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私の知らない知識を含めご意見をうかがう次第です。ドボワチーヌD520戦闘機は傑作機か、それとも…?
現代に伝わるカタログスペックなんて違う数字がゴロゴロ転がっているし、カタログスペック(翼面荷重/馬力荷重)なんて目安に過ぎずそれだけで戦闘機の性能なんて比較できるわけがない、ということを百も承知の上でカタログスペックで比較してみます。
D.520のイスパノスイザ12Y-45エンジンは離昇表記で900hp台、ライバルとされるBf109EやスピットファイヤMK.Iに比べて1割ほど劣ります。その割に自重は決して軽くはなくBf109Eと同程度というのは不安要素ではあります。全備翼面荷重160Kg/m^2台後半というのはこの時代としてはかなりの高翼面荷重機です(P-36 113, ハリケーン 143, スピットファイヤ 134, Bf109E 162 くらい)。「運動性に優れていた」とは伝えられますが、エンジンが非力なので馬力荷重もあまり芳しくはありません。(2.9Kg/hpくらい。P-36 2.4, スピット2.5, Bf109E 2.3 くらい)。
外見上は操縦席が主翼後縁より更に後方にあること、後部胴体が短いことが目立ちます。操縦席の位置は雷電やF4Uコルセアのように離着陸時の視界にかなりの悪影響があったのではないかと思われますが、着座位置が高く大型キャノピーを持つためかあまり悪評は伝わっていません。ただしウィキペディア英語版の記述によれば、英海軍エリックブラウン氏の談話として「グラウンドループしやすいのでエンジンを切るまでは油断するな」という言葉も記されています。
胴体が短いわりに「スピンからの回復が容易だった」という記述も見られますが(「世界の戦闘機」デルタ出版)、出展元は定かではありません。前述のブラウン氏は「ちっぽけで野蛮な忌々しい奴(nasty little brute)」と評しており、運動性やスピン特性に批判的だったらしいことが伺えます。
長銃身高初速のHS.404 20mm機銃を射撃精度の高いモーターカノン装備していることはD.520の一大特徴でしょう。主翼のMAC 7.5mm機銃も小口径機銃としてはかなりの高発射速度(1200rpm)を誇りますが、実戦でどの程度有効だったのかはよくわかりません。D.520は操縦席の背面装甲や消火器を備えていたらしく、また燃料タンクにはどの程度かはわかりませんが対弾防漏処理が施されていたようで、攻撃・防御兵装については同時代の他国機をやや上回るものではないかと思われます。
総じて1930年代末期の1000hp級液冷戦闘機としては平均的な性能で、同時代の同クラス他国機に対し傑出しているわけでもないが大きく見劣るわけでもない、というのが順当な評価ではないでしょうか。
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