃タイミングを狂わされ、二機は「鋏を交差するような」典型的な相互援護の機動を描きながら離脱していったそうです。
また、ロック岩崎氏が F-15 搭乗時代に米軍の F-16 と模擬空戦をやった時の話によると、F-16 はさっと編隊を解いて高位・低位に分離、高位の一機(ウィングマン)を囮として低位の一機(リーダー)が F-15 の死角である後下方に回り込むという、小柄な機体を活かした戦法を取ったそうです。これに対し岩崎氏はウィングマンを高位の一機に向かわせ自分はレーダーのアジマスを最大限に振って下に回った F-16 を監視(いかにも気づかない風を装って)、上空で戦闘が始まると同時に最大 G で斜め降下旋回を打って油断していた F-16 の背後に回りキルを取ったそうです。実は米軍が取った戦法は岩崎氏が F-104 搭乗時代に対 F-15 攻撃法として多用した戦法で、「レーダー上で機影が分離した瞬間に奴等の考えてる作戦がわかった」のだそうです。
編隊空戦の秘訣はとても一言で書けるようなものではなく、だからこそ戦闘機乗りには選び抜かれた頭脳の持ち主が配備され、莫大な費用と時間をかけて育成されるのでしょう。
ささき