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810の関連質問です。 1940年ごろまで「一本の材から固定ピッチの2翅プロペラを削り出していた」とすると、材料が不足しなかったのか気になります。 芯材と樹皮を避けるとなると、最低でも、ペラの羽根の最大幅の2倍程度の材から2本しか取れないように思います。 硬いがまっすぐな材が少ないカシ・ナラ等ではむろんのこと、 柔らかさを受容して比較的まっすぐな大径木が多いスギ・ヒノキ等でも、 供給に不安を感じます。 ペラの最大幅、材種、供給状況等について御教えねがえませんでしょうか。 はたの |
BUN
BUN
「固定ピッチプロペラならば、一本の材料から作る事が出来る二翅が絶対に有利。」
と書いた者です。
木材に関する知識は全く無いのですが、少々突っ込ませて下さい。
合板を使用しているという事については、
こちらの資料でも確認出来、間違いは無いと思います。
しかし、積層で厚みを稼ぐだけならば、
板の幅はブレード幅を上回っていなければならず、
質問者の言われる「まっすぐな大径木」はやはり必要となります。
一方、幅方向で接続する事で、必要寸法の角材を造った場合、
(言い回しが実に稚拙です。ご容赦。)
強度は大丈夫なのか?という疑問も発生します。
このあたり、どうなのでしょうか?
どんべ
だから弱い、と切り捨てる事は出来ません。現在では積層材の方が強
度的に有利とも考えられます。
で、プロペラは特に強度が必要な部位なのでしょうか?
まだ、構造材の方が強度的な要求が大きそうですけれども??
takukou
合板を取る場合はですね、木材を大根のかつらむきのように(トイレットペーパーのように)して、長くて薄い板を取ります。
これを、繊維方向が直角になるように積層(全方向に強度を出すため)して接着します。
どんべさんのいう種類の「角材」は合板ではなく、集成材のカテゴリにはいるものになります。
第一次大戦中のドイツ機は1915年半ばごろからほとんど合板プロペラになりますが、これは国産材を使用しなければならない(英海軍の封鎖でチークやらマホガニーやらを輸入できなくなった)ことによります。
二色の縞々になっているのがそうですが、白いところは柔らかい針葉樹材(トウヒ)を縦に、色の濃いところは硬い広葉樹材(クルミやブナ)を横に使って強度と粘りを確保しています。
これならば、幅に制約はほとんどなく、ジーメンス・シュケルトDIII/DIVの四翅プロペラも一枚物です。
まなかじ
九四式水偵などの日本機にもある四翅木製ペラは、合板ではなく、実はカナダ産のメタセコイア(和名はソダチ杉)から一本丸取りしていたのですが、国際情勢の悪化から輸入が途絶し、日本機は軽金属製プロペラの時代を迎えることとなります。
BUN
「積層」などという言葉を聞くと、「プラ板を重ねてウォーターラインの艦体を造る」
ような作業を連想してしまうので…
>4 takukouさんへ。
プロペラ中央部のボスは、エンジントルクがまともにかかります。
「一枚取り」の場合、この部分も木材ですから、
強度的に「楽勝」だったとは思えません。
四翅ペラの一枚取りという件は意外でした。
材料がすごくもったいない気がしますが。
どんべ
どんべ
そうです。戦後においても航空機用素材としてのソダチ杉の伐採は禁止されています。
BUN
どんべ
ささき
どんべ
何とか我々は師匠連の脳内真実とまことの真実を見分けるしかないんです.
普段はとってもいい人達なんですけどねぇ…
(最近,悟りの境地に至ってしまった…)
勝井
舞弥
なんか癪なので、「ネタばらし」しちゃいましょう。
世傑No.47の30頁に、
「(94水偵)1号型の木製4翅プロペラは、2翅プロペラを2枚重ねにしたような作りである。」
と、あります。
どんべ
が、疑問が派生しました。
大戦末期に木製機が作られるようになった際、接着剤の性能がネックとなって、我が国ではうまくいかなかったように聞き及んでおります。
合板ペラでは問題はなかったのでしょうか。良質な接着剤が、ペラ作るぐらいは確保できたが、機体つくるほどは確保しにくかった、ということでしょうか。
はたの
このため、接着剤に対する要求は強度のみでよかったのです。
極端な話、木工用ボンドや膠でも事足りるのです。
また、合板プロペラの先進国であるドイツでも、木製機の接着剤に関してはかなりてこずっており(Ta154やHe162など)プロペラ合板の接着剤と機体製作用の接着剤とはまるで違うものだといえると思います。
まなかじ
木製ペラは、1次大戦に入るころから、2次大戦の可変ピッチ式単ブレードに至るまで積層式がメジャーだったと思うのですが、木材は部分により密度が異なるため、積層するとき、樹頂と根の方向を互い違いにし、重量バランスをとると聞いたことがあります。
積層材の接着は1930年台中ごろまでは、おなじみの膠やカゼインの利用が一般だったようですが、2次大戦少し前から機体と同様に、合成系(ユリア、フェノール樹脂)接着剤が利用されはじめたのではないでしょうか。
松木
ふと思い付いたのですが意図的に荒くして
付け根の失速を遅らせると言う狙いはないでしょうか?
最近、日本機のプロペラが他国の機体に比べて小さい理由として、
「低速時の推力と、高速時の効率の両立」があったのでは無いかと
考えているもので……。
碇義郎氏の著作には「日本のプロペラ技術は遅れていた」とありますが、
翼形だけのことなのかどうか……
たかつかさ
詳しく教えて下さい。
SADA
えーと、プロペラの羽根がねじれた形になっていることと同じ理由です。
プロペラは回転しつつ前進しますから、個々の羽根は螺旋状の軌跡を描きます。
先端部は半径の大きな螺旋を、付け根は小さな螺旋を。
これにあわせて捻じってあるわけです。言い換えるなら、
プロペラ羽根のねじれとは付け根と先端とのピッチ角度の違いが
現れたものです。
そしてもちろん、機体の速度=前進速度の変化によって要求される
ピッチ角度は変化しますが、付け根の方が円周速度が小さい分、
角度変化が大きくなります。
大直径のプロペラほど、この傾向は強くなります。
ですから理想的なピッチ変更機構とは、付け根と先端でピッチ角が
独立に変更出来るようなもの、つまり捻じり角度も同時に変化させるもの
と言えます。しかし、そんなものは存在しません。
現実の可変ピッチプロペラは羽根全体を一体として動かすものです。
ですから、高速飛行にマッチングさせた大直径プロペラの場合、
低速飛行すると付け根部分はピッチ角度過大で失速し、効率が
著しく低下します。
よく「日本機のプロペラ直径は小さすぎる」と言われますし、
「わたしならもっと大きなプロペラを使う」と主張する航空ファンも
みられます。
しかしそれには、付け根の失速抑止対策が要ります。
……あ、長い^^;
ここでようやくワタシの書き込み(18番)の意図が説明できます。
つまり、(戦後にいくつか例があります)ボーテックスジェネレータを
付け根に付けたのと同じ効果を狙ったものではあるまいか、ということです。
また、「日本のプロペラ技術が劣る」と言うのはピッチ変更機構だけでなく、
翼断面形状や付け根失速抑止技術のことも指すのではないかと言うことでも
あります。
長文、失礼しました。
いずれワタシのサイトで図示しようかと思います。
期待しないでください^^;
たかつかさ
SADA