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> リコールというのは、生産後、何年かしてから、数十万台の規模で発生する。
>
> なぜかというと、トラブルは確率的なものだからです。
残念ながら違います。というか正確ではありません。
リコールというのはただの不具合対応とは違います。不具合の現象が発生した時に、火災とか事故とか人命にかかわるような重大事につながるような不具合に対してのみ行われる対応の事を言います。同じ不具合でも事故や火災に発展する可能性のない不具合に対してはリコールは行われません。
当然ながら、不具合がおこればリコールの対象となりうる部分は厳重に審査されま、車両の安全に直接かかわる部品は「重要保安部品」と位置付けられ、安全基準をクリアし許認可を得た部品だけを使用します。そして、この部分で不具合が生じてリコールになるという事例はあまりありません。
現在、リコールになっている案件は、使用環境の想定が甘いとか開発スケジュールの都合で品質確認が不十分だったというごく少数の事例を除くと、ほとんどが販売開始後の変更に起因するものです。
車両の構造そのものが変更する場合は国の認証を得なければならないので、マイナーチェンジやフルモデルチェンジの時に行われますが、構造を変更しない程度の部分的な変更(たとえば部品の発注先を変更する等)の場合は国にもユーザーにもマスコミにも何の発表もせずに実施されます(一般にランニングチェンジと呼ばれます)。
近年のリコールの多くは、こうしたランニングチェンジの際に変更になった部分や、生産の工程で新しく配属になったスットコドッコイが間違った作業を行ってしまった部分で生じる不具合なので、分母云々はあまり関係ないのです(よく「平成〇年〇月から平成〇年〇月の間に製造された〇万台が対象」と期間が限定されているのがそれです)。
対象の製造期間が限定されておらず、何年かしてから行われるリコールは部品の経年劣化に対する事前の想定が甘かった場合の不具合がほとんどで、その顕在化は経過期間に依存し、やはり分母云々とは関係ありません。
> トラブルが顕在化するには、母集団の数が、ある程度、大きくなければ
> いけない。
分母が大きくないと顕在化しない類の不具合でリコール対象となる案件は、当該商品の発表から1年以内に顕在化するのが普通です。何年もかかるということはありません。
さらに言うと、その1年以内に顕在化する不具合自体も当該商品がもともと抱えていた不具合全体から見たら例外的な存在で、ほとんどの不具合は開発中に顕在化します。
貴殿の言う母集団が大きくないと顕在しない不具合は基本的に部品のバラツキに起因するものですが、そうした不具合の洗い出しは今では当たり前のように行われていて、少なくとも部品単位ではかなりの高確率で不具合を未然に検出しています。
今現在の日本の品質管理技術で、母集団が大きくならないと顕在化しない不具合というものは、ほぼ無いと思っていただいて良いと思います。(それにも拘わらずそういう問題が現実に存在するのは技術的な問題じゃなくて、開発担当技術者と経営陣と品質管理担当者の人間関係とかコミュニケーションとか・・・純粋に技術的な理由ではない部分によるものだったりします)
開発が不完全だけど開発スケジュールの都合(開発の遅れによる新商品の発表時期変更は株主の信用が失われるので経営陣はまず認めない)があるから、市場に出てから対策(クレーム対応等)すればいっか・・・で、市場に出してしまい、当該案件についてよくよく調査研究してみたらリコール案件だった・・・という例外的な事例(もちろん分母の大小なんか関係なし、母集団云々以前の話)も、少数ですが過去に実在しています(具体例についてのお話はいたしかねます悪しからず)。
この話はスレッドの趣旨からは外れますので、私のレスはこれを最後にします。
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