Page 244 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼ハ17が実用化されていたら 高村 駿明 07/12/27(木) 18:10 ┣Re:ハ17が実用化されていたら [名前なし] 07/12/27(木) 22:04 ┣Re:ハ17が実用化されていたら SUDO 07/12/28(金) 3:54 ┣Re:ハ17が実用化されていたら 片 07/12/28(金) 7:11 ┗Re:ハ17が実用化されていたら 高村 駿明 07/12/28(金) 11:02 ┗Re:ハ17が実用化されていたら [名前なし]=万年初心者 07/12/28(金) 19:57 ┗Re:ハ17が実用化されていたら 高村 駿明 07/12/28(金) 22:05 ┗Re:ハ17が実用化されていたら BUN 07/12/28(金) 23:09 ─────────────────────────────────────── ■題名 : ハ17が実用化されていたら ■名前 : 高村 駿明 ■日付 : 07/12/27(木) 18:10 -------------------------------------------------------------------------
誉のスレッドが立っていることもあり、色々調べていたのですが、以下のようなお題を考えましたので、書かせて頂こうかと。 ご多忙のところ恐縮ですが、ゆるゆるとお付き合い頂ければ幸いです。 昭和11(1936)年頃、中島飛行機では、ハ5、NK5A、ハ17という3種類のエンジン試作を行っていました。 この内、ハ17は二列星形18気筒、ボア×ストローク:140mm×160mmで2,200〜2,300馬力を狙ったエンジンでしたが、社内の性能運転がうまくいかず、すぐに開発を中止したとのことです。 ハ17は栄の1年前、誉の4年前に開発を開始していました。これを諦めずに開発を進めていれば、日米開戦前には、ある程度熟成したエンジンとなったのではないでしょうか。 また、これを実用化していれば、シリンダーが大きくてパワーが出るため、誉のような回転数やブーストで出力を稼ぐような設計をする必要もなく、信頼性の低下も少なかったのではないでしょうか(上記のソースは「悲劇の発動機 誉」(前間孝則著)の253ページです)。 実際、ボアが146mmとやや大きいハ44-12でも直径は1,280mm、ボアが同じ140ミリの金星44型では直径1,218mmですから、ハ17もこれと大差ない外形となり、実用化できれば戦闘機用にも何とか使える、汎用性の高いエンジンになったのではないかと思います。 もし栄よりも前に2,200馬力発動機の目処が立ったなら、日本の航空機開発に対して、どのような影響があったでしょうか。皆様のご意見を頂ければ幸いです。 <Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.0; ja; rv:1.8.1.11) Gecko/20071127 Firef...@p59-157-176-1.sub.ne.jp> |
どなたからもレスが付かないようなので、とりあえず私から。 一般論として、レシプロエンジンのシリンダー当たりの馬力というのはボアの大きさによって概ね決まります。 140mmという金星と同じボアでは、金星を18気筒化したハ43と同程度の馬力しか出せないだろうというのが一般論として言えるかと思います。ストロークが10mm長かったところで大した差はでないでしょう。 昭和20年時点でもハ43はトラブルが頻発するという有様でした。 そもそもハ43自体も、当時の日本ではかなり性能を欲張ったエンジンと言えましょう。 このハ43と同じボアで、しかもハ43よりずっと前の昭和11年に試作を行っているエンジンで、満足な過給器もなかった状況下で、ハ43と同程度以上の馬力を出そうというのは相当に虫が良すぎるとしか私には思えません。 当時の日本では、栄以前に2200馬力級の発動機を実用化できたら・・・、というifは、私の貧困な想像力ではどうしても成り立ちません。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)@fb194-198.infoaomori.ne.jp> |
> ハ17は栄の1年前、誉の4年前に開発を開始していました。これを諦めずに開発を進めていれば、日米開戦前には、ある程度熟成したエンジンとなったのではないでしょうか。 この時期、既存の9気筒を双子にしたような18気筒が各国で試されています。 ある程度の実績を残したものとしてはイ式重爆に積んでいたフィアットなんか、この初期の18気筒です(ストロークも変えてるから単純な9x2ではないんですが)イ式重爆を始めとしたイタリアのエンジン性能がアレでソレな理由の一つが、この安易な9x2に寄り道したためともいえます。 大失敗例としてはホーネットを双子にしたお手軽18気筒をやったBMWが有名です。 こうした失敗は、複列星型の経験を積んでいない段階で、いきなり多シリンダの大出力に挑戦してしまったことが原因でして、複列14気筒等の経験を持たないままでは複列18気筒はうまく作れないわけです。 実際、日本でも最初の複列星型実用機ともいえる金星は何年もかかって、やっと一通りの「作り方」を会得しており、その開発で培われた様々なノウハウは海軍を通じて栄にも適用され、それでも栄の開発が順調ではなかったことは有名ですね。 仮にハ17をやっていたとしても、それは栄以上に難物になりますから、金星が完成して複列星型のノウハウが中島にも提供されて、中島が複列星型14気筒のノウハウを会得して、それを拡大発展させて18気筒のシステムを構築できるようにならないと、ハ17の完成はありえないし、恐らくその段階までにハ17が存続していたとしたら、原形とは似ても似つかない代物に変化していたでしょう。 もちろん、大戦末期までに完成していれば、上手くすれば2000馬力以上にまで発展した可能性は否定できませんが、馬力に関わらずマトモに回る状態になるには誉と大同小異の時期にまでずれ込む事は間違いがないでしょう。 技術や理論は魔法ではありませんから。 <Opera/9.25 (Windows NT 5.0; U; ja)@221x116x237x197.ap221.ftth.ucom.ne.jp> |
> ハ17は栄の1年前、誉の4年前に開発を開始していました。これを諦めずに開発を進めていれば、日米開戦前には、ある程度熟成したエンジンとなったのではないでしょうか。 栄はNAM、ハ17はNARです。アルファベット順からもわかるように、R発動機はM発動機より「1年遅く」開発が始められています。NAMは途中で換骨奪胎の大設計変更を行われてNAMIIとなってようやく完成します。 しかし、NARの方は基本的な考え方に無理があることがわかったために、このようなテコ入れは行われずに放棄されます。熟成はあり得ないと判断された最大の理由は、NARを写真で見てもわかりますが、前後シリンダー間の距離がギチギチに近すぎて冷却できないことだったように思われます。基本的なレイアウトがうまくなかったのです。 この教訓は中島にとって次の18気筒エンジンであるNBA、すなわち誉の上で、前後シリンダー間を思い切って長く取るという手法となって、充分に活かされています。 技術的な課題は一足飛びにではなく順に解決されて先につながり、そこでようやく結果が出るものなのです。 > また、これを実用化していれば、シリンダーが大きくてパワーが出るため、誉のような回転数やブーストで出力を稼ぐような設計をする必要もなく、信頼性の低下も少なかったのではないでしょうか > 実際、ボアが146mmとやや大きいハ44-12でも直径は1,280mm、ボアが同じ140ミリの金星44型では直径1,218mmですから、ハ17もこれと大差ない外形となり、実用化できれば戦闘機用にも何とか使える、汎用性の高いエンジンになったのではないかと思います。 実際にはハ17は直径が1330ミリもあります。シリンダー冠を外側に広げてなんとか冷却面積を確保しようとしたためのようです。これを実用化できたとしても基本的には火星、護と同じく爆撃機用発動機であったはずです。 中島では、爆撃機用と割り切ってさらに大排気量とした18気筒のハ107、ハ117を作り、キ49IIIへの装備を目指しています。 NARハ17についてはとかく「中途半端」だったと語られており、ここから出発して小排気量小直径に絞り込んだ戦闘機用の誉、大排気量の爆撃用ハ107系列という形に輪郭をはっきりさせていった、ということがいえそうです。 いずれにしても、それなりの時間が必要だった、ということなのでしょう。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)@eatkyo186104.adsl.ppp.infoweb.ne.jp> |
皆様、ご教授ありがとうございます。 議論の前提が成り立たないのではないかと危惧はしていたのですが、やはりそういうことでしたか。防衛省エンジン研究者のご発言ということで、ある程度の妥当性がある意見なのかと考えたのですが、そうではないようですね(ans.Qで先に聞けばよかったです)。 議題の前提が成り立たないのであれば、議論しようがありませんので、これにて終了させて頂きます。お付き合い頂いた皆様、どうもありがとうございました。 <Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.0; ja; rv:1.8.1.11) Gecko/20071127 Firef...@p59-157-176-1.sub.ne.jp> |
最初にレスを付けた[名前なし]=万年初心者です。名前を入れる際に誤って送信してしまっていました。 「量産機の稼働率と出力低下」スレにて、エンジンのボアと馬力の関係についてSUDO様が素晴らしい解説をなさっています。私の拙く大雑把すぎる解説より遥かに正確で初心者にも判りやすい解説ですので、ぜひ御一読ください。 http://www.warbirds.jp/BBS/c-board/c-board.cgi?cmd=ntr;tree=201;id=#262 エンジンに興味を持っている者ならば常識として知っている事柄であっても、マニアを自称する飛行機好きが意外と知らない事実というのは多いと思います。 上記SUDO様のような判りやすい解説を行う軍用機研究家がほとんど居なかったことは、軍用機マニアにとって不幸なことだったと感じています。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.1; SV1; .NET CLR 1.1.4322)@fb192-245.infoaomori.ne.jp> |
拝見しております。わざわざありがとうございます。 日本のエンジン開発で惜しむべきは、誉のような性能追求型が失敗したさいの保険となる、そこそこ型を用意できなかったことのような気がします(金星も火星も余裕があるというわけではないようですし)。18気筒で1,700馬力くらい出て、金星程度の外径の発動機があれば、重宝されたように思います(つっこまれそうですが)。 > 上記SUDO様のような判りやすい解説を行う軍用機研究家がほとんど居なかったことは、軍用機マニアにとって不幸なことだったと感じています。 この点について同感です。このサイトや、このサイトで活動されておられる方が執筆された本の存在は、戦史理解の上でありがたいことだと感じております。 <Mozilla/5.0 (Windows; U; Windows NT 5.0; ja; rv:1.8.1.11) Gecko/20071127 Firef...@p59-157-176-1.sub.ne.jp> |
それは誉一一型そのものではないかと。 誉についての大袈裟な言説が生まれる原因は誉二一型の要目にこそあれ、誉一一型についてではないように思います。 <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@c202-138-88-78.customer.mni.ne.jp> |