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708 戦記とかだと一式戦よか四式戦のが上昇力がいいとの話が多いですが資料だと一式戦のが速いんですけど、あと三式戦I型とII型とついでに零式戦と紫電改も、どういうことでしょうか、だれかおせーてくだされ
Yasuharu

  1. 軍用機の話題コーナーの胃袋さんの「誰も書かなかった第二次大戦機」の「上昇率と上昇時間」を参照されたし。氏の他のコンテンツも面白く必読。
    BUN

  2. 確かにカタログデータ上では、5000mまでの上昇時間が一式戦II型乙で5:49、四式戦I型甲で5:54となっており、これだけ見ると確かに一式戦のほうが「上昇力」が良いように思えます。しかし、この数字をそのまま空戦時における垂直面の機動性能だと捉えるのは大きな誤解です。
    カタログデータに記載されている「上昇力」というのは、その機体が時間あたり最大の上昇率を得ることのできる速度(英語では Vy Climb と呼びます)で飛んだ場合です。Vy 上昇というのは失速速度の少し上くらいのところで大迎角を使って飛び続ける飛行方式であり、推力よりもむしろ揚力の比率が大きいのです。だから Vy 上昇に限って言えば、軽量な機体に大面積の翼をつけた隼のほうが高いこともあり得ます。
    ですが、空戦中にこんな呑気な飛びかたは許されません。Vy より遥かに高速の領域でも操縦桿を一杯に引いて上昇する必要があります。こういった時主翼が大きいことは必ずしもメリットにはなりません。高速では揚力以上に大きな誘導抵抗が発生するため、これに打ち勝って上昇を続けるには大きな推力(エンジン馬力)が必要なのです。つまり実際の空戦機動における「上昇力」と、カタログデータに記されている「上昇力」の飛び方は全く異質なものなのです。
    また、零戦や隼のように軽い機体と疾風や紫電改のように重い機体では、操縦桿を引いてから上昇に移るまでの反応時間に差が出ることもあります。これを初期上昇力とか回頭性能と言ったりしますが、こういった機動では大馬力の重戦闘機より軽い機体のほうが有利になることもあります。
    ささき

  3. 横やりレス失礼します。ということは,零戦の「ズーム上昇率が高い」というのは,「低速時の回頭性が高い(低速時の昇降舵の効きが良い)」ということなのでしょうか?
    フッフール

  4. 低速時の機動性は馬力荷重よりも翼面荷重(+空戦フラップ)
    高速時の機動性は翼面荷重よりも馬力荷重(+高アスペクト比主翼)
    が重要なのでしょうか?

    フッフール

  5. BUNさん、痒いです(^_^;;;;;
    フッフールさん>
     今度は飲み会でなく、みんなで「お食事」でもしましょうね(笑)
     えー、あくまで私の考えなのですが、零戦は機体が軽いので上昇に移った後の速度の落ち込みが小さいのではないかと思います。

     ささきさんのおっしゃってる通り、揚力値の大きさ(正しくは揚力過重)が上昇性能に大きく影響します。第一次大戦中のドイツ戦闘機「フォッカーDr.I」は3葉の利点でこれが良かったので無類の上昇力を誇ったそうです。
     つまりは、揚力過重が小さくて大迎角で失速しにくい機体の方が上昇角度を急にできますから、そのぶん上昇率も良くなるということですね。
    胃袋3分の1

  6. ↑Dr.1は翼面過重が極端に小さいわけではなく、上昇性能に寄与していたのは、三分割したがゆえに各翼のアスペクト比が大きく(おまけに全幅が小さくなるからロール性能が高い)、しかも厚翼を採用していたので失速特性が飛びぬけて良いために急角度の上昇を持続できた点にあります。
    Schump

  7. うう,胃袋さん有り難う!(涙) これからも宜しくお願いします。
    フッフール


  8. あいや!そうだったんですか!失礼しましたm(_'_)m
    お勉強になりましたです。
    胃袋3分の1


  9. あっ!打ち込んでる間にフッフールさんの書き込みが!
    上のははShcumpさんへのお返事でした。(^_^;;;;;
    胃袋3分の1

  10. >4. 「上昇力」と「機動性(運動性)」を一緒にするとまた話がややこしくなると思います。また、「上昇力」の高い機体ほど垂直面の戦闘で有利とも限りません。

    例えば架空の軽戦闘機Aと重戦闘機Bを比較しましょう。Aは対気速度200ktで最大の上昇率5000ft/minを得られ、Bは4500ft/minしか得られないとします。しかし対気速度300ktではABとも4000ft/minで互角となり、400ktではAの3000ft/minに対しBは3500ft/minの上昇率をキープできます。何故こうなるかと言うと、大面積の翼に小さなエンジンを付けたAは低速で大きな揚力を発生できるので上昇率だけは有利ですが、速度を更に上げてより大きな揚力を発生されると、それに伴う強大な空気抵抗(誘導抵抗)を推力で補うことができず速度が低下してしまうためです。

    だからBが400ktで3500ft/minの上昇を開始した場合、AはBを追尾することができません。速度を200ktにまで落とせば4000ft/minの上昇ができますが、200ktもの速度差が付くのでアッという間に(水平方向に)引き離されてしまいます。「上昇力」の良いはずの零戦や隼が高速で急上昇する F4U や P38 を追尾できず歯噛みした、という話はこういった機体性能差に由来していたと思います。

    しかし、実際の空戦では同速同姿勢の上昇を維持する馬鹿はいないので、対気速度も上昇率も瞬間瞬間に変化します。ですからどの速度の上昇率が空戦における垂直面の機動性につながるとは言いきれません。ただ一般には、大揚力を備えた軽い機体は低速での縦運動性に有利な傾向があり、大馬力の機体は速度ロスを馬力で補えるため高速での縦運動性に有利な傾向があると言えるだけです。
    ささき

  11.  ちょっと訂正。「速度を更に上げて大きな揚力を…」は「迎角を更に上げて」ですね。飛行機の上昇は機首を上げて行われますが、これは決して推力軸を傾けて垂直方向の成分によって上昇するわけではなく(その要素も多少はありますが…現在のジェット戦闘機のように推力自重比が1を超える場合はともかく、レシプロ戦闘機の推力は自重より遥かに小さいので影響は少ないです)、大迎角によって大揚力を発生させ上昇する意味合いが強いです。しかし迎角を増すと急激に誘導抵抗が増大するため、それを補える推力がなければ対気速度が低下してしまうのです。だから単に高度を稼ぐだけの能力と、速度を保ったまま上昇できる能力はまた別の意味を持つわけです。

     例えば 350kt で飛ぶ零戦でインメルマンを打ち 10sec で 1000ft の高度を獲得し 100kt の速度を失うのと、400kt で飛ぶ疾風が 15sec で 1000ft の高度を獲得し 50kt の速度を失うのと、どちらが空戦に有利か…とは一概に言えないはずです。空戦機動には降下性能や加速性能、失速限界や強度限界なども関係してくるので機体特性だけを取って「どちらが強い」とは言い切れません。機体ごとに最大性能を発揮できる高度や姿勢や速度は異なるので、異機種格闘戦なら自機の得意な飛行領域(フライトエンベロープ)に相手を引きずり込んだほうが勝ちなのです。だから「低速でゼロと格闘に入るな」という米軍の通達と、「高速で逃げる F4U を追えなかった」という零戦搭乗員の談話は表裏一体なのです。
    ささき

  12. なるほど、みなさんありがとうございました
    Yasuharu


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