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何だかど素人な質問ですみません… 旧日本軍の戦闘機「震電」。プロペラが後ろにつくことでの長所ってなんなんでしょうか?また、「震電」以外にもプロペラの後ろについた機体はあるのでしょうか(あったのでしょうか)? IKAMI |
1. プロペラと同時にエンジンが後部装備になるので、機首部分を思いきり先細り型にすることが出来ます。
これにより、空気抵抗の減少がはかられます。
2. 機首に機銃・機関砲等の火器を集中装備出来ます。
通常の戦闘機は、プロペラが前部にあっても機銃をエンジンカウル付近に装備していて何の問題も
ありません。それは、プロペラの回転軸と、機銃の撃鉄の動きを遮断する装置とが連動していて、
機銃の射線上にプロペラの羽が来る時には弾を撃ち出さないように出来ているからです。その点に
限って言えば、プロペラが前についていても特に問題はありません。しかし、エンジンが機首にあると、
設計上、機首部分に多くの火器類を装備するのは困難となります。そこで通常の戦闘機では、主翼
前縁部にいくつも火器を装備することになるのですが、これだと、照準の調整が難しくなります。操縦
者はあくまでも操縦席上の照準器で目の前の標的を狙うので、主翼の火器で撃つ時には左右のズレ
を計算に入れて狙わなくてはなりません。その意味では、機首部分に火器を集中装備出来ればそれ
越したことはありません。
無論、プロペラを後部装備にすることのデメリットもありますが、利点としては以上の事があげられます。
KS
日本の三菱17誌局地戦闘機「閃電」も後方にプロペラがありましたよね。
ベルゼバブ
IKAMI
利点は、まさにあの解説が示唆する通りです。
すなわち、プロペラが作りだす、絞り込んだ渦状をなす後流の中に断面の大きな
エンジンを配置するよりも、プロペラ前部にエンジンを配置した推進式の方が
一般には効率が高いのです。
推進式プロペラがしばしば人力機に応用される所以です。
また、通常旋回流となるプロペラ後流は、いわゆるコンベンショナルな配置の
単発プロペラ機の操縦性に少なからぬ影響を及ぼしていますが、
(プロペラの回転方向が操縦席から見て時計回りであれば、出力を上げた際 左、
出力を絞った際 右向きのヨー運動が起こり、これを相殺する為かなりラダーを
使います。 低速/高迎え角時に特に顕著です。)
ブロぺラ後流が機体に干渉しない推進式の場合、このヨー運動は起こりません。
プロペラが後ろについた機体に付いては、1903年に人類初の動力飛行を達成した
ライト・フライヤー以来枚挙に暇がありませんが、とりあえず個人的な趣味として
現代の飛行機からは、やはりカナード翼機のBeechcraft の Starshipを
挙げておきます。
また、おそらくモーメントアームが短く重量配分が難しい為でしょう、プロペラ機
として作られた無尾翼機の殆どは、エンジンから延長軸を介して駆動する
推進式です。
みなと
前翼が水平尾翼の役目をするとともに、揚力を発生しています。
つまり。抵抗が同じで、翼面積が増加している事になります。
また、胴体スペースに無駄が無い事もひとつの長所でしょう。
さらに、震電の時代には、ジェット化の可能性があったという事も
メリットと言えると思います。
推進形式の飛行機というと、
「カーチスXP-55 アセンダー」が震電と良く似た前翼型。
「コンベアB-36 ピースメーカー」が6発重爆撃機。
「ダグラスB-42 ミックスマスター」タンデム双発。よく知らない(おぃ
「ノースロップXB-35」、4発。すごく変な飛行機。
「サーブJ-21」が閃電と良く似た双胴型。
複葉機の時代の「デ・ハビランド2」
あたりを思いつきます。
推進式の欠点は、単発機の場合、
・パイロットが脱出時に、プロペラに巻き込まれる。
・不時着時にパイロットがエンジンにつぶされる。
・操縦性が従来の機種と極端に違う。
等もあげられると思います。
また、多くが3車輪式となっていますが、
私は震電の長い前脚を見るたびに、「折れないのか、これ?」と心配になります。
多発機の場合だと、主翼の後ろ側(薄いところ)に
重いエンジンがつくので、強度的に難しいのでは無いかと思われます。
あと、震電に関してはエンジン冷却に問題があったと指摘する人が多く、
空冷エンジンとこの形式のマッチングは良く無いのかも知れません。
どんべ
(射出座席が装備されていない大戦機の場合、ベイルアウト時にパイロットが
ミンチになるかもしれないので、Do335の様にプロペラを爆薬でふっとばす!
等の対策が必要、というのは欠点かもしれませんが....)
むしろ、推進式として実用的な機体を設計するのが難しい、ということなのです。
主翼の後方に水平/垂直安定板を持つ、コンベンショナルなレイアウトで推進式を
実現しようとすると、エンジンは機体の中央近くに配置し、長い延長軸を介して
プロペラを駆動することになるでしょう。 また、重い延長軸と可変プロペラを
支える胴体の剛性も高める必要があります。
こうして考えていくと、推進式を採ることによるメリットが、重量増加等により
相殺されてしまうのです。
震電のような先尾翼式は、エンジンを後方に配置する為の良い方法ですが、
概して重心の許容移動範囲が小さい、という問題があります。
大戦中、先尾翼式をやはり試みた米軍も、先尾翼式に伴うデメリットを相殺する
程の速度増加が無かったためでしょう、採用されていません。
ただし、軽量/高剛性の複合材が一般的になった昨今、推進式でも優れた機体が
生み出される可能性は十分あります。
みなと
長くなって横道にそれたみたいですが、簡単に言えば、後方にエンジンを搭載した場合、それなりに前方に搭載機器を装備しなくてはならない・・・ただしMACの位置とか、アームの長さとか、エンジンと同じ重さの物を、前方に積むということではありません。
ダンガ−j
これは日本の閃電、スウェーデンの J-21 のようなブーム双胴の機体ですが、中央胴体のコクピットは床面にヒンジがあってがばっと開き下げると搭乗口になる仕掛けでした。「下から乗る戦闘機」というのも珍しいですね。
さて緊急時においては、このハッチをがぱっと開いて脱出レバーを引くと操縦席が床ごとすっぽり抜けて下に落ちるようになっていました。後方に向いて開いたハッチはプロペラガードの役割を果たし、パイロット+操縦席はプロペラ回転圏外に投出されるという仕組みでした。
ささき
> 推進式の短所ですが・・・・・今の単発プロペラ機を見てもわかるように、
> ほとんどの飛行機は前にエンジンを搭載しています。プロペラ後流はまあ悪者の
> ように言われますが、考え方を変えると飛行機が飛行するために必要な揚力の
> 発生の一助となります。その証拠にプロペラ機の失速特性を考えると、
> パワーオンとパワーオフでは機体にもよるでしょうが、
> 10Kt以上の開きがあるはずです。
この点僕は疑問なんです。おっしゃる通りパワーオンストール時の失速が、
プロペラ後流のおかげで10kt程度遅延しているとするなら、プロペラ後流の影響
の比較的少ない(最も距離が離れた)翼端から失速しそうですが、
実際矩形翼の単発小型機でパワーオンストールを行ってみるとプロペラ後流を相殺
する為かなりラダーを使う以外バフェッティングは穏やかなもので、むしろ矩形翼
らしく内側から失速が始まっているような気がするのです。
パワーオンストール時の失速速度の相違は、高迎え角時顕著になる、
推力の垂直成分に由来するのではないでしょうか。
又、プロペラ後流が揚力発生の一助となっているとのお考えについてですが、
これは言いかえれば推力を翼によって偏向させている、というのと同意義であり、
やはり推進効率が低下していると考えるべきです。
もし同様な効果を得たいなら、純粋な効率からいえば推進式で推力線を傾斜させた
ほうが良いのではありませんか?
みなと
なんだか急降下爆撃機の投弾装置みたいですね。
どんべ
さて質問に対する適切な答えになるかどうか・・・。まず失速についての考え方ですが、「速度が少なくなると失速する。」というのが一般的な考え方ですが、基本的には「相対風と翼舷のなす角度」に対して発生します。まず翼根から失速してしまう理由ですが、製作者が翼根から失速するように捻り下げをつけたり、ストールストリップをつけたりと、まあ意図的に翼端から失速しないように作っているからです。ではプロペラ後流が揚力を生む一助として考えやすいのが、BLCフラップとか、スロットの役目を考えてみると納得していただけると思いますが、要は剥離しにくくなるはずです。
ダンガ−j
> まず失速についての考え方ですが、「速度が少なくなると失速する。」
> というのが一般的な考え方ですが、基本的には「相対風と翼舷のなす角度」
> に対して発生します。まず翼根から失速してしまう理由ですが、製作者が翼根
> から失速するように捻り下げをつけたり、ストールストリップをつけたりと、
> まあ意図的に翼端から失速しないように作っているからです。
はい、この点は異論ありません。この点を踏まえた上でパワーオンストールに
ついて考えてみると、出力を上げた状態では パワーオフストールに比して
より大きな迎え角(もちろん相対風に対してです)を取る必要があり、
((でなければ加速してしまい、失速しません))おっしゃる通りプロペラ後流の
影響で翼根部に揚力が発生して、その影響でストールが遅れるとするなら、
プロペラ後流の影響が小さい翼端部が先にCritical AOAに至るのではないか、
にもかかわらず体感的にはパワーオンストールでも翼根から失速するような
気がする、ということなのです。
> ではプロペラ後流が揚力を生む一助として考えやすいのが、BLCフラップ
> とか、スロットの役目を考えてみると納得していただけると思いますが、
> 要は剥離しにくくなるはずです。
境界層に運動エネルギーを与えて剥離を抑制する、という効果はあるかも
しれませんね。
みなと
景司
1)推力の低下
震電の場合プロペラは胴体・先尾翼・主翼で乱された気流内に置かれるのでプロペラ効率が落ちそうで,特に大迎角を取ると乱流の影響が強く出て推力が低下しそうです。船舶では最近,頭部にプロペラをつけた魚雷状の推進器(アジポッド)を船尾に吊したものが増え,プロペラがシャフトやブラケットによる乱流を受けないので推進効率が上がり,速力が数%向上します。
また牽引式はペラ後流の回転運動が翼で整流され,回転運動エネルギーの一部が後方への運動エネルギーに変わる(推力が増加する)可能性がありますが,これも推進式では期待できません(二重反転式なら必要ありませんが)。Do335の後部プロペラは二重反転式と同じ働きをして震電よりは効果的だと思います。
推進式:長)プロペラ後流が機体に当たらず,抵抗が少ない。
短)プロペラ効率(推力)が低下。特に胴体後方に置くと悪影響大。
牽引式:長)プロペラ効率(推力)が高い。
短)後流により抵抗増加。
のどちらの影響が大きいかは分かりませんが,プロップファンは胴体横など前方に障害物のない位置に装備されているようです。
2)トルク反作用が大きい
牽引式ならプロペラ後流の回転が主翼・尾翼に当たってトルク反作用を一部打ち消すはずですが,震電はこれが無いのでトルク反作用がそのまま機体にかかります。これを打ち消すため補助翼の当て舵が大きくなり抵抗が増えるでしょう。
3)失速速度が高い
既に議論されていますが,主翼にもフラップにも高速なプロペラ後流が当たらない結果,低速時は揚力が小さく,また失速しやすいと思います。C-130等はプロペラ後流をフラップで偏向して低速時の揚力を稼いでいますが,単発機でも同様の効果はあると思います。
4)舵の効きが悪い
3と同様,牽引式は尾翼がプロペラ後流内にあるのに対し,震電では対気速度しかありませんので特に低速時の昇降舵や方向舵の効きが悪いかも知れません。
isi
IKAMI
みなとさん、初めまして。某所でお名前を拝見しました。(^^)
>また、通常旋回流となるプロペラ後流は、いわゆるコンベンショナルな配置の
>単発プロペラ機の操縦性に少なからぬ影響を及ぼしていますが、
>(プロペラの回転方向が操縦席から見て時計回りであれば、出力を上げた際 左、
>出力を絞った際 右向きのヨー運動が起こり、これを相殺する為かなりラダーを
>使います。 低速/高迎え角時に特に顕著です。)
>プロぺラ後流が機体に干渉しない推進式の場合、このヨー運動は起こりません。
この部分なのですが、プロペラ機のヨーイングには、
(1)プロペラ後流が垂直尾翼を右に叩く事によって起きる左ヨーイング。
(2)プロペラの回転面が相対風に対して角度を持つ事によって、左右のプロペラブレードの
迎え角に違いが生じ、推力が左右不均衡になる事によって起きるヨーイング。
(つまりPファクター。迎え角正の時左、負の時は逆に右向きに働く。)
の二種類がありますから、推進式にしてプロペラ後流の影響が無くなっても、
Pファクターによるヨーイングが残るのではないでしょうか?
細かく分析してみますと・・・
>出力を上げた際 左、
出力を上げて上昇している時には非常に強力な左ヨーイングが起こりますが、
同じ出力でも水平飛行をしている時には、上昇中ほど強力なヨーイングが起こりません。
この違いを観察すると、ヨーイングの原因が二種類あるのが解ると思います。
上昇中に特有の強力な左ヨーイングは、Pファクターの影響です。
>出力を絞った際 右向きのヨー運動が起こり、
この右向きのヨーというのは、降下中に働く右向きのPファクターの事ではないかと思います。
出力を絞れば後流効果が小さくなりますから、当然左向きのヨーは弱まりますが、
プロペラ後流によって、直接右向きのヨーイングが引き起こされる事はありません。
ですから同じだけ出力を絞っても、降下させずに操縦桿を引いて水平飛行を保っていれば、
つまりそのまま迎え角を大きくしていけば、逆にPファクターによる左ヨーイングが発生します。
あるいはそれとは別に、後流効果を補正するために右偏傾向を持たせてある機体なら、
ある設定をまたいでパワーを絞った時に、後流効果による左ヨーが減った結果、
機体の癖による右ヨーイングが現れる、等というケースは考えられるかもしれません。
>低速/高迎え角時に特に顕著です。
これはスローフライトや着陸の引き起こしの時の状態ですが、速度と迎え角それぞれに注目すると、
迎え角によって直接変化するのは、Pファクターによって発生しているヨーイングです。
低速/高迎え角時に左ヨーイングが顕著に現れるのは、
(1)低速時の方が、プロペラ後流による左ヨーイングが大きく影響する。
(2)迎え角が大きくなる程、Pファクターも大きくなる。
という、Pファクター・プロペラ後流の両方が、最も強く働く状態にあるからです。
・・・という訳で、この二種類のヨーイングは、分けて考える必要があると思います。
MITTU