|
> 既存の企業の生産力、すなわち生産ラインの数だけでは、陸海軍が要求する飛行機の生産は決定的に実現不可能だったのです。
生産ラインは確かに増設していくことになるでしょう。
生産数の絶対量向上のみならず、生産工場の空襲被害による生産力低下のリスクを低減させるためにも、工場は分散し、複数の生産ラインで並行生産する必要は必ず出てきます。
航空戦力の効率化を目的に空軍が健軍された場合、航空機メーカーの統廃合が進むだろうとは言いましたが、それは生産ラインの削減を意味しません。航空機メーカー統廃合によって「整理」されるのは、生産ライン以外のリソースです。
たとえば話を単純化すると、メーカーの開発部門なんかは1.基礎研究を行うチーム2.次期新型機を開発するチーム3.現行機の改良や不具合対応をするチームの3つが必要になり、それら3チームが各メーカー毎に抱え込まれ、しかも複数の機種(戦闘機とか爆撃機とか)を扱うメーカーでは2.と3.を機種毎に抱える必要も出てきます。
それらは(極端ですが)挙国一致体制・総動員体制で国家全体のリソースを高効率化する視点から見ると、同じ仕事をする人材・機材が重複しているに過ぎず、削減すべき「無駄」となります。
空軍が戦闘機を継続的に配備し続けるために必要な開発部門は、極端にいうと国全体で3チームあれば良く、次期戦闘機を競作させるとしても4チーム分のリソース(1.基礎研究×1、2.次期機開発×2、3.現行機改良×1)があれば十分ということになります。
開発部門以外にも生産には直接関係ない部門・・・たとえば経理とか人事とか資材調達とか広報とか・・・も、航空機メーカーの統廃合による「整理」の対象となるでしょう。
こうした統廃合は、仮に戦争終結後に日本の航空機産業が存続したとしても、万万が一戦争に勝利したとしても、航空技術の向上にともなう開発コストの高騰によっていずれ必然的に起こることです。いわば宿命と言っても良いでしょう。
ただ、空軍設立によって航空戦力の効率化が図られた場合、陸軍と海軍がそれぞれ個別に同種の航空機戦力を整えていた状況にくらべ、そうした業界再編成(業界全体の効率化)はより早い段階で行われることになるであろう・・・という話です。
したがって、ここで私が言う航空機メーカーの統廃合によるメーカー数の減少は、生産ライン数(生産力)の増減とは必ずしもつながるものではありません。
|
|
|