QQCCMMVVGGTT
654 細かい話で恐縮ですが、ご存じの方があればお教えください。
1.例えば97式 7.7ミリ固定機銃の(?)炸薬のない通常弾は、命中後の弾体の変形が徹甲弾より大きく、装甲を撃ち抜く能力が乏しいと思われますが、それではこの通常弾にどのような働きが期待されたのでしょう?非装甲部に適当に穴を開けてくれればよいといった程度でしょうか?あるいは非装甲部表面に開く穴は、徹甲弾より大きいのでしょうか?
2.例えば99式20ミリ固定機銃の炸薬が充填された通常弾は、命中時に炸裂してそれなりに熱を発すると思われますが、焼夷通常弾を用いないとガソリンタンクに着火しないものでしょうか?この2種類の弾種の命中時の発熱温度は、それぞれどの程度でしょう?それとも瞬間的な発熱量より、焼夷弾では燃焼剤がこびりついてしばらく燃えるというような効果が大きいのでしょうか?
EAW

  1. 陸軍の資料ではありますが、開戦時に南方軍に支給された7.7mm弾薬は主に徹甲実包と焼夷実包、特殊実包で、普通実包は台湾の屏東航空支廠のみに比較的少数が保管されでおり、予備とされたものだと想像されます。
    この八九式普通実包の用途は登場時期から見て、装甲、非装甲の問題ではなく、恐らく全金属製機以前の機体の構造破壊の為のもので、全金属製機の時代に対応した高貫通力の弾種が九二式徹甲実包なのだと思っています。
    また、炸裂弾一般は構造破壊の為に炸裂するのであって、燃料タンクに着火させるのが本来の目的ではないはず。更に防弾材料、構造などから想像するに、燃料タンクの火災はタンク破損により霧化した燃料に着火して発生する場合が多かったのではないでしょうか。ですから必ずしも焼夷弾でなくとも火災を発生させることは可能だったものと思われます。
    BUN

  2. 私も陸軍のものを基準にして書きますが、89式7.7mmに使われた実包について、「普通実包は人馬の殺傷を目的としたもの、徹甲実包は装甲または堅硬部の貫通破壊を目的としたもの、焼夷実包は敵機のタンク内に打ち込んで火災を起こさせることを目的としたもの」という解説があります。複葉機の時代には敵機を撃墜するにはパイロットを射殺するか火災を起こさせるのがほとんどだったという記述も読んだことがあるので、恐らくは普通実包はパイロットや地上の人間への対人用という意味合いが強かったのではないでしょうか。
    20mmに関してはBUNさんと全く同意見です。
    舞弥

  3. 1. 航空機銃では通常弾に期待できる効果は少ないと思います。ただし通常弾には「安い」という何にも代え難いメリットがあるので、供給の少ない特殊弾を補う形で使用されていたのではないかと思います。
    2. 1940 年代初頭に行われた英軍の実験では焼夷弾は敵機の外板に当たると砕けてしまって内部まで到達せず、炸裂弾は表層を破壊するばかりで内部構造を破壊せず、いずれも実質的な破壊力にはつながりにくい結論しています。そこで彼らは炸薬と焼夷材を持ち「表層材を破壊してから着火させる」HE/I(High-Explosive/Incendary)と徹甲弾頭と遅発信管を持ち「表層材を貫通後に炸裂」さらに焼夷効果も持つ SAP/I(Semi-Armor Piercing/Incendary)を開発して問題に対処しています。
    ささき

  4. BUN様、舞弥様、ささき様。早速明快なご回答をいただき、ありがとうございました。
    実は超無学で恥ずかしいことに、ごく最近まで特定の機銃が使う銃弾は1種類と思いこんでいたものですから、この件が気になってしかたがなかったのです。おかげさまで、すっきりしました。
    EAW

  5. 3.を読んで思い出したのですが、日本の99式20粍でも大型機に効果が思ったよりないので調べてみたら、焼夷通常弾は炸薬の爆発力が大きすぎて燃料の漏洩前に着火薬の黄燐が燃焼してしまう為だとわかり遅動用の空気信管を使った焼夷通常1号弾なるものを使ったのでした。
    舞弥

  6. 八九式固定機銃の弾薬について資料を見直してみたのですが、やはり八九式普通実包は九二式徹甲実包に交代していった、と言う見方は正しいようで、昭和十二年に陸軍工廠で生産された八九式普通実包は740万発、九二式徹甲実包は895万発ですがこれが、十四年になるとそれぞれ150万発、1092万発になり、普通実包の生産比率が非常に低下します。それでも生産量そのものは拡大しているのは、ささきさんが指摘したようにコストの問題が絡むのでしょう。
    実際にこれらの原価が幾らかは不明ですが、昭和14年に部外及び外国に売却した九二式重機の普通実包と徹甲実包の売却量と価格がありますので参考までに挙げておきます。九二式普通実包は1,927,775発で価格は142,651円、九二式徹甲実包は950,000発で194,395円です。これは仲介の商社に官が卸す価格だと思いますので製造原価を割と素直に反映していると考えられます。ささきさんの指摘通り、普通実包はかなり安価だということが判ると思います。
    BUN

  7. 「生産量そのものは拡大」ではなくて「生産が継続されているのは」ですね。数字がアタマに入って無いもので凡ミスでした。
    BUN


Back