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アメリカ合衆国に10年以上居住し、「トレンチャラス・アタック」だの
「デイ・オブ・インファミー」だのをさんざん聞かされてきた私としては、
結果論として真珠湾は米国民の世論を一気に参戦側に傾けたというじゃまさんの
見解にはおおむね賛同いたします。そのうえでしかし、1940年末の段階で
対米戦争を避ける選択が可能だったのか、対米戦争が不可避であるならば
真珠湾奇襲をやらない選択が可能だったのか、という問いに答えるのは
難しいと感じています。
> アメリカは日本との戦争に踏み切るか、ためらったでしょうね。
> 対独との二正面作戦になるからです。
しかし、アメリカの対独参戦は時間の問題だったと思います。
そして日独伊三国同盟がある以上、アメリカが対独開戦すれば日本も戦争に
巻き込まれる可能性は非常に高いです。
三国同盟の条文では「攻撃を受けた場合」の相互援助義務が定められて
おり、ドイツがアメリカに対し宣戦布告した場合は日本がそれに呼応する
義務はないのですが(独ソ戦に際して日本が対ソ戦に参加しなかったように)、
アメリカがドイツに対して宣戦布告した場合、日本はこれを座視できません。
仮にドイツ側が先に宣戦布告し、日本側が条文を建前として対米開戦を
控えたとしても、三国同盟がある以上日米関係はますます悪化するでしょう。
同盟を無視ないし破棄して中立を維持するという選択も理屈としては
可能ですが、当時の状況でそれを選ぶのは非常に困難であったろうと思います。
もともと中国問題で世界の総スカンを食って国連の椅子を蹴り、藁にもすがる
思いで頼ったのが三国同盟ですから、その「総スカン」の最先鋒であった
アメリカが日本を攻撃してこないことを信じて藁を自ら手放すことができるか
どうか?
> >> 真珠湾攻撃は対米開戦するうえで、欠くべからざる作戦であったことは疑いようがありません。
>
> いや、それが間違っているので。
>
(中略)
>
> 井上成美が言っていたように、「油が無ければ、買ってくればよい」のです。
買えるものなら戦争など起きなかったと思うのですが…。
ハルノートを突きつけられている以上、中国から撤兵しなければもはや米国は
石油を売ってくれません。仮に中国から撤兵しても、米国が石油を売り続けて
くれる保証などどこにもありません。もしハルノートをやり過ごしたとしても、
独米戦が勃発すればアメリカはおそらく一方的に日本への資源輸出を止める
でしょう。
ソ連も英国も対独戦争の真っ最中ですし、その敵国ドイツと同盟を結んでいる
日本に石油を売ってくれるほどお人好しではないでしょう。
同盟相手のドイツもイタリアも自分自身がピーピー言っている有様で、
これまた日本に石油を売ってくれる見込みなどありません。
…よくもまぁ、こんな八方塞がりの状況にまで追い詰められたものだと
思ってしまいますが(あるいは自ら選んだ選択がどんどん自分の首を
締めていったとも)、1940年末の段階では、今までやってきた事
(大陸進出、三国同盟、ノモンハン、仏印進駐)を全部無かったことにして、
「ゴメンなさいもうドイツとは縁を切りました、中国からも仏印からも
撤退します、これからはおとなしい良い子の日本になりますから石油を
売ってください」とでも言わなければ、「買ってくればよい」というわけ
にはゆかないのではないでしょうか。
そして破れかぶれだろうが何だろうが対米戦争をやるならば、南方展開に
あたって目の上のコブになるとわかりきっている真珠湾の米海軍艦隊に
あえて手を出さないというのも、これまたかなり難しい選択ではないかと
思います。
(もっとも開戦直後に洋上艦隊決戦やってボロ負けに負けていれば、
日本の軍部・政治家の継戦意識も揺らいだでしょうし、アメリカ側と
しても「クソ生意気な黄色い猿が仕掛けてきたが返り討ちにして
やったぜ」と溜飲を下げるでしょうから、結果的に史実より早く、より
少ない被害で終戦になっていた可能性もありますが…しかし、それが
日本国民や日本国にとって良い歴史につながったかどうかもまた
「起こらなかった歴史」です)
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