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雷電の下方視界が不評なのは聞きますが、天山の下方視界は、図面で見る限りは雷電より良いようには思えません。(キャノピー幅は雷電の方が広い筈)それなのに天山は艦上機として運用されています。これは着陸速度の差によるものだけなのでしょうか?つまり雷電は着陸速度さえ天山並なら天山並のキャノピーでも良かったのでしょうか?(雷電の大きなキャノピーは空力的な弱点だと思っているもので) 陵風 |
操縦者の視線を遮るかどうかが重要なのだとしたら
機体の幅や操縦席高さの方が重要で
その観点から言うと雷電の下方視界は天山より良いとも思えません
どんなに速度が低くても、見えないものは見えないのですから
着陸速度の高さだけの問題ではないと思う
それに、視界が悪いと文句が来たのは、零戦に馴れていたからとも言える
天山の場合、鈍重な97艦攻から転換してるから
良くなったところばかりで歓迎だったのだろう
SUDO
余談ですが、雷電が濃緑色の塗装に加えて更に機首上面を黒く塗っているのは視界問題が絡んでいるのではないかと以前より邪推しています。車のデザインイラストの世界と同じくあの黒い部分は「無かったこと」になっているのではないか、と(笑)。
BUN
ところで胴体幅は天山もかなりありますよね?
陵風
EAW
「キャノピーの幅が広くて下が見えない」で思い出したのが、F-117とタシット・ブルー。あれは着座位置も低いし、フレームが多くておまけにガラスの透明度も低い(レーダー波の反射方向を一定にするために金をぎちぎちにコーティングしてある)んですけどね。
Schump
陵風
ダンガーj
機首上面を削ぎ落としているからってのも有るのでは?
SUDO
雷電の三面図 http://www.skypoint.com/members/jbp/ijna/j2m3.gif
特に平面図に注目してください。天山の操縦席が主翼中央より前方にあるのに対し、雷電のそれは後方(主翼後縁ギリギリ)です。着陸時の機首上げ姿勢、あるいは地上三点姿勢でこの違いは大きいです。天山は座席を一杯に上げれば何とか前方が見えたのに対し、雷電は座席を一杯に上げても機首のほうが更に高く上がってしまうのです。しかも左右の太さも尋常ではない(防火壁後方がエンジンの直径より太い)ので前下方かなりの角度が死角になってしまいます。
「それじゃ、前下方が十分見えるように座席を上げて、ついでに胴体の左右の幅も削れば?」
はい、それを実際にやった機体があります。日本機ファンからは評判の芳しからぬ F6F ヘルキャットのデザインがまさにそれです。F6F の操縦席は雷電や F4U ほどではないにせよ、意外に主翼後方に偏っているのです。それでも「視界が悪い」という悪評を聞かないのは、座席を燃料タンク上方の高い位置に設け、更に背の高い風防を装備しているからです。おかげで側面形はデブになってしまいましたが、そのぶん胴体を左右に絞っているので平面形は意外とスリムなのです。
ささき
という陵風さんのご質問に対して
>7.SUDOさんのおっしゃるとおりキャノピーの幅と下方視界の関係はほとんどありません。むしろ機体幅とか座席の高さによって下方視界はいくらでも変化
とダンガーjさんのご回答ですが、↑9.ささきさんが例示されたF6F のように最初の設計からならともかく、後で機体幅を左右に絞るのは大変だし背の高い風防を装備するのも抵抗があるし、効果が限られても多少とも改善できるならと、比較的簡単な幅広化を採用したのではないでしょうか?
>7.キャノピーが機体幅より大きくても、実際にそこまで頭を移動させるのは億劫でしょう
ですが、現代の戦闘機パイロットのヘルメットと比較して当時の飛行帽では、この点ではかなり容易ではないかと思われますが・・・。
EAW
直上方攻撃をかけると前下方の死角のおかげで照準が出来ないので、
対爆撃機戦に使えないと言う判断を下されたからのはずです。
そのためとにかく視界を増やさないなら紫電を生産しろと言われて
無理矢理つくったキャノピーなのであんな不格好になってしまったのでは。
でも前下方視界がないから対重爆戦が出来ないと言うならFw190Dなんて
どうなるのとも思います。直上方攻撃は被弾に弱い零戦で火力の向上した
B24に対抗するために編み出した苦肉の策なので、空力設計が必要な
キャノピー大きくするより防弾装甲を強化して後上方攻撃を仕掛ければ
良かったような気がしますが、実戦部隊はそう言う柔軟な考えを
持たなかったようです。
こういち
1.視界に関係するのは、
(1)胴体の幅
(2)座席(視点)の位置
の2つですから、「キャノピーの幅は関係ない」です。つまり、雷電のキャノピーの幅が広いのは「胴体の幅が広い」からです。もっとも、胴体の幅が広いからといってキャノピーの幅を広くする必然性はありません。雷電のキャノピーの幅が広いのは、
(1)座席(視点)が低いから、その位置では胴体の開口部が
広くなるので必然的にキャノピーの幅も広くなる。
(2)空力的に胴体となだらかに繋いだ方が抵抗が少なくなる。
(3)堀越さんのデザインセンス
だと思います。特に個人的には(3)だと思ってます(笑)。
で、結局はみなさんがおっしゃってるように、
*「胴体幅と視点の高さで視界の善し悪しは決まる」
ということでしょう。
胃袋3分の1
実戦部隊から(特に301空)から視界不良に関する強烈な
クレームが出され軍需省が局戦の紫電一本化の方針を提案した。
そのため視界を改善しないことには雷電の生産割当がなくなり
雷電用の工場では紫電改の生産をさせられることになりそうになった。
そこで泥縄式に形だけでも視界をあげる努力をみせる必要がおこり
前方視界の改善には効果がないと知りつつキャノピーの大型化を図った。
堀越技師はこのころ健康を害し復帰後は烈風に打ち込み雷電には
関与しなくなったので堀越氏の考えではないです。
堀越氏が残っていたらやってられるかと切れたかもしれない。
そもそも試作機が出来た後になって前方視界のクレームを
つけたってもう手遅れだよ。そのために木型審査があるのに
それをパスしておいて後で文句を付けられてもやりようがない。
視界が悪いなりの雷電にあった戦法を考えればよかったのに。
こういち
陵風
なお、厳密に言えば「風防」と「キャノピー」は違います。例えばジャンボジェットの操縦席の窓は「キャノピー」とは呼ばず「ウィンドシールド」と呼ぶのが正解です。風防(英語でウィンドシールド)は固定部分(主に前方の遮風板)であり、キャノピー(旧軍用語では「天蓋」)は天井部(戦闘機では主に中央可動部分)を指すのですが、戦闘機では両方備わっているのが普通なので(XP-79 みたいに前方しか窓のない機体、XF-103 みたいに前方窓のない機体は例外^^;)両者同じ意味として使っても普通は問題ありませんけど。
ささき
陵風
Ta
陵風
陵風
ささき
・機首上げ時の前方視界に風防の幅はあまり関係ない。
・雷電の風防形状が特異なのは低い座席と太い胴体のまま少しでも視界確保しようとしたため。
・着陸時に頭を寄せて斜め前方を見ることはよくある(Fw190 の深い風防、飛燕の三角窓など)。
・雷電でも31型以降は胴体上側面を削り落として斜め下方の視界を確保しようとしている。
・ただしその結果31型の風防は幅も高さも尋常でないものになり、空力的には不利になってしまった。
ということでどうでしょうか?
ささき
操縦席より前方の胴体を円柱形とする1次近似に基づいて考察すれば、下方視界は「視点を含む、この円柱の接平面(断面図では、胴体断面円の接線)の上方」です。水平飛行時にこの接平面が水平面となす角を、下方視界角θとしましょう。視点の高さとの関係で最も理解が容易な比較例を示すと、視点を元の位置より例えば10cm上げた時θ=45°であった場合には、視点を同じく10cm横に移すと(その側では)同等の視界が得られることになります。一般論として微分を考えると、視点がθ=45°の位置より高い場合には、視点をさらに上げるより横にずらす方が視界増大の効果が大きいのです。もちろん、θ<45°でも「キャノピー幅が下方視界に関係無い」ということはありません。
ただし、「キャノピー幅」が視点の高さのキャノピー幅でなければならないのは、言うまでもありません。
EAW
ささき